病気

内科医が解説 褥瘡初期の症状と適切な治療・介護の方法とは

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自宅で両親などを介護している場合、被介護者はほとんどベッドかイスの上で生活していることも少なくないでしょう。周りから「褥瘡(じょくそう)に気をつけたほうがいい」と言われることもあるかと思いますが、実際のところ、具体的にどのように気をつけ、何をすればよいのか、と悩んでいる方はいませんか?

そこで今回は内科医である筆者が、「そもそも褥瘡とは何なのか」「褥瘡はなぜ問題になるのか」をわかりやすく解説します。
自宅でできる褥瘡の予防方法についてもお伝えします。ぜひ参考になさってください。

褥瘡とは何か?

褥瘡(じょくそう)とは、いわゆる「床ずれ」のことです。
褥瘡の専門家で作る日本褥瘡学会は、褥瘡を以下のように定義しています。

「寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうこと」

引用:一般社団法人日本褥瘡学会 褥瘡について

褥瘡はどうしていけないのか?

高齢者に褥瘡が良くないと言われる理由は、一度褥瘡になるとなかなか治らないからです。褥瘡は、早ければ数時間のうちにできてしまいますが、治療にはとても長い時間がかかります。
また、褥瘡の恐ろしいところは、皮膚の表面よりも目では見えないからだの内側の痛みのほうがひどい場合があることです。「皮膚の表面がちょっと赤くなっているくらいだから大丈夫」と軽く見て放置し、適切な治療をせずにいた結果、細菌感染を起こして命にかかわるほど重症になることもあるので注意が必要です。

褥瘡の症状と原因

褥瘡には主に、二つのタイプがあります。
まず、できて3週間以内の褥瘡を「急性期褥瘡」と呼びます。はじめは圧迫された部分の皮膚が赤くなり、ただれ・水ぶくれ(水疱;すいほう)・紫斑(しはん)などが現れます。この時期の褥瘡は痛みや熱を持つことが多く、出血しやすいので、比較的気がつきやすいものです。皮膚の赤みの程度が軽い褥瘡であれば、適切に対処することで1〜2週間で治ることもあります。

急性期で治りきらなかった褥瘡は、「慢性期褥瘡」へと移行します。傷の表面が黒や黄色の乾いた壊死組織(えしそしき;腐った組織)で覆われます。そして壊死組織の下にポケット(空洞)を作ったり、細菌感染を起こして膿がたまったりしてしまいます。
慢性期になると痛みを感じることが少なく、気がついたときにはとても大きな褥瘡となり、入院や手術が必要となることも少なくありません。

▼急性期褥瘡と慢性期褥瘡の違い

急性期褥瘡
褥瘡ができてから3週間以内

慢性期褥瘡
褥瘡ができてから3週間以降

特徴

  • 皮膚が赤くなる
  • ただれや水ぶくれ、紫斑などが現れる
  • 痛みや熱を持つ
  • 出血しやすい
  • 傷の表面が黒や黄色をした壊死組織に覆われる
  • 壊死組織の下に空洞ができやすくなる
  • 細菌感染を起こし、膿がたまる

症状
処置

  • 適切な治療により、1~2週間でよくなる
  • 治りきらない場合は、慢性期へと進行する
  • 痛みを感じることが少ない
  • 程度によっては入院や手術を要する

筆者作成

褥瘡の原因

褥瘡は、いろいろな要素が絡み合って起こります。直接の原因は、同じ体勢で長い時間寝ている、もしくは座っていることです。
同じ姿勢で長い時間過ごすと皮膚が圧迫されて血液の流れが途絶え、細い血管が詰まってしまいます。その結果、栄養や酸素が届かなくなって皮膚の細胞が死に、炎症が起こることで褥瘡となるのです。

健康な人は褥瘡になる前に痛みを感じるため、無意識に身体の向きを変えて(寝返り、体位交換)圧迫を解除します。ところが、寝たきりの人や神経障害などで痛みを感じない人は適切な体位交換ができないので、簡単に褥瘡ができてしまうのです。

このほか、介護する人の知識不足や情報不足、服用している薬の影響なども、褥瘡のできる原因として挙げられます。また、下記の持病のある方は、褥瘡ができやすいとされており、より注意して見守る必要があります。

▼注意したい持病

①注意したい疾患

  • うっ血性心不全
  • 骨盤骨折
  • 脊髄損傷
  • 糖尿病
  • 脳血管疾患
  • 慢性閉塞性肺疾患

②褥瘡発生の危険因子として
特に考慮すべき疾患

  • 悪性腫瘍
  • アルツハイマー病
  • 関節リウマチ
  • 骨粗しょう症
  • 深部静脈血栓症
  • パーキンソン病
  • 末梢血管疾患
  • 尿路感染症

引用:褥瘡ガイドブック 第2版(照林社、2015年)p149

褥瘡になりやすい場所

褥瘡の部位イラスト / イラストAC利用規約

褥瘡は、上の図のように骨が出っ張っている場所に起こりやすいとされています。ここは、寝ているときや座っているときに寝床や座面に当たりやすい場所とも言い換えられます。

具体的には、仙骨部(せんこつぶ;お尻の真ん中あたり)、坐骨部(ざこつぶ;座った際におしりの骨が出っ張る部位)、大転子部(だいてんしぶ;太ももの骨が出っ張る部位)、踵部(しょうぶ;カカトから足の裏にかけて骨が出っ張る部位)、腸骨稜部(ちょうこつりょうぶ;骨盤の前側の骨が出っ張る部位)です。

褥瘡の診断と治療

褥瘡の診断は、皮膚の状態や経過などから比較的簡単につけられます。褥瘡の重症度は、日本褥瘡学会で定めた『DESIGN-R®2020』という分類に沿って決められます。
組織がどのくらいの深さまで傷んでいるのか、傷の大きさや浸出液(しんしゅつえき)がどのくらい出るのか、細菌感染を起こしていないか、を見ています。

褥瘡深度の図 / イラストAC利用規約

なお、『DESIGN-R®』は、褥瘡が治ってきているかどうかの経過を数値化し、誰が見てもわかるようにする役割も担っています。

治療は、全身状態の管理と傷の管理の両面から行います。
全身状態の管理では、褥瘡の治療に影響を与えるおそれのある持病の治療(糖尿病など)を行うとともに、感染に対する治療、栄養状態の管理などを行います。

傷の治療としては、病態時期と重症度に応じて軟膏や創傷被覆材を用いて治りを手助けします。また、必要に応じてデブリードマン(壊死組織の除去)を行い、細菌感染をコントロールするとともに傷の治りを助けます。

治療後の欠損が大きいときは、「皮弁(ひべん)」と呼ばれる、褥瘡部を覆う処置や皮膚移植などの手術が行われることがあります。

自宅でできる褥瘡の予防方法

褥瘡を作らないためには、予防がとても大切です。ここでは、自宅でできる褥瘡の予防方法をいくつか説明します。

褥瘡のリスクをはかれる「OHスケール」

褥瘡のできやすさを知る方法として、「OH(大浦-堀田)スケール」があります。これは、医療者でなくても比較的簡単に評価できる方法です。以下の四つから構成されるシンプルなものであり、当てはまる項目が多ければ多いほど、褥瘡になりやすいとされています。

褥瘡防止効果の高い方法は

褥瘡を防ぐ最も良い方法は、適切な体位交換です。皮膚の圧迫を解除することで褥瘡ができにくくなります。主に以下を意識して行うとよいでしょう。

  • 体位変換を2時間ごとに行う
  • クッションや体圧分散寝具を効果的に利用する
    (介護保険を用いて除圧のためのマットレスを借りることができます)
  • 体型に合わせて、ずり落ちなどが起こらないよう体位を工夫する。

栄養状態改善も防止策のひとつ

被介護者の栄養状態に問題はありませんか? 低栄養状態が長く続くと筋肉や脂肪組織が減少し、骨が突出して褥瘡発症率が高くなります。さらに栄養状態の悪化はむくみや血行不良の原因にもなり、褥瘡ができやすくなるばかりでなく、すでにできている褥瘡の治りも遅くなります。ぜひ栄養(熱量やたんぱく質)とともに、アミノ酸やビタミン、微量元素を補給するようにしましょう。(※)
必要な栄養量を知りたい場合、口から食事をうまくとれない、誤嚥性肺炎を繰り返すなどの場合は、医師や看護師・栄養士などの専門家に相談しましょう。

スキンケアも大切

高齢者は皮膚の状態が悪いことが多く、毎日のスキンケアはとても大切です。下記のようなお手入れを日常的に行い、清潔な状態を保つようにしましょう。

  • 保湿クリームを塗る
  • 骨の突出部に体圧を分散できる素材の福祉用具を用いる
  • 入浴や清拭を行い、皮膚を清潔に保つ
  • 失禁時には洗浄剤で汚れをていねいに落とし、撥水作用のあるスキンケア用品でケアする

褥瘡の前触れを知る

寝たきりイラスト / イラストAC利用規約

皮膚の赤みが褥瘡かどうかを見分けるもっとも簡単な方法は、体位変換した30分後に赤みがどうなったのかを観察することです。赤みが残っていれば、褥瘡が発症したと考えます。このほか、赤みの部分を指で3秒ほど押して、白っぽく変わるかどうかを見る「指押し法」もあります。押しても赤みが消えないものは、初期の褥瘡です。

「褥瘡かも?」と思ったら早めに形成外科医へ

褥瘡は、早め早めの対処が必要な病気です。指押し法などで褥瘡の疑いが考えられた場合は、褥瘡の専門家である形成外科医に相談するのがよいでしょう。

まとめ

褥瘡は活動性の低下だけでなく、栄養面や清潔面などさまざまな要因がからんで起こります。一度褥瘡が起きれば痛みや感染などの問題が出て、全身状態が急に悪くなることも珍しくありません。だからこそ、褥瘡にならないように予防することがとても大切です。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

参考

※日本皮膚科学会ガイドライン 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―2:褥瘡診療ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/bedsore_guideline.pdf

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