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コロナ禍で注目される「デュアルライフ」 その実態は?

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世界中に感染拡大した新型コロナウイルス感染症は、生活のあり方を大きく変えました。政府が提唱している「新しい生活様式」では、「3密(密集・密接・密閉)」の回避が強く求められており、テレワークや時差通勤が推奨されています。

在宅勤務をする人が増えたことを機に、以前にも増して注目されているのが「デュアルライフ(二地域居住)」です。デュアルライフを満喫している人たちは、いったいどのような生活をしているのでしょうか。

今回の記事ではデュアルライフの実態について見ていくとともに、メリット・デメリットについても解説します。

デュアルライフ(二地域居住)とは

デュアルライフは単に「田舎にも家を持ち、都会と田舎を行き来する」生活だけではありません。国土交通省の外郭団体「全国二地域居住等促進協議会」は、デュアルライフを以下のように定義(※1)しています。

主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点(ホテル等も含む)をもうける暮らし方のこと

デュアルライフは、都会では経験しがたい地域コミュニティへの参加を可能にするほか、趣味に没頭する環境を得たり、ふるさと回帰の志向に応えたりなど、多様なライフスタイルを実現してくれる手段となっています。また、個人の自己実現だけではなく、都会への一極集中を解消して地方への流れを促すきっかけづくり、地域活性化や災害リスクの回避など、社会的な意義とのつながりも期待されています。

"デュアルライフ人口"は全国1,800万人超

国土交通省の調査結果では、二拠点を行き来するデュアルライフ人口は全国で約1,827万人(三大都市圏:約861万人、その他地域居住者の約966万人)いることが分かっています。

国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会 令和3年3月|P5. 図4-1 三大都市圏居住者の日常生活圏、通勤圏等以外の地域との関わり、図4-2 その他地域居住者の日常生活圏、通勤圏等以外の地域との関わり」の情報を基に作図

こうした属性は「関係人口」と呼ばれており、日常生活以外の地域と継続的かつ多様な関わりを持つ「デュアルライフ派」として見られています。

関係人口とは|『関係人口』ポータルサイト」より転載

具体的に、デュアルライフ派とはどんな人を指すのでしょう。国土交通省の資料ではこのように分析されています。

国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会 とりまとめ (スライド集) 令和3年3月|P19. 1-14 世代と地域への関わり方に着目したブロック分析結果」より転載

デュアルライフ=2拠点生活という言葉から、富裕層の別荘やお金と時間に余裕のある定年退職者がゆったりと過ごす田舎暮らしを想像する人も多いでしょう。しかし、近年は収入に関係なくあらゆる層でデュアルライフが盛んなようです。都会だけの生活に満足できず、幅広い世代でデュアルライフが求められてきた結果と考えられます。

デュアルライフの物件は?

デュアルライフの住居についてはどうでしょうか。住宅は地価の影響から都市と地方の差が大きいものです。主要都市における最高価格の推移を見ても、東京23区は地価上昇が続いており、大阪や地方都市との差が歴然です。

国土交通省ウェブサイト「土地・建設産業:令和2年地価公示」より転載

とはいえ、デュアルライフ派の多くは、旅館・ホテル等の宿泊施設を利用する割合が大きく、シェアリングサービスの利用率はそれほど高くはありません。自分や家族が所有する物件、親族や知人の物件に滞在するケースも多いようです。

▼関係人口が地域に赴く際に利用する滞在場所(複数回答・上位5位)

  • 旅館・ホテル・ペンション等の宿泊施設
  • 友人・知人の家(友人・知人が所有または賃貸する物件)
  • 親戚の家(親戚が所有または賃貸する物件)
  • 商業・サービス、レジャー関連施設
  • 自分や家族が所有または賃貸している物件

国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会 とりまとめ (スライド集) 令和3年3月|P81. 3-15 シェアリングサービスは利用率が低い(滞在場所)」の情報を基に作成

自治体によっては空き家を紹介するマッチングサイトを運営しているところもあります。「山間部」「市街地」など住みたいエリアごとに検索できる自治体も多く、自分のデュアルライフのイメージに合わせて物件を探すことができます。条件さえあれば、低コストで物件を取得することも可能です。こうしたサービスを利用し、物件を取得する人もいるでしょう。

なお、物件の取得にあたっては、セカンドハウスの取得でも利用可能な『フラット35』などを賢く利用するのも手です。借入時に総返済額が確定するため、計画的にローンが組めます。詳しくは、金融機関に問い合わせるとよいでしょう。

デュアルライフのメリット

「楽しい、リフレッシュできる」「家庭の事情や地域との関係性がある」「いろいろな人との出会いやつながりがあり、共感を得ることができる」「人との出会いとつながりをサポートしてくれる人がいる」といった理由から、新型コロナウイルス収束後もデュアルライフを「続けたい」と思う人は約6割、「どちらかといえば続けたい」を含めると約9割にのぼることがわかっています。(※2)

また、デュアルライフ派は「自分の趣味や地域の環境を楽しむ活動」のほか、「地域の人との交流・コミュニケーションを楽しむ」「人脈をつくる」「祭りや地域体験プログラム等へ参加する」人も多く、自然環境に惹かれて行き来するなかで地域の人との交流が始まり、地域に溶け込んでいく様子がうかがえます。

デュアルライフは旅行とは異なり、足を運ぶたび地域や人の魅力に深く触れ合えるため、想定していない出会いやできごとが楽しみへとつながっていくのではないかと考えられます。これは、デュアルライフの醍醐味のひとつとも言えるでしょう。

デュアルライフのデメリット

デュアルライフに充足感を持つ人が多くいる一方、デュアルライフを「続けたくない」と思う人も一定数いることが分かっています。

国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会 とりまとめ (スライド集) 令和3年3月|P48. 1-40 関係人口が地域との関わりを継続する上での阻害要因
(関係人口(訪問系、直接寄与型))
」より転載

「時間的な負担が大きい」「体力的な負担が大きい」「自分にとってのメリットが感じられない」「今後の見通しがつかないため」など、その理由は多岐にわたります。

新型コロナウイルス感染拡大がきっかけとなり、「地域への訪問の頻度が減少した」(※3)人も約3割いることから、地域への行き来が容易でなくなったことも一因と考えられます。

ワクチン接種は徐々に進みつつありますが、自治体によってその進行度合いにばらつきがあることも確かです。変異株の出現など先行き不透明感もありますが、この状況が収束すれば、自分の時間の使い方や価値観の見直しによって、デュアルライフに関心を持つ人が増えてくるとも考えられます。それを見込むかのように国や自治体、さらには旅行会社が「ワーケーション」「ホテルのサブスクリプション」など、その布石となる提案を数多く打ち出しています。

デュアルライフに新しいライフスタイルとしての価値を感じる方は、自分なら、どの地域で、どのような暮らしをしてみたいのか、コロナによってこれまでとは違う時間の流れのなか、具体的に考えてみるのもよいかもしれません。

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