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老後のひとり暮らし、必要なお金と備えは?

kurashino

「老後も住み慣れた家や地域で暮らしたい」。このように考え、自宅でひとり暮らしを続けるには、やはり早いうちからある程度の備えが必要です。介護施設などに入居するつもりもないのであれば、なおさらでしょう。
ではそのような暮らしを続けていくためには、具体的にどのような備えが必要でしょうか。
これは、両親の今後、そして将来的には自分自身の問題になってきます。早い段階から考えておく必要があります。

ひとり暮らしの親の備え。子が望むこととは

高齢者が介護施設に入りたくない、と考える理由はさまざまです。
「これまでの生活を続けたい」「友人や知人と離れたくない」、あるいは「集団生活を好まない」といったものから「そもそも介護施設にネガティブなイメージを持っている」「金銭的な問題」までいろいろとあるでしょう。

それでは、いざひとり暮らしを続けるとなった場合、事前にどんな準備があれば安心できるでしょうか。

第一生命がひとり暮らしの親がいる別居の子を対象に行ったアンケート調査(※1)によると、親による老後の準備のうち、家族が最も助かったことは、「経済的準備」と「意思表示」の2つに集約されているようです。
「経済的準備」の具体的な例として、「あらかじめ必要な額の貯金があった」「保険に入っていたので、金銭的に余裕があった」というお金の確保のほか、「預金などわかるようにしていた」といったように、親がお金の所在を明確にしていたことを助かったとする答えもありました。
また、「意思表示」の具体例には、「自分自身で、すべてのことを書きおきしてくれていたこと」「自分の意思で訪問サービスもデイサービスも決めたこと」などがあります。

老後のひとり暮らしに必要なお金

では実際に、ひとり暮らしを続けるとなると、いくらお金が必要になるのでしょう。
総務省の「家計調査」によると、60歳以上の無職単身世帯での主な支出は以下のようになっています。

総務省「家計調査報告(家計収支編)2018年

ひとり暮らしかつ無職の高齢者の月々の実収入、約12万3,000円に対し、支出は16万円強ですから、毎月3万8,000円ほどを預貯金の取り崩してまかなっていることになります。なお、これは持ち家の人も賃貸の人も含まれていますから、賃貸で暮らす人は、これよりも家賃支出が増える計算になります。この状況で要介護認定を受けたときは、在宅介護を利用することになりますので、負担がさらに増えます。

公益財団法人 家計経済研究所によると、在宅介護にかかる1カ月の支出額の中央値は、3万3,000円(※2)に及びます。ここには、介護サービスへの直接的な支出のほかに、医療費やおむつ代など介護サービス以外の支出も含まれています。
先述したひとり暮らしかつ無職の高齢者の月の支出額の約15万円にこの金額をプラスすると、概ね18万円強のお金が月々の生活に必要になるということです。もちろん、要介護の度合いが上がれば負担も増えていきます。

支出増加に備えて考えられる経済的負担の軽減策

では、支出がかさむようになった時に選択可能な方法には、どのようなものがあるのでしょうか。

自宅不動産の活用

持ち家の場合、住み慣れた家で生活を続けたいという場合には、「不動産担保型生活資金貸付制度」を申し込むことも、ひとつの選択肢でしょう。これは、住んでいる家を担保にして生活資金を借り入れるもので、高齢者の自立支援のための制度です。もちろん不動産価値によりますが、基本的には土地の評価額の70%を限度として月30万円までを死亡するまで、あるいは限度額に達するまでの期間、借りることができます。介護サービスを利用しながら、自宅で生活するという、一番自然な形が可能になるでしょう。

子の介護休業給付金の活用

子どもが親の面倒を見るために仕事を休む場合は、「介護休業給付金」の活用が検討できます。これは企業が加入している雇用保険から、給料の3分の2が介護給付として最大93日まで支給されるもの。原則、会社を通じて申請します。利用できるかどうかは雇用形態によって異なり、利用にあたっては以下の条件があります。

  • 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
  • 取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

介護の相手は、本人の両親、配偶者の両親が対象です。夫婦で別に利用できますので、たとえば夫の給付期間終了後に妻が新たに申請し、バトンリレーのように利用することも可能です。「介護費用を稼ぐために仕事を続けなければならない」といった精神的にも肉体的にも大変な状況から少しのあいだ離れ、経済的な心配なく親の介護と向き合える点は、さまざまな負担をやわらげてもくれるでしょう。問い合わせ先は、各地のハローワークです。

医療費負担を軽減する制度

医療費と介護費が合算して還付される、「高額介護合算療養費制度」も活用できます。
高額介護合算療養費制度とは、1年間に払った医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、基準を超えた場合に、その超えた金額を払い戻すことで負担を軽減できる仕組みです。基準額は所得に応じて異なりますが、住民税が非課税の世帯の場合、31万円を超えた金額が支給されます。(※3)

 

基準額

一般

低所得者
(市町村民税非課税)

現役世代(70歳未満)

67万円

34万円

後期高齢者医療制度

56万円

31万円

なお、毎年8月からの1年間の合算が対象です。高額医療費や高額介護費の支給を受けている場合は、重複して申請はできません。

事前の意思疎通を最優先に

老後の生活については、早いうちに親子間で決まりごとを作っておくのがベストです。
「自宅に住み続けたい」と親が望んだ場合でも、認知症が進んだり要介護の度合いが重くなったりと、状況は変化していきます。ではその時に、「何があっても死ぬまで自宅で過ごしたい」のか、「ある程度の認知症の進行や介護の必要性が出てきたら施設に移ってもいい」のか、人それぞれに考えはあると思います。しかし、そのような状況になってから、家族が限界をむかえてしまっては仕方ありません。

これを回避する方法のひとつとして、「エンディングノート」を作っておくことをおすすめします。これは、施設を利用する、または利用しないといった範囲だけのものではなく、自宅の処分や延命治療のこと、最期を過ごす場所など、"最期に何を望むのか"を早い段階で書き留めておくことができます。

いずれコミュニケーションは取れなくなります。そうなってから頭を抱えるのではなく、希望通りの老後に向け、いまから徐々に備えておくことが自身のために、そして残される子世代のためにも大切です。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 第一生命保険株式会社「親による自身の介護に向けた備え~ 1人暮らしの親がいる別居子へのアンケート調査から ~」(2015年10月14日)
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2015/news1510_4.pdf

※2 「在宅介護のお金と負担 2016年調査結果」(家計経済研究所、2016年)
http://kakeiken.jp/old_kakeiken/jp/research/kaigo2016/index.html

※3 厚生労働省「高額介護合算療養費制度」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d-29.html

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