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【薬剤師が解説】「健忘症」と「認知症」の違いは? 危険な物忘れのサインを見分ける方法

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年齢を重ねるごとに、ちょっとした物忘れが増えるのは自然なことです。しかし、物忘れの回数が増えてくると「ひょっとして認知症かしら?」と不安を感じる人も少なくありません。

2012年現在、65歳以上の認知症患者は462万人と推定されており、2025年には5人にひとりが患う病気になるのでは、ともいわれています。

内閣府ウェブサイト「平成29年版高齢社会白書(全体版)|3 高齢者の健康・福祉」の情報を基に作図

では、加齢にともなう正常な物忘れ(健忘症)と、認知症はどう違うのでしょうか。

今回は、健忘症と認知症の違い、そして認知症の一歩手前とされる軽度認知障害(MCI)について解説し、認知症の発症を遅らせるのに役立つとされる対策をいくつか紹介します。

健忘症と認知症は別物

健忘症は、加齢にともなう物忘れです。忘れていたことでもちょっとしたきっかけがあれば思い出すことが可能で、「忘れた」という自覚もあります。物忘れが原因で日常生活に支障が生じることは、通常ありません。
一方、認知症は脳や身体に何らかの原因があって生じるものです。記憶だけではなく判断力も乏しくなるため、通常の社会生活を送るのが少しずつ困難になってきます。

政府広報オンライン「暮らしに役立つ情報>もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」の情報を基に作図

認知症の多くを占めるのは、「アルツハイマー型認知症」です。脳に異常なたんぱく質が蓄積して神経細胞に悪影響をおよぼし、脳の一部が委縮する過程で認知症の症状があらわれます。アルツハイマー型認知症を根本的に治す治療法はありませんが、早めに治療を開始すれば進行を遅らせることは可能です。

他方、病気により認知症の症状があらわれることもあります。正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など脳の病気、甲状腺機能低下症など内分泌に関わる病気、ビタミン不足で生じる病気、免疫系の病気、呼吸器や肝臓・腎臓の病気、感染症などが原因になることもあります。この場合、原因となっている病気を治療することで症状の改善が期待できます。
その他、うつ病やせん妄(意識障害の一種)でも認知症と同じような症状があらわれたり、服用している薬が影響したりするケースもあります。
このように認知症の原因は多岐にわたります。その点をしっかりと理解し、「おかしいな」と思ったら早めに医療機関を受診することが大切です。

▼根本的な治療が難しい認知症

  • ・アルツハイマー型認知症
    脳神経が変性し、脳の一部が委縮する認知症。物忘れから始まり、今までできたことがだんだんできなくなる。
  • ・血管性認知症
    脳梗塞や脳出血で発症する認知症。できること・できないことがはっきり分かれている場合が多い。
  • ・レビー小体型認知症
    脳の広い範囲にレビー小体という異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が徐々に減っていく認知症。あるはずのないものが見える「幻視」や、手足が震える・小刻みに歩くなどのパーキンソン症状があらわれることもある。
  • ・前頭側頭型認知症(別名:ピック病)
    脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ壊れていく認知症。物忘れではなく、性格変化や異常行動が目立つ。
▼原因となる病気を治療することで改善が期待できる認知症

  • 脳の病気(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など)
  • 内分泌の病気(甲状腺機能低下症など)
  • ビタミンの欠乏や代謝異常で起きる病気(ビタミンB1欠乏症・ビタミンB12欠乏症・葉酸欠乏症など)
  • 免疫系の病気(自己免疫性疾患など)
  • 内科系の病気(呼吸器・肝臓・腎臓疾患、神経感染症など)
▼認知症と間違えられることがある病気

  • ・うつ病
    ストレスなどが原因で生じることがある。うつ病の物忘れは、記銘力(新たなことを記憶する力)の低下。
  • ・せん妄
    急激な環境の変化にともない生じる。突然あらわれることが多いが、数日以内に改善する。意識があいまいな状態で、興奮したり怒ったりすることがある。

厚生労働省ウェブサイト「みんなのメンタルヘルス 認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス」の情報を基に筆者作成

早めの発見で認知症の発症を遅らせる対策を

認知症のように生活に支障をきたすほどではないものの、同年代の人より物忘れの症状が強い場合は、「軽度認知障害(MCI)」かもしれません。厚生労働省は、下記のような症状がある場合、軽度認知障害と定義しています。

  1. 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
  2. 本人または家族による物忘れの訴えがある。
  3. 全般的な認知機能は正常範囲である。
  4. 日常生活動作は自立している。
  5. 認知症ではない。

引用:軽度認知障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

MCIはいわば認知症の一歩手前の状態で、年間10~15%が認知症に移行する、といわれています(※)。しかし、MCIの段階で早めに対策を講じれば、発症を遅らせることが可能です。
MCI改善を目指すには脳の血流量を高めること、そして脳を適度に刺激することがポイントです。効果の期待される運動や食生活、認知トレーニングの内容を見ていきましょう。

運動

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動がMCI改善に良いとされています。より高い効果を求める場合は、2つのことを同時にするのがおすすめです。歩きながら計算をする、足踏みをしながらしりとりをするなど、簡単なことを同時に行うだけで脳の血流量がアップし、認知症の発症予防に効果が期待できます。

食生活

まずは栄養バランスの良い食事を心がけましょう。おすすめは抗酸化作用があるとされるビタミンCやビタミンE、βカロチンを含む果物や野菜です。ポリフェノールを含む赤ワインもMCI改善に効果が期待できます。魚に含まれるDHAやEPAも血流改善効果が期待できるため、積極的に摂取しましょう。

認知トレーニング

脳に適度な刺激を与えることは、MCIの進行を抑えることにつながります。難しいことをする必要はなく、楽器の演奏や簡単なゲームなどで十分です。計算をする、日記を書く、人と話すといったことも認知トレーニングになります。

物忘れに気付いたら医療機関を早めに受診

物忘れが増えてきた、と感じたら早めに医療機関を受診しましょう。「物忘れ外来」がある医療機関が理想ですが、かかりつけ医に相談するのもおすすめです。
そもそも「物忘れ」という症状はだれにでも生じうるものです。そして、認知症の発症は恥ずかしいことではありません。

アルツハイマー型認知症など、脳の萎縮や神経の損傷にともなう認知症を根本的に治療する薬はいまだ開発されていませんが、早めに治療を開始すれば進行を遅らせることができます。また、病気が原因の認知症であれば、原疾患の治療で症状改善が期待できます。

QOL(生活の質)を向上させて健康寿命を延ばすためにも、物忘れに気付いたら積極的に医師に相談して対策を講じましょう。

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