お金・資産 将来への備え

ファイナンシャル・プランナー 柴沼直美さんに学ぶ シニアの老後資金と向き合う

kurashino

2019年、「夫婦の老後資金が2,000万円不足する...」という金融庁が公表した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の報告書が物議をかもししましたが、「夫婦の老後資金が2,000万円不足する」というのも、あながち間違った話ではないと言えるでしょう。 しかし、比較的裕福な方は自分には関係がないと思っていると危険です。

これからの人生100年時代によりいきいきと生き抜いていくため、ファイナンシャル・プランナーの柴沼直美さんにお話を伺いました。

柴沼さん

前回では、老後資金について考えてみました。今回は、もう少し突っ込んで、今比較的余裕があるいわゆる富裕層の方のお金との付き合い方についてみてみたいと思います。

日本は二極化が著しく、富裕層と低所得者層が増え、中間層は減少

まず富裕層とは何かということについて確認したいと思います。
厳密に富裕層という定義はなく、各シンクタンクが独自に定義づけし、追跡調査を行っているのが現状です。日本では野村総合研究所が2000年から、このような富裕層についての調査をまとめ報告しているのでよく引用されています。

野村総合研究所、日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計

https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1218_1

同社の公表によれば、富裕層といえるのは「1億円以上の現金化できる資産をもっている」層を指しています。もう少し細かく分類すると、3,000万円未満をマス層(よく言われる中流)、3,000万円~5,000万円未満をアッパーマス(いわゆる中の上)、5,000万円以上1億円未満が準富裕層(上の下)となり、1億円以上5億円未満が富裕層、そして5億円以上が超富裕層(スーパーリッチ)となっています。

純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数

出典:野村総合研究所のデータ(2018/12/18リリース 野村総合研究所、日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計)をもとに住友林業ホームテック株式会が作成

純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移(2000年~2017年の推計結果)

出典:野村総合研究所のデータ(2018/12/18リリース 野村総合研究所、日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計)をもとに住友林業ホームテック株式会が作成

そして、2018年12月の発表では127万世帯(全体の2%未満)で、2011年以降、一貫して増加し、2017年は2000年当時よりも大幅に増加しています。2000年といえば森首相から小泉首相へ移行し規制緩和が叫ばれるようになってきました。それとともに、富裕層が増加、同時に企業の人材採用形態においても非正規雇用比率が上昇し、富裕層と低所得者層の格差が拡大をはじめた時代です。

富裕層のシニアライフは無条件にバラ色とはいえない

このように富裕層が増加したといっても、ほんの数パーセントです。その上、2019年1月、世界的にも世界のGDPの半分をわずか26人の超富裕層で占有されているなどといった報道などを耳にするように、おしなべて先進国では富裕層VS非富裕層の格差は拡大傾向にあります。

お金の付き合い方といえば、いわゆるマス層である中流世帯を中心とした話がよく議論されていたかつてとは違って、リーマンショック以降、特に非正規雇用比率が急上昇している昨今は、非正規雇用者を対象とした「老後の暮らし方」という話がよく取り上げられていますが、この増加傾向にある富裕層はそのような老後の生活について全く心配する恐れがないのでしょうか。

結局はお金の入り口と出口をきちんと管理しなければ永遠に富裕層ではいられない

富裕層はお金に対して何の悩みもないように思われますが、実は富裕層であるほど転落するリスクが大きいです。ましてや老後になってから、富裕層から転落してしまったら復活するバイタリティが残っていないことと、富裕層時代が長ければ財布のひもの締め方を知らないことと、プライドが邪魔をして考え方を転換することができないだけに意外と要注意です。

前回でも紹介した通り家計運営は「資産管理」と「毎月の収支管理」の2本柱で成り立っています。会計的に言えば、損益計算書と貸借対照表を同時に考えなければならないのは富裕層だろうが非富裕層だろうがかわりません。

しかも、今は人生100年時代。多額の資産を持っているから必ずしも安心とは言えません。資産の点から考えれば、現在の退職の時期を迎えるベビーブーマーが現役の時代は金利水準も高かったので「運用」などという煩わしい手間をかけなくても、定期預貯金に預けっぱなしで自動的に10年後には2倍近くまで資産が増えていましたので、そもそも「リスクを覚悟して資産を保全するために運用する」ということにはまだ抵抗がある人が多いです。

資金収支の観点から考えると、現役を引退したからといっても現役時代のように毎月決まって大きな収入を得ていたころと同じように、お金の使い方を急に絞ることはできないのが普通です。

その理由は

  1. それまでの習慣を変えるのが面倒だしプライドが邪魔をしてできない
  2. 加齢によって柔軟性や節約志向へのチェンジをするだけの気力が失せてしまう

からです。よく、「歳をとってまでケチケチしたくない」と言って、高級レストランで食事をしたりビジネスクラスで旅行をしたりする光景を目にすることがあります。確かにそれも一理ありますが、昭和時代のように人生が75年であれば問題はありませんでした。しかし、今は75年プラス25年です。しかも最後の25年は、肉体的にも気力的にもぐっとパワーダウンします。介護費用や介護に伴う施設入所や家のリフォームなど思いのほか費用がかかることが予想されますが、突発的な出費に対して機動的にコストパフォーマンスのいい施設を探す、業者と議論してリフォームに取り組むことは難しくなります。

富裕層はもともとお金の出口が広くなっていることを念頭におくべき

現在富裕層に該当する世帯では、「自分たちはお金の出口が広い(=出費が多い)」ことを念頭におくべきです。自宅での光熱費1つをとっても、家計調査で発表されている平均値は月間せいぜい25,000円。しかし富裕層では自宅の床面積も大きい、使用する家電も電力消費量が比較的高いものを多く取り入れているため60,000円以上になっているケースをよく目にします。このような各項目を1つずつ検証していけば、お金の出口がいかに広いかは明らかです。

筆者が相談を受けた例

定年になったからと言って、燃費重視の汎用的な一般車に買い替えることが出来ない...

今までベンツやBMWなど高級外車しか乗ってこなかった人が、「定年になったから」と言って、いきなり燃費重視の汎用的な一般車に買い替えるなどということはなかなか難しいというケースです。

高級外車はガソリンをがぶ飲みし、燃費は非常に悪いです。メンテナンスも部品がありませんから海外からの取り寄せになり、購入費用はもとより維持費で大きな差がつきます。

車ひとつとってもそうです。同様に定年になったから、ゴルフをやめる、行きつけの高級美容室をやめる、というのはとても難しいのです。ご夫妻でお話しをされるときも「あと何年生きられるのかわからないのに今更お金を気にしたくない」と必ずおっしゃいます。

歳をとって就労による収入がなくなるのは、中流家庭も富裕層も同じ。となれば、資産を食いつぶすスピードが早い、しかも減速させるのが難しいということを念頭において、資産保全という意味での運用を真剣に考える必要性があることは資産の多寡を問わず求められているのではないでしょうか。

HOT

-お金・資産, 将来への備え
-,