お金・資産 将来への備え

老後に必要な貯金額と貯金に対する考え方

kurashino

ちかごろは、さまざまな書籍やニュースで「老後のためには〇〇万円必要!」といった言葉を見聞きします。金融庁から「老後のためには2000万円が必要」との報告書が公表されたものの、世論の批判を受け、その後撤回にいたったことは記憶に新しいですよね。

いろいろな情報が飛び交うなか、具体的に老後資金の準備をどのようにすればよいのか分からないまま、日々を過ごしている方は多いことでしょう。実際のところ、将来、お金の心配なく余裕のある生活を送るためには、いくら貯めておかなければならないのでしょうか。その答えは退職金や年金、住まいの環境、希望する老後の生活イメージ、さらには何歳まで働くかによります。

「人生100年時代」と言われるように、100歳になっても困らない貯金計画、資金計画は大切です。
今回は、世の中の貯蓄実態や筆者がこれまで受けてきたファイナンシャルプランニング相談の実例も紹介しながら、100歳になっても困らない貯金計画の達成方法をご紹介します。

みんなどれくらい貯めているの?

冒頭でもお伝えしたとおり、将来必要と考えられる貯金額は、一概に〇〇万円と言えるものではありません。ただ、『他の人はどれくらい貯めているのか』を知ることは、ご自身の今後の貯金計画の目安になるかと思います。
自分が将来のゆとり資金作りのために貯金を頑張れているのか、収入の割に使い過ぎていないのかを感じ取って、具体的な金額を溜めるための実行エネルギーとして活用しましょう。
それでは、さっそく年代別の貯蓄額を見てみましょう。

年次

平均

40歳未満

40~49歳

50~59歳

60~69歳

70歳以上

2018年

1752万円

600万円

1012万円

1778万円

2327万円

2249万円

総務省「2018年度年齢階級別貯蓄状況」図Ⅲ-1-1 から数値を引用

貯蓄額の全体平均は、1752万円となっています。40歳未満の平均貯蓄額は600万円ですが、40代以降は1000万円を超えてきています。しかし、同調査では貯金額の中央値も公表されていて、興味深い結果が出ています。中央値とは数値を低いほうから順番に並べた時に真ん中に位置する値をいいます。
同調査では、60歳以上の高齢者世帯(二人以上世帯)の平均貯金額は2284万円、中央値は1515万円となっています。平均額と中央値とに約770万円の差が出ています。
平均値は大きな数値に引っ張られてしまう特徴があるため、実態を表わせない弱点があり、実態を観察するには、一般的には中央値が適しています。

今回の平均額と中央値の770万円の差から、貯めている人はしっかり貯めているけれど、一方で貯められていない人もたくさんいて、貯金状況に格差があるという見方ができます。

ちなみに、二人以上世帯で貯金額が300万円未満のご家庭は、全体では22.1%、60歳以上世帯は15.9%、60歳未満世帯は28.6%(※)でした。4~5世帯に一世帯は貯金が300万円未満というイメージですね。

ご自身の貯金額と比較していかがでしたでしょうか。
多くのお金の相談を受けてきた筆者も、相談者には「将来、お金でゆとりを持つためには60歳や65歳時点で3000万円、5000万円を目指しましょう」と提案することが多いです。
では、なぜ、このような金額が出てくるのでしょう。以下に計算例を示します。

老後に必要な貯蓄額を計算してみましょう

総務省「2018年家計調査報告」によると、高齢夫婦かつ無職の世帯の場合、毎月の生活費の不足額は41,872円となっています。このデータから、この不足分を貯金等の手段でカバーしなければならない現状が見えてきます。

総務省「家計調査報告(家計収支編)2018年平均結果の概要」<参考4>高齢無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図1を基に作図

仮に夫が65歳から100歳までの35年間、毎月41,872円をカバーするためには65歳時点で約1758万円が必要になります。

【計算式】41,872円 × 12ヶ月 × 35年間 = 約1758万円

不足額を月5万円とした場合は、35年で2100万円が必要です。この数値から冒頭の金融庁が試算した「2000万円」という数字は、それほど現実離れした金額ではないことが、お分かりいただけるのではないでしょうか。
ここで大切なのは、「自分の年金や退職金等の収入はいくらあるのか」「生活費はどれくらい確保したいのか」という発想を持つことです。本当に必要な目標とすべき貯金額は、「ご自身のこれからの収入や生活資金がどれくらいなのか」が分かっていないと見つけられません。

では、その「収入」と「支出」が分かれば、目標とすべき貯金額が見えてきそうですが、「収入」と「支出」を把握する作業がハードルとなり、老後のための貯金が始められない方は少なくありません。ここからは改めて「収入」と「支出」の把握の仕方についてお話しします。

意外と無頓着。自分の退職金や年金がいくらか知っていますか?

老後に必要な貯金額の出し方は、60歳や65歳以降の老後の「収入」と「支出」の差額から計算することをお伝えしました。
筆者も相談の現場では「収入」「支出」「今の金融資産残高」の確認から入ります。その作業の中で意外と多いのが、ご自身が勤めている会社の退職金制度がどうなっているか知らないという声です。そもそもご自身が勤めている会社に退職金があるのかすら知らない人も多いのです。

お勤め先によって退職金額の基準は違いますが、退職金は老後の大切な生活資金です。どの程度、退職金が期待できるのかを知っておかないことには、将来必要な貯金がわかるはずありません。仮にお勤め先に退職金制度が本当になく、貯金も安心できるほどできていないのであれば、早急にお金の使い方を見直す必要がでてきます。

ですので、退職金はすぐにでも確認したいところですが、退職金のことを考えようとすると皆さん、少し悩ましい気持ちが働くようです。筆者も相談者に退職金の確認を促すことは多いのですが、たいてい「そんなこと会社に聞きづらい」といった反応が返ってきます。「退職金のことなんか聞いて辞める気なのかと思われるんじゃ......」と不安に思う気持ちが出てくるようです。ですが、退職金は、会社がご自身に代わり、将来のためにお金を貯めてくれている制度といえます。何もせずに将来が不安だと頭を抱える前に、きちんと確認しておきましょう。意外と、といってはなんですが、会社の担当者は教えてくれるようですよ。同様に国民年金や厚生年金の公的年金額も確認しておきましょう。

退職後の生活費はいくら確保したいですか?

「収入」が確認できたら、次は、老後の生活のための必要額の計算です。
この「支出」確認も相談者に促しますと、「そんな、将来のことなんか分からない!」といった反応をよくいただきます。しかし、イメージできる範囲内で金額を出してみることは大切です。前述の家計調査のデータも参考にしていただきたいと思います。
ただ、老後のお金の問題になると、医療や介護費用のことも考えておく必要があるでしょう。生活費以外にお葬式代等の準備金も含め、1000万円は2000万円以外に用意しておくと安心といえるかもしれません。

まとめ

老後が不安という声は多いですが、その不安の原因は、これからの「収入」と「今の貯金」で今後の「支出」がまかなっていけるのかが分からないからです。シンプルに考えれば、まかなっていけそうとの予測がたつ準備ができていれば、不安は和らぐでしょう。と、簡単に言うものの、老後の資金を割り出すことは少し手間のかかる作業です。しかし、今後の生活スタイルや退職金、年金等のお金の「知らなかったこと」を早めに解消することで、「意外と自分は大丈夫」という安心材料になることもあります。
まずは、「収入」と「支出」の確認から、取り組んでみてはいかがでしょうか。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

出典

総務省統計局「世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況」表Ⅲ-5-1 貯蓄現在高階級別世帯分布(二人以上の世帯) -2018 年-
http://www.stat.go.jp/data/sav/2018np/pdf/gy03.pdf

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