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重症化のリスクも! 大人もかかる「手足口病」 注意点を薬剤師が解説

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手足口病とは、夏に流行することが多いウイルス性の感染症です。例年、患者の9割前後を5歳未満の乳幼児が占める(※)ため、「子どもの病気」と思われがちですが、大人でも感染するおそれがあります。

大人が感染すると子どもの場合より重症化することが多く、インフルエンザのような症状があらわれることも少なくありません。また、繰り返し感染する場合もあり、ごくまれに脳炎や心筋症などを合併することもあります。

今回は、手足口病の症状と対処法、そして感染を拡大させないための注意点などを解説します。

手足口病の流行状況

過去5年の流行状況をみると、2019年夏に大流行したのを最後にその後はほとんど報告がありません。しかし流行がないということは、それだけ免疫を獲得している人が少ないことを意味します。したがって今後、2019年以上の規模で流行したとしてもおかしくはありません。
下記は東京都のデータになりますが、全国で見ても同じ傾向にあると捉えて差し支えないでしょう。

東京都健康安全研究センターウェブサイト「定点報告疾病 週報告分 推移グラフ」より、「手足口病」をプルダウン表示のうえ「5年間比較」を選択して生成したグラフを基に作図

手・足・口だけではない手足口病の症状

手足口病は、その名のとおり手のひら、足の裏や甲、口の粘膜などに痛みをともなう2~3mmほどの湿疹(水疱)ができる病気です。湿疹は、肘や膝、お尻にできることもあります。
潜伏期間は3~5日程度。子どもの場合は発症から5日ほどで症状が治まります。発熱をともなうケースは3分の1程度と言われていますが、高熱が続くことはあまりありません。しかし、大人の場合はだるさや寒気、関節痛や筋肉の痛みなどインフルエンザと同じような症状が出ることもあります。湿疹に激しい痛みをともなう場合もあり、足裏に症状が出た場合は歩けなくなる人もいます。

もっとも、手足口病の症状は特に治療をしなくても数日程度で自然に治癒する場合がほとんどです。しかし、発症から1~2カ月後に爪に横線が入ったり爪が脱落したりすることもあります。また、年齢にかかわらず、髄膜炎や脳炎など中枢神経系の合併症、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺といった合併症が生じる場合もあります。高熱が続く場合、頭痛や嘔吐などの症状がある場合、下表にあげる症状がある場合は、医療機関の受診を強くおすすめします。

▼手足口病の症状と合併症

手足口病が疑われる症状

・口内に炎症が起きている。手・足にも湿疹がある

・発熱の症状に加え、口内に痛みがある

・手足や肘・膝・尻などに原因不明の湿疹がある

・風邪のときに感じるような悪寒がある

・全身にだるさがある

・関節痛・筋肉痛がある

まれに起きる合併症と症状(例)

・髄膜炎(脳を覆う髄膜に炎症が起きる病気)

症状:頭痛・発熱・嘔吐・首(うなじ部分)の硬直など

・小脳失調症(小脳や脳幹・脊髄などに障害が起きる病気)

症状:歩行時のふらつき、手足を思うように動かせない、うまく話せないなど

・脳炎(脳に炎症が起きる病気)

症状:頭痛・発熱・意識障害・けいれんなど

・心筋炎(心臓の筋肉が炎症を起こす病気)

症状:動悸・呼吸が苦しい・胸が痛い・疲れやすいなど

・神経原性肺水腫(脳や神経への障害によって肺に水が溜まりうまく呼吸ができなくなる病気)

症状:息切れ、血痰、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸など

・急性弛緩性麻痺(筋肉を収縮させる機能が急速に失われる病気)

症状:力が入らない・筋力の低下・手足の麻痺など

手足口病の対処方法

手足口病の治療薬は、残念ながら存在しません。痛みがひどい場合には鎮痛薬の処方が考慮されます。口腔内の症状に対しては粘膜を保護する塗り薬、かゆみにはステロイド以外のかゆみ止めが処方されることもあります。なお、ステロイドを塗布すると症状が悪化するおそれがあります。塗り薬を自己判断で使うことは控えましょう。

口内の痛みがひどい場合は、食欲が落ちて水分の摂取量も少なくなってしまうことがあります。脱水を防ぐために水分をたっぷりととり、のどごしの良いものや刺激の少ないものを食べるようにしましょう。飲水すら難しい場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。

なお、抵抗力が落ちると症状が悪化するおそれがあります。体調がすぐれない場合は無理をせず、しっかりからだを休ませることを心がけてください。

▼手足口病の対処方法

処方薬などによる対応

・痛み:鎮痛薬

・口腔内の症状:粘膜保護作用のある塗り薬

・かゆみ:かゆみ止め

※ステロイドは症状を悪化させるおそれがあるため、使用しない

口腔内の痛みがひどい場合

・飲み物(麦茶・牛乳・冷たいスープなど)

※オレンジジュースや炭酸飲料など刺激のあるものは避ける

・食べ物(ゼリーや豆腐、冷めたおかゆなど、のどごしが良いもの)

日常生活での注意点

・日焼けを避ける(免疫力が落ちるため)

・睡眠を十分にとる

・暴飲暴食を避ける

・女性は月経時に無理をしない

手指洗浄とマスクの着用で感染拡大を阻止

手足口病は原因となるウイルスが何種類かあるため、感染歴があっても繰り返し罹患するおそれがあります。そのため、継続的な感染対策が必要です。特に幼い子どものいる家庭では、家庭内感染に注意しましょう。子どもがいない場合でも、人混みや公共交通機関などで感染することがあるため、油断は禁物です。

感染経路は飛沫感染や接触感染、経口感染です。そのため、手指洗浄やマスクの着用などで予防は可能です。症状が回復したあとも糞便中にウイルスが1カ月程度排出されるため、子どものおむつ替え後はしっかり手を洗うようにしましょう。公共のトイレなどを使用した場合も同様です。

2019年以降、手足口病の流行が抑えられているのは、新型コロナウイルス感染症の影響で人々の外出機会が減っていること、手指洗浄やマスクの着用など感染症対策が徹底されていることが影響していると考えられます。しかし、先に述べたように手足口病のウイルスに対する抵抗力を持つ人が少なくなっているため、今後はいつ大流行が発生しても不思議ではありません。

新型コロナウイルス感染症の流行に終息の目途がついたとしても、基本的な感染症対策は続けるようにしましょう。

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