暮らし・住まい

【社労士が解説】パート先で「有給休暇」「残業代」が無いと言われたときの対処法

kurashino

言葉やイメージは独り歩きしがちなもの。皆さんは「アルバイト」「パート」と聞くと、どのような働き方を想像しますか?

アルバイトやパートというくくりは、主に労働時間の長短で判断されます。
一般的には、「通常の労働者に比べて所定労働時間、所定労働日数が少ない労働者」を指します。しかし、大前提として、「労働者」であることを忘れてはいけません。つまり、アルバイトやパートであっても下記に該当する場合、労働法上の「労働者」であることに変わりはありません。

  • 使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者(労働契約法第2条第1項)
  • 職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者(労働基準法第9条)
  • 職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者(労働組合法第3条)

そしてアルバイトやパートであっても、「社員」と呼ばれる人たちと同様に労働契約法、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、雇用機会均等法、育児介護休業法、賃金の支払いの確保等に関する法律などの適用を受けます。

労働時間によっては雇用保険法や厚生年金保険法、健康保険法の被保険者となるなど、アルバイトやパートという名称で区別されることはありません。しかしながら、会社側の不勉強や誤解から、不利益な扱いを受けるアルバイトやパートは後を絶ちません。

今回は、誤った認識がいまだにはびこる、2つのケースについて確認しましょう。

年次有給休暇について

「有休は社員でなければもらえない」と思っている方はいませんか? 答えは「ノー」です。
労働基準法第39条では、「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。

つまり、社員だから有休がもらえて、アルバイトやパートは有休をもらえないということはありません。

社員やフルタイム労働者は、勤続年数に応じて次の日数の有休を取得できます。

継続
勤務年数

6カ月

1年6カ月

2年6カ月

3年6カ月

4年6カ月

5年6カ月

6年6カ月

付与日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

厚生労働省「有給休暇ハンドブック p3」を基に筆者作成

また、週の所定労働時間が30時間未満のアルバイトやパートに対しては、勤務日数に応じて比例付与されます。週以外の期間で労働日数が定められている場合は、年間所定労働日数によって比例付与されます)。

勤続年数

週の所定労働日数

年間所定
労働日数

6カ月

1年6カ月

2年6カ月

3年6カ月

4年6カ月

5年6カ月

6年6カ月

4日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

厚生労働省「有給休暇ハンドブック p3」を基に筆者作成

なお、週所定労働時間が30時間以上、または週所定労働日数が週5日以上、もしくは年間所定労働日数が217日以上のアルバイトやパートは、社員やフルタイム労働者と同等の付与日数が適用されます。

有休を取得した日にもらえる賃金は、下記のうちいずれかの方法により計算された額となります(労働基準法第39条第9項)。どの計算方法を採用するかは会社によって異なるため、就業規則等で確認しておきましょう。

  • 平均賃金(過去3か月間における一日あたりの賃金)
  • 通常の賃金(所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金)
  • 標準報酬日額(健康保険法)

まれに、「アルバイトは有休なんかとっちゃダメだよ!」という誤った発言をする会社を見かけますが、これは間違いです。
法律上、有休を取得したことを理由に賃金の減額その他不利益な扱いをしてはならないため、有休取得を抑制するすべての行為について禁止されているからです(労働基準法附則第136条)。

本来、労働者を守るべき立場にある会社ですが、労働法に関する不勉強や間違った認識により、コンプライアンスの徹底とまではいかないのが現状です。
働く側が正しい知識を身につけ、社員やアルバイトといった名称にとらわれることなく、「労働者」としての権利を適正に行使するようにしましょう。

残業代について

さすがに最近は聞こえなくなりましたが、かつては「アルバイトには残業代を払わない!」という横暴な会社も存在しました。こちらも当然のことながら、アルバイトやパートというくくりで論ずるものではありません。

労働基準法第32条第1項では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」続く第2項では、「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」というように、一週間と一日の労働時間についてそれぞれ定めています。しかし、労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、労働基準監督署へ届け出た場合は、協定で定める範囲内で労働時間を延長することや、休日に働かせることができます(労働基準法第36条第1項)。この規定により労働時間を延長し、または休日に働かせる場合、会社は労働者に対して、通常の賃金の25%以上50%以下の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条第1項)。つまり、働き方がアルバイトやパートであっても、法律で定める労働時間を超えて働いた場合は、別途、割増賃金が支払われるのです。

なかには、「残業代を含む雇用契約になっている」というケースも考えられます。この場合は、給与の内訳として「何円の残業代が、何時間分含まれているのか」を確認するようにしましょう。明確な根拠がなく「残業代が含まれている」と言われた場合は、未払い賃金が発生するおそれもあるので、きちんと説明を受けるようにしましょう。

なお、残業の有無にかかわらず、午後10時から午前5時の間に働いた場合、通常の賃金の25%以上の割増賃金が発生します(労働基準法第37条第4項)。これについても、アルバイトやパートといった名称とは無関係にすべての労働者に対して支払われるものなので、覚えておきましょう。

労働者の権利を知っておきましょう

2020年4月(中小企業は2021年4月)に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」により、アルバイトやパート、有期雇用労働者といった非正規雇用労働者と、正社員との間の不合理な待遇差が禁止されました。これにより同一労働同一賃金が実現するなど、働き方による格差の是正が進んでいます。

仕事をするうえで、「アルバイトやパートだから」という理由で不利益な扱いを受けることはありません。何よりも、ベースが「労働者」であることを認識し、労働者を守るための法律を知っておくことが重要です。

皆さんが働きやすい労働環境を築くためにも、労働者ひとりひとりが正しい知識を身につけておくことが望ましいといえるでしょう。

HOT

-暮らし・住まい
-