お金・資産 将来への備え

愛する家族が亡くなったとき、私たちに残される「生きていくための年金」の意味

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日本人の平均寿命は年々延びており、現在では男性81.25才、女性87.32才(※1)と言われています。さらには、現在、60才の人の25%が、95才まで生きるという試算(※2)もあり、いよいよ「人生100年時代」が到来しています。

その傾向が顕著に表れているのが、以下の図です。2016年現在の予測では、2050年頃には100才以上の高齢者が50万人を超える見通しです。食文化の改善や医療の進歩もあり、長寿が当たり前と感じる昨今ですが、これからの長い人生が順風満帆かどうか、今の時点ではまだ誰にも分かりません。

経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について

遺された家族は? 「これからどうやって暮らしていくのか」

年を重ねるにつれ、その不安が大きくなるもののひとつが「お金」です。お金にかかわるライフイベントにはどのようなものがあるのか考えてみましょう。

各種学校を卒業してから順に、「就職」「結婚」「出産(家族の増加)」「住居購入」「退職」「死亡」......といったライフイベントが、多くの人に訪れます。なかでも「住居購入」は資産形成の意味でも大きな買い物となります。

せっかく手に入れた家族と覚悟を決めて購入した終の棲家で、幸せな日々を過ごしていたある日、一家の主が突然亡くなってしまったとしたら、皆さんはどうしますか?

住居のローンは加入している保険で返済できることが多いですが、遺された家族の「生活費」はどうすればよいのでしょう。一般的には、子どもの学費やその他諸々の費用に対して、貯蓄を切り崩したり、就職をしたり(または働き口を増やしたり)して収入を確保することになります。しかし、遺されたその貯蓄が十分でなかった場合、あるいは、年齢的な問題から就職が困難な場合、一体どうしたらよいのでしょうか。

国から支給される「遺族年金」について

そこで頼りの綱になるのが、「遺族年金」です。しかし、その内容を詳しくご存じの方は、さほど多くはないのではないでしょうか。

遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

遺族年金は、大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
年金の受給要件はかなり細かいので、今回は主な部分のみ紹介します。詳細はお近くの年金事務所にお尋ねください。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、以下4つのいずれかに該当する人が死亡した場合に支給されます。

  1. 国民年金の被保険者
  2. 国民年金の被保険者であった者で、日本国内に住所を有し、60才以上65才未満である者
  3. 老齢基礎年金(65才から受給できる国民年金)の受給権者
  4. 保険料納付済み期間等が25年以上である者

受給できる対象者も、以下に該当する場合と決まっています。

  1. 死亡したものに生計を維持されていた子のある配偶者(夫または妻)
  2. 死亡した者に生計を維持されていた子

遺族厚生年金

遺族厚生年金もまた、以下4つのいずれかに該当する場合に支給されます。

  1. 厚生年金保険に加入中に死亡したとき
  2. 厚生年金保険に加入中に初診日のある病気・けがで5年以内に死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者または保険料納付済み期間等が25年以上ある者が死亡したとき

受給できる対象者も、以下のように決められています。

  1. 死亡した者に生計を維持されていた子のある妻、または子
  2. 死亡した者に生計を維持されていた子のない妻
  3. 死亡した者に生計を維持されていた孫
  4. 死亡当時55才以上の夫、父母、祖父母

そして、受給権者には以下のような年齢要件があります。

厚生労働省「第8回社会保障審議会年金部会資料4|遺族年金制度について―諸外国の遺族年金制度とその改革動向―」の情報を基に作図

遺族年金は、世帯の生計の担い手(たとえば夫や父)が死亡した場合に、生計を維持されていた遺族の生活が突然困窮しないよう、所得保障をするための制度です。

また、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(日本国憲法第25条(生存権)第2項)」という国民年金法で規定される理念に基づいて制定されているため、死亡が原因で生活の安定が損なわれることを防止する目的があります。

遺族年金はいくらもらえる?

遺族基礎年金と遺族厚生年金とでは、受給できる金額も変わります。

遺族基礎年金は国民年金のみ、遺族厚生年金は国民年金+厚生年金の2階建て年金のため、遺族厚生年金のほうが、受給額が高くなることがほとんどです。

また、厚生年金部分は、就業時ときの給料によって異なるため、その平均等級を算出してからの計算となります。これは会社や本人ですら何等級かを把握できていないケースのほか、とても複雑な計算が必要になることなどから、年金事務所でシミュレーション(無料)をしてもらうことをおすすめします。念のため、年金額と計算の仕方を下記2つの図でそれぞれ確認しておきましょう。なお、年金額や計算方法は、平成31年4月分からが対象のため、今後、変更になる場合があります。

年金額

平成31年4月分から

78万100円+子の加算

子の加算

  • 第1子、第2子 各22万4,500円
  • 第3子以降 各7万4,800円

※子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は、第2子以降について行う。子ひとり当たりの年金額は、上記による年金額を子どもの数で除した額。

日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)

日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)

遺族年金だけに頼る時代はもう終わり

一例ですが、子ひとりが遺族基礎年金のみ受給できる場合、毎月の年金額は8.4万円程度です。ここに遺族厚生年金(亡くなった被保険者の平均標準報酬月額が30万円だったと仮定した場合)が約3.3万円上乗せされても、11.7万円程度です。生活費に加えて、塾や習い事の費用、接待交際費、急な病気やケガの費用などを考えると、この金額は親子2人が生活していくのに十分な額とはいえないでしょう。

不足した金額をねん出するためには、"外に出て働くこと"を視野に入れる必要があります。
下図は、遺族年金(遺族基礎年金、遺贈厚生年金、寡婦年金)受給者の年齢階級別に見た就業率のグラフです。
55才未満の各階級では、いずれも約8割が何らかの形で就業をしていることが分かります。

政府統計の総合窓口「年金制度基礎調査(遺族年金受給者実態調査)平成27年」の情報を基に作図

それでは、一家の大黒柱(被保険者)が死亡する前に、仕事をしていた場合としていなかった場合とで、その後の就業状況の変化を確認してみましょう。

「被保険者死亡前に仕事あり」のなかで「転職した」割合は年齢が低い方が多く、さらにその目的は「収入増加」であることが分かります。
また、年齢が上がるにつれ「転職した」割合が減少しているのは、年齢による転職の難しさを表していることも考えられます。
逆に、「被保険者死亡前に仕事なし」で「就職した」の割合も年齢が低いほうが多く、遺族年金受給者(遺族)自身の年齢が若いほうが就職・転職しやすいこと、また扶養すべき子どもがいる場合は遺族年金だけでは困難なことが推測されます。

政府統計の総合「年金制度基礎調査(遺族年金受給者実態調査)平成27年 集計結果の概要」の情報を基に作図

年金は「セーフティネット」の認識を忘れずに

長い歴史を経て、いまでもさまざまな議論が交わされている年金制度ですが、忘れてはいけないのは、「年金だけが将来の貯蓄ではない」ということです。
特に遺族年金と障害年金は、いつ訪れるか分からない不測の事態の際、急に困窮することがないように作られた「セーフティネット」の役割を果たしています。

愛する家族との別れは必ずいつか訪れるものです。悲しみに暮れるなかでも日々の生活が困らないよう、この記事を読んで、少しでも多く、そして長く収入を得る努力と人生設計の見直しをする機会となれば幸いです。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

(※1)厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況|主な年齢の平均寿命」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf

(※2)金融審議会「市場ワーキング・グループ報告書|高齢社会における資産形成・管理」
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

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