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墓じまいで紡ぐ家族の絆

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「見ざる聞かざる言わざる」の三匹の猿が愛らしさを振りまく日光東照宮は、徳川家康公の墓所としても知られています。日光東照宮は「日光の社寺」として世界文化遺産に登録されていますが、世界遺産と言えば、「仁徳天皇陵古墳の登録」が最近話題になりました。

古く、墓は時に権力者が生前の富や権力を象徴するために作られることがありました。日本の古墳もそのひとつです。広く世界を見渡せば、秦の始皇帝の墓所には数千の兵馬俑が埋められ、始皇帝を守っているそうです。

お墓は、古来より故人の埋葬施設としての役割のみならず、さまざまな意味を持ちます。生前に自身の墓を準備する者の視点で見るか、先祖の墓を守る者の視点で考えるか、宗教、地域の風俗などの要因も、お墓の意義に深く関わっているでしょう。
先祖代々受け継がれてきたお墓を守る者がいなくなったら......そんな悩みは、現代を生きる私たちの共通の悩みかもしれません。

そこで今回は、「墓じまい」を考える皆さんに、意外と知られていない「墓じまい」の法律的な意味や規制、手続きなど、客観的な情報をお届けするとともに、「墓じまいの先にあるもの」を見極めるきっかけとしていただけるような視点を、考えていきたいと思います。

墓じまいにルールがあるの?

皆さんは、「墓じまい」という言葉に、どんなイメージをお持ちですか?「先祖代々のお墓を閉じる」「お墓の敷地を返還する」など、さまざまなイメージがあると思います。確かに、既存のお墓を閉じることは、「墓じまい」でやるべきことのひとつです。しかし、忘れてはならないのは、お墓には故人のお骨が納められているということです。では、既存のお墓を閉じたら、故人のお骨はどうなるのでしょうか?

墓じまいは終わりではなく改めること

そもそも、「お墓」の法律上の意味を考えてみましょう。あまり知られていない法律ですが、「埋葬法(墓地、埋葬等に関する法律)」という法律があります。
埋葬法では、「墳墓」の意義を「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」と規定しています。この「墳墓」は一般的に言えば「墓」と呼ばれるもの、または、お墓を含む墓地や納骨堂などを指します。

日本では公衆衛生の観点から、自治体の規制により土葬はほとんど認められていませんので、「お墓」は故人のお骨が納められている施設ということになります。

埋葬法により、お骨は墓地(お墓を設けるために都道府県知事の許可を受けた地域)以外に埋葬してはならないとされているため、故人のお骨が納められているお墓を閉じるときは、お骨を新たに納める施設を見つけなければなりません。この「収蔵した遺骨を他のお墓に移す」ことを「改葬」と言います。

意外と知らない墓じまいのルール

では、改葬のためにはどんな手続きをしなければならないのでしょうか?
墓石の撤去やお墓に宿る魂のご供養をする場合もあります。もちろん、お骨を新たに納める墓地(改葬先)を探さなければなりませんが、改葬は、埋葬法で定められた手続きが必要で、お骨が収蔵されているお墓がある市区町村長の許可が必要なのです。

この改葬許可申請をする際に必要な主な書類は次の通りです。

  1. 本人確認書類の提示(運転免許証など)
  2. 受け入れ証明書(改葬先の墓地管理者の受け入れを証する書面)
  3. 墓地管理者の埋蔵(埋葬)証明

なお、改葬先によっては、お墓に収蔵されている遺骨の人数について、墓地管理者の証明や改葬主の本人確認書類を求める場合もあります。
実際に改葬を考える場合、改葬先をいきなり決めるのではなく、改葬先が求める書類を確認し、墓地管理者の証明を貰えるかどうかも調査するようにしましょう。古くからの集落に点在する墓地の場合、墓地管理者そのものが見つからない場合もあります。市区町村役場や保健所、墓地近隣のお寺や町内会などで調査をしなければならないこともあるので、注意が必要です。

お墓を継ぐ者

「墓じまい」は、新しいお墓に先祖のお骨を改葬する必要があるということが分かりました。では、改葬先についてどのように考えれば良いでしょうか? 改葬先の形態によっては、「新しいお墓を継ぐ人は誰か?」という問題が発生します。そこで、まず、民法のルールや、公的な霊園の規定をご紹介します。

お墓の承継のルールは特別?

民法では、お墓など祭祀に関する権利の承継は、法定相続人・法定相続分と異なるルールを定めています。民法897条によると、こう書かれています。

「祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」

「ただし」のところに着目してください。たとえば、慣習にしたがえば「姓を同じくする者」や「長男」「長女」がお墓や祭具(仏壇・位牌など)を継ぐとされていたとしても、被相続人が「お墓は親戚の〇〇さんに」と祖先を祀(まつ)る者を指定した場合は、指定された人が祭祀をつかさどるということです。

この民法の考え方は、一定の制限はありますが、公的霊園の墓地使用権承継においても表れていますので、公的霊園の例を紹介します。

公的な霊園墓地の場合、さまざまな条件はありますが、お墓の権利者の6親等内の親族まで、承継を認めている霊園があります。自身の直系の子・孫はお墓を承継しない場合でも、故郷で暮らす親族をお墓の承継者にすることも「墓じまい」の選択肢のひとつです。
ただし、お墓の承継に関しては、各霊園・お寺など、墓所それぞれの規定・考え方がありますので、親族へのお墓の承継を考える際は注意しましょう。

現代のお墓の形

現在、お墓のバリエーションは多岐にわたっています。従来の墓石タイプ、合同の納骨堂タイプ、ビルの中の納骨スペースなど、どんな形が良いか、どんな場所が良いか、墓じまいのために改葬先を探すとき、迷ってしまうのではないでしょうか? 永代供養を頼むかどうかなど、子・孫世代の管理についても考えることも大切です。

また、最近は公的霊園でも樹木葬の形式を採用している霊園もあります。樹林墓地に限らず、「自然に帰りたい」「跡継ぎがいない」などさまざまな考えを尊重できるお墓の形がある現代で、改葬先選びには、お墓を探す方の死生観や家族観が反映されるでしょう。

家族で考える墓じまい

お墓や墓じまいの意義、手続きなど見てきましたが、墓じまいを考える方にとって、先祖代々のお墓を閉じることへの感慨と、子世代・孫世代の負担を思いやるこころの板挟みになるかもしれません。故郷の親族の思いもないがしろにはできないでしょう。

「改葬をする際は、トラブルにならないよう親族と良く相談してください」という趣旨の注意文言を公式サイトに掲載している市区町村もあります。墓じまいは、親世代だけで考えるのではなく、子・孫、親族などと十分に話し合ったうえで行うことが大切です。

墓じまいをする際は、家族にとって先々まで悔いのないように、準備から実行まで入念に行っていただければと思います。

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