お金を貯めるには、収入を増やすか支出を減らす必要があります。しかし、少子化や新型コロナウイルスなどの影響で経済成長が期待できない現状では、収入アップも簡単には見込めないでしょう。支出を減らすにしても、一度ぜいたくをすると生活水準を下げるのは容易ではありません。
思うように生活水準を下げられず、お金を貯められない場合はどうすればよいでしょうか。今回は、自分に合った生活水準の目安や無理なくお金を貯める方法を紹介します。
自分に合った生活水準の目安は?
人事院の資料によると、世帯人員別の標準生計費(月額)は単身世帯で約11.4万円、2人世帯で約19.2万円、3~5人世帯では約20.5~23.2万円となっています。
人事院「令和3年 人事院勧告 参考資料 生計費関係」を基に作表
必要な生活費には個人差があり、住んでいる地域によって物価なども異なるため、上記の金額がそのまま当てはまるとは限りません。しかし、自分の生活水準が適正か、お金を使いすぎていないかを判断する目安にはなります。
合計金額だけでなく、費目別の金額にも注目し、現在の生活費とどれくらい差があるかを確認してみましょう。
生活費を「見える化」しよう
お金を貯めるために生活水準を見直すには、生活費の「見える化」が必要です。毎月何にいくら使っているかを把握できれば、見直すべき支出が見えてきます。まずは数カ月、家計簿をつけてみましょう。
支出内容は口座振替なら預金通帳、クレジットカード払いは明細書で確認できます。現金払いはレシートをとっておき、1カ月分をまとめて集計するといいでしょう。
手書きで作成するのが面倒な場合は、家計簿アプリを使うと便利です。普段使っている銀行口座やクレジットカードを家計簿アプリと連携すれば、自動的に家計簿を作成してくれます。現金払いは、レシートを撮影するだけでデータを読み込んでくれるアプリもあります。
収支を正確に把握できるのが理想ですが、完璧な家計簿を作成しようとすると挫折してしまうことも。何にいくら使っているかを把握するのが目的なので、1円単位で金額を合わせる必要はありません。多少つじつまが合わないところがあっても問題ないので、とにかく数カ月続けてみましょう。
無理なく生活水準を下げてお金を貯める方法
収入アップが見込めない状況でお金を貯めるには、身の丈に合った生活をすることが大切です。支出を増やすのは簡単ですが、一度上げてしまった生活水準を下げるのは容易ではありません。生活の質を落とさずに支出を減らすにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、無理なく生活水準を下げてお金を貯める方法を紹介します。
固定費を見直す
家計の支出は、変動費と固定費に分けられます。
「変動費」とは、日々の行動や選択によって金額が増減する費用です。食費や日用品費、交際費、被服費、娯楽費などが該当します。
「固定費」とは、行動や選択に関わらず定期的に一定額が発生する費用です。住居費や車両費、保険料、通信費、定額サービス(サブスク)などが該当します。
一般的に「節約」と聞いて思い浮かべるのは、変動費の節約ではないでしょうか。少しでも安い食材を買ったり、趣味の買い物をがまんしたりするのは実行しやすいでしょう。しかし、変動費の節約効果は高くないので、思ったほど支出は減らないかもしれません。また、変動費の節約は強いストレスをともなうため、我慢した反動で使いすぎてしまうおそれもあります。
生活の質を落とさずに家計の支出を減らすなら、固定費を見直しましょう。今より安価なサービスに乗り換えたり、不要なサービスを辞めたりすることで、現在の生活を大きく変えずに支出を減らせます。固定費は、一度見直せば節約効果が長く続くのもメリットです。
たとえば、公共交通機関が充実している地域に住んでいるなら、マイカーがなくても生活できるかもしれません。必要なときだけレンタカーやカーシェアリングを利用すれば、車両費を大幅に節約できる可能性があります。
保険は同じ保障内容で保険料が安い商品への乗り換え、不要な保険の解約などを実行すれば節約になります。スマホの格安SIMへの乗り換え、不要な定額サービスの解約なども家計の支出を減らすには効果的です。
先取り貯蓄を始める
毎月の生活費を払い、残ったお金を貯蓄しようとしても、実際にはそれほどお金は残らないのではないでしょうか。思うようにお金が貯まらない場合は、収入から先に一定額を貯蓄に回し、残ったお金で生活する「先取り貯蓄」を始めましょう。
財形貯蓄や積立定期預金などを利用して、収入が入ったらすぐに貯蓄分を別口座に移すのがコツです。特に財形貯蓄は給与天引きで、引き出すには勤務先で手続きが必要になるため継続しやすい仕組みです。勤務先で財形貯蓄制度がある場合は、積極的に活用しましょう。
財形貯蓄が利用できない場合は、指定した日に普通預金から自動的に資金を振り替えられる積立定期預金を利用する方法もあります。
ネット銀行は手軽に利用できますが、パソコンやスマホから自分で簡単に解約できてしまうケースもあります。銀行窓口へ訪問しないと解約できない商品を利用するほうが、抑止力が働いて貯蓄を続けやすくなります。
まずは収入の10~20%を目安に先取り貯蓄を始めてみましょう。
クレジットカードをやめる
株式会社JCBの調査によると、クレジットカード保有者の月平均生活費は約17.6万円です。非保有者の月平均生活費を3.3万円上回っており、クレジットカードを保有すると生活費が増加する傾向にあります。
株式会社ジェーシービー「クレジットカードに関する総合調査(2020年度版)|P18 9.月平均生活費とクレジットカードの保有状況 ■クレジットカード保有状況別 世帯あたり月平均生活費」を基に作図
クレジットカードは便利ですが、手元に現金がなくても買い物ができるため、使いすぎてしまうおそれがあります。クレジットカードを使うと支出が増える場合は、カード払いをやめるのも選択肢のひとつです。
現金払いにすれば、手元にある現金より高い買い物はできなくなるので、使いすぎを防止できます。現金を準備するのが面倒な場合は、「デビットカード」を使う方法もあります。
デビットカードはクレジットカードと同じように支払いができ、代金はすぐに銀行口座から引き落とされるカードです。口座残高を超える買い物はできないため、使いすぎを防止する効果が期待できます。また、利用金額に応じてポイントが貯まるカードもあります。
クレジットカードでお金を使いすぎてしまう場合は、現金払いやデビットカードを検討しましょう。
まとめ
一度上げてしまった生活水準を元に戻すのは簡単ではありません。しかし、少し工夫をすれば今の生活を大きく変えることなく支出を減らし、無理なくお金を貯めることは可能です。
まずは家計簿をつけて生活費を見える化し、100万円の貯金を目指して固定費を見直すことから始めてみましょう。