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【看護師が解説】腎不全から透析に 生活はどう変わる? 負担を抑えながら治療を進めるためのポイント

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透析(とうせき)とは、腎臓に代わって機械で血液をきれいにする治療法です。いくつか種類がありますが、なかでも血液透析は拘束時間が長く通院する回数も多いので、患者さんにとっては負担になります。さらには食事制限や体重コントロールなど、さまざまな制限もあることから透析治療を始めてからの生活がイメージできず、不安に感じる方もいることでしょう。

今回は、透析の仕組みや生活上の注意点について解説します。腎不全の治療をしている方や、透析に不安を感じている方の参考になれば幸いです。

透析とは?

腎臓は、普段あまり意識しない臓器かもしれませんが、私たちが生きていくうえで大きな役割を担っています。全身の血液の約4分の1の量が流れている器官であり、血液中の老廃物をろ過して血液をきれいにしたり、尿をつくったりする大切な場所です。つまり、腎臓が機能しなくなることは、老廃物が血液の中に残ってしまったり、必要な成分が尿として排出されてしまったりすることを意味します。

腎臓が機能しなくなった場合には、「透析」「腎移植」といった治療法があります。このうち、日本で多く選ばれている血液透析は、腕に針を刺して血液をダイアライザー(人工腎臓)に通し、血液をきれいにしてからからだの中に戻す方法です。血液中の不要な水分や老廃物を取り除く、ろ過装置のようものを想像するとよいでしょう。

血液透析は日中病院に通って行うことが一般的ですが、他にも下記の方法があります。

オーバーナイト透析(深夜透析)

夜間、寝ているあいだに血液透析を行う方法です。日中に拘束されるわずらわしさがないほか、一般的な血液透析より長い時間かけて行うため、からだへの負担を軽減できます。

在宅透析

自宅で血液透析を行う方法です。病院に通う手間が減らせる、家族と一緒に過ごしながら透析できるというメリットがある一方、自分自身で透析を行うための手順を学ぶ必要があります。

日本透析医学会の調べでは、2019年に末期腎不全で透析を受けている患者数は34万4,640人いることが分かっています。下記グラフのとおり、透析患者数は年々増加しています。

一般社団法人日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2019 年 12 月 31 日現在)|図 1 慢性透析患者数(1968-2019)と有病率(人口 100 万対比,1983-2019)の推移」を基に作図

透析はなぜ必要? 透析の適応になる病気

ここまで透析は腎臓の代わりを担う治療法と解説しました。ここでは、透析が必要になるまでの過程を具体的にお伝えします。

透析は腎臓の機能が働かなくなる状態、いわゆる「腎不全」で適応になります。腎不全を引き起こす原因は遺伝性の病気を含めさまざまですが、主に以下のものがあります。

糖尿病性腎症

糖尿病の三大合併症のひとつです。糖尿病を発症後、長い時間を経て発病します。透析を行う患者さんの多くが、糖尿病性腎症を原因としています。

腎硬化症

高血圧が続くことで、腎臓の血管が動脈硬化を引き起こし、腎不全につながる病気です。

慢性糸球体腎炎

腎臓の糸球体という部分に炎症を起こす病気の総称です。糸球体には血液から尿のもとになる原尿を作る役割があります。

透析は、腎不全になってすぐに必要になるわけではありません。まずは、下記の治療を主に行います。

  • 腎不全の原因になっている病気の治療
  • 食事や運動などの生活指導
  • 内服薬での治療

これらを行っても効果がなく、末期の腎不全になると回復の見込みがなくなり、透析か腎移植が行われます。一般社団法人日本透析医学会によると、透析や腎移植の導入基準は、下記のとおりです。(※1)

  • 腎機能が10%以下
  • 高度の尿毒症症状
  • 体液過剰
  • 高カリウム血症・強い酸血症の症状が現れた場合

透析を始めると生活はどのように変わる?

医師から「透析が必要になるかもしれない」と言われたとき、気になるのは生活がどのように変わるのかだと思います。
ここでは一般的に考えられる生活への影響を見ていきましょう。

病院で行われる血液透析は、通常1回につき4~5時間かかり、週3回のペースで行われます(※2)。拘束時間が長く頻度も高いので、仕事をしている人は調整する必要が生じます。特に会社員の方は職場の理解が必要になるでしょう。夜遅くまで診療している病院であれば、仕事終わりに通うこともできますが、それでも職場の理解は欠かせません。

透析の費用は、月に15回まで保険が適用されます。(※2)治療にあたり、「身体障害者手帳」「障害者医療費助成制度」「特定疾病療養受領証」などの福祉制度が利用できます。

透析患者の方は、透析前と同様、健康管理が重要です。透析をするとはいえ、腎臓機能のすべてをカバーできるわけではありません。腎臓に負荷のかかる生活を続ければ、命の危機につながります。気を付けたいのは以下のポイントです。

食事:塩分、タンパク質、カリウム、水分を控えめにする
血圧コントロール:高血圧は、心筋梗塞や心不全などのリスクになる
体重コントロール:体内の水分量のチェックや合併症予防のために重要

このような話を聞くと、「もう元の生活のようには戻れないのだ」とがっかりしてしまうかもしれません。確かに透析をしても腎臓そのものの機能が回復するわけではないので、治療は一生続きます。しかし、透析で状態が安定すれば、透析前に近い状態で生活ができます。自宅を数日離れる場合であっても、出かけた先の病院で透析を受けられるのなら旅行や出張も可能です。

透析をしながら自分らしく生活するために

透析は、生活スタイルに大きな影響を与える治療ですが、自分らしい生活を失うわけではありません。以下のポイントを押さえながら、透析とうまく付き合っていきましょう。

1.自分に合った治療法を選ぶ

腎不全になったときの治療法には、透析や腎移植、血液透析やオーバーナイト透析など、さまざまな方法があります。自分の状態にはどの治療が適しているのか見極めながら、それぞれの治療のメリット・デメリットを踏まえ、医師とよく相談して決めましょう。

2.合併症に注意する

貧血、血圧低下、透析アミロイド症(手根管症候群など)といった合併症には十分留意しましょう。
手根管症候群とは、手首にある神経が通っている部分で神経が圧迫されることで、手のしびれや動かしづらさを感じる病気です。透析によってアミロイドが手首の骨や関節に沈着することで起こります。気になる症状があれば、通院時に相談しましょう。

3.周囲の人の理解を得る

透析を続けるためには周囲の理解が欠かせません。透析そのものや生活習慣に関する理解を得て、周囲の人たちに協力してもらいましょう。職場だけに限らず、家族の理解も必要です。たとえば、食事の用意を家族が行っている場合には、塩分やタンパク質を制限した食事について理解してもらうことになります。分からないことがあれば、医師や看護師などの専門職に遠慮せず質問してみてください。

4.自己管理を徹底する

透析が必要な方は、食事制限や体重・血圧のコントロールなど、日常生活で気を付けなければいけないことがあります。ときには「これくらい大丈夫だろう」と思うこともあるかもしれませんが、毎日の積み重ねが普段の生活につながっていきます。
通院時に専門職に相談したり、患者会に参加して患者同士でコミュニケーションをとったりするなどし、ひとりで頑張らないようにしましょう。

まとめ

残念ながら、透析をしても腎臓の機能は元に戻りません。透析が始まれば、ずっと付き合っていくことになります。これまでの生活が変わる部分もあると思いますが、コントロールできれば普段に近い状態を維持できるでしょう。

生活スタイルに合った治療を選び、周囲の協力を得ながら自分らしい生活を送っていきましょう。

※1 一般社団法人 日本透析医学会 「腎不全 治療選択とその実際(2020年版)p7

※2 東邦大学医療センター 大森病院 腎センター 「血液透析(HD)を知る

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