暮らし・住まい

血縁関係のない人同士が暮らす「コレクティブハウス」 ここから見える新しい住まいの形とは

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コレクティブハウスとは、「血縁関係のない人同士が多世代で居住する住まい」のことです。新しい暮らし方として、いま注目されています。

かつての日本は大家族で協力し合いながら生活していましたが、核家族化が進む現代は、この共同生活の良さが再び見直されている一面もあります。

今回は、そんなコレクティブハウスの魅力について解説します。多様化の進むいま、「住まいの在り方」にも広がりを感じられるスタイルです。

コレクティブハウスとは

コレクティブハウスとは、血縁関係のない多世代の人同士が、集合住宅で協力し合いながら生活する住まいです。1970年代にスウェーデンやデンマークで生まれ、近年では北米などを中心に世界中に広まっています。

コレクティブハウスでは、それぞれが独立した専用住居を持ちつつ、コモンルーム(共用スペース)を介して生活の一部を共同化しながら暮らしているのが特徴です。自分や家族の生活は自立しながらも、幅広い世代の人間関係のなかで、豊かに暮らす住まいのかたちとして注目されています。(※1)

契約形態は賃貸式で、「ひとり暮らし」「小さな子どもと同居する親」「高齢の親と同居するシングルの子ども」など、居住する人は多種多様です。一般的な賃貸集合住宅とは違い、管理人は置いていません。居住者が居住者組合をつくり、集合住宅全体を自主運営・自主管理しています。(※2)

国土交通省のデータによると、コレクティブハウスの入居者は30代~40代が中心で、60~70代も2割を占めています。家族構成では「単身」が一番多く、次に多いのは「子どもと同居する親」となっています。

国土交通省資料「官民NPO協働の空き家活用でセ-フティネット形成の多様化を図る|P17 図7 年代構成・世帯構成・居住年数」を基に作図

日本の賃貸住宅では、若者や子育て世代向け、高齢者だけの世帯と偏りがちな傾向がありますが、コレクティブハウスではさまざまな年齢層の人が居住しており、独自のコミュニティを形成しているのが特徴です。

コレクティブハウスのメリット・デメリット

コレクティブハウスは多種多様な人が住むことで、普通の核家族では実現できない生活を体験できます。
ここでは、コレクティブハウスのメリット・デメリットを国土交通省の資料を基に紹介します。

1.メリット

まずは、若い人から年配者までさまざまな年齢層の人とのふれあいをとおし、幅広い意見や価値観に触れられる点が挙げられます。大勢が助け合いながら暮らしているため安心しながら生活でき、孤立することはありません。家族以外の第三者と暮らすことで許容範囲も広がり、適度な刺激を受けられるのもメリットです。

国土交通省資料「官民NPO協働の空き家活用でセ-フティネット形成の多様化を図る|P19 図 11 自分がコレクティブハウスに暮らす意味」の情報を基に作図

2.デメリット

多種多様な人同士が居住するため、人間関係で問題が発生することもあります。「人によって対応に温度差がある」「生活スタイルが違う」「生活時間が違う」といったことに戸惑うケースもあるでしょう。人間関係には相性があり、誰とでも上手くつきあえるとは限りません。人が多いほどトラブルの種も増えることになります。
また、多世代で同居していますが生活時間はそれぞれ違いがあり、働き盛りの世代は帰りが遅くなるなど、年配者のように決まった時間に食事をすることが難しいことも考えられます。また、自主運営なので一般的な賃貸住宅のように管理会社に入居者間のトラブル解決を依頼することはできません。入居者同士の話し合いで問題を解決しなくてはならないのも、コレクティブハウスのデメリットです。

国土交通省資料「官民NPO協働の空き家活用でセ-フティネット形成の多様化を図る|P20 表5 自主運営で何が難しいと感じているか」より転載(一部加工)

コレクティブハウスでの生活

コレクティブハウスの特徴は「自主運営」と「助け合い」です。生活の一部は共同化が図られ、たとえば、「コモンミール当番」「掃除・鍵当番」「定例会の参加」「運営役員などの係」といった義務を定期的にこなすことが求められます。

「コモンミール」とは入居者同士で食べる夕飯です。ハウスにより回数は異なりますが、当番制で入居者全員の夕食を作ります。入居者同士がコミュニケーションを取りながらお互いを知る機会として、調理をとおして食文化や料理の仕方を学ぶ機会としても重要な位置づけになっています。

このほかの特徴としては、「大家族のような、にぎやかな家庭生活」が挙げられます。ワーキンググループによる話し合い、有志での飲み会、DIYやガーデニングなど、さまざまな活動をとおし、入居者同士の関係を深める楽しみがあります。
子ども同士も勉強や遊びを共にするので、家の中にひとりで留守番ということも起こりづらいでしょう。小さな子どもの面倒を大きな子どもが見る、大学生が中学生に勉強を教える、お年寄りの困りごとに若い人が協力するなど、大人も子どもも"人としての生き方"を学ぶ場面がたくさんあることでしょう。

コレクティブハウスの先進事例

コレクティブハウスに対しては、国や自治体もさまざまな取り組みを行っています。京都府では、コレクティブハウスの住まい方を普及するため、平成30年7月に「京都版コレクティブハウス推進会議」を設置し、普及活動をしています。(※3)
ここでは、コレクティブハウスの利用例について解説します。

1.空き家の利活用・流通促進

国土交通省では平成29年度に「先駆的空き家対策モデル事業」をスタートしています(※4)。国の空き家対策を促進するため、自治体が持つ課題に官民が協力して取り組むことが大きな目的です。たとえば、都心では児童館が退去したフロアをコレクティブハウスに用途変更して再活用する例が見られます。

戸建て空き家を活用して、コレクティブハウスに近い暮らし方ができる「タウンコレクティブ」とよばれる事業も展開されています。ここでは複数名が戸建て住宅のなかの独立した空間で暮らしています。
地域の人とのコミュニケーションを図れるオープンなコモンスペースも用意し、ここを拠点として地域に住む人のつながりを広げることも目標のひとつです。このように利用されていない空き家を有効活用する取り組みがなされています。

2.新しいタイプの農村型コミュニティ

コレクティブハウスは、過疎化に悩む地方の活性化にも活用されています。
北海道旭川市の西神楽地区にある「西神楽アグリコレクティブハウス」(※5)では、離農した高齢者や田舎暮らしを希望する若い世代などがひとつのコミュニティを作り上げ、共同生活を営んでいます。ハウス内には農産物の直売所や売店、食堂のほかに、地域の人が気軽に訪問できる「立ち寄りゾーン」が併設されており、地域に溶け込む暮らしが実現できます。
この地区では、このまま過疎化が進むと道路など集落のインフラを維持するのが難しくなることが考えられていました。このような事態を打開すべく、持続可能な農村の未来を行政と協力しながら地域の活性化に取り組んでいます。

まとめ

近年では核家族化が進み、たとえ地方であっても地域のつながりは少なくなりつつあります。孤独死や育児放棄など現代社会が抱える問題も人と人とのつながりが希薄になってしまったことが原因のひとつです。
その点、コレクティブハウスは、多種多様な人同士で共同生活をすることにより、人と人とのコミュニケーションを実現できます。

これからの有効的な住まいのあり方のひとつとして、コレクティブハウスは今後普及していく可能性を秘めています。その地域の特徴や課題に合わせたさまざまなスタイルが生まれてくることにも今後注目したいところです。

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