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認知機能低下のリスクも 高齢者の「低栄養」状態に注意しよう

kurashino

食が細る、調理がおっくうになるなど高齢になると食事にさまざまな影響が出てきます。その結果、「低栄養」の状態に陥っている高齢者は少なくありません。

高齢者の低栄養状態は体力や免疫力の低下を引き起こすだけでなく、認知機能や健康寿命にも影響します。

この記事では、低栄養が続くとどのようなことが起こるのか、どうすれば改善できるのかを一緒に見ていきましょう。

65歳以上の女性 20%以上が「低栄養傾向」

厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」によると、年齢が上がるほどに「低栄養傾向」にある人の割合が増えています。

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告|P48. 図22 低栄養傾向の者(BMI≦20kg/㎡)の割合(65歳以上、性・年齢階級別)」を基に作図

低栄養傾向の人にはさまざまな理由が考えられます。年齢とともに食が細くなったり、食べ物がかみにくくなったりすることで食事量が減ることもひとつにはあるでしょう。また、買い物や調理がおっくうになる、ひとり暮らしなど世帯人数が少ない場合は同じものばかり食べてしまう、といったことも考えられます。

低栄養が引き起こす要介護のリスク

低栄養がからだにもたらす影響はさまざまです。体力や筋力の低下はもちろんですが、低栄養状態が続くことの弊害のひとつとして、身体機能が衰え、ささいなストレスで要介護に至る危険が高い状態(フレイル)に陥ることが挙げられます。

体力・気力が大幅に低下しているフレイル状態は、単に「栄養が足りなくて筋力が落ち、活動しなかったためにからだが弱る」というだけで片付けられる問題ではありません。改善しなければ、悪循環に陥ってしまうのです。

食事をとるというのは単なる栄養摂取ではありません。材料を買いに行き、調理をするという過程もまた、心身の健康維持に役立っています。

低栄養がもたらす多くの疾患と認知機能への影響

低栄養が招くのは体力の低下にとどまりません。そのまま放っておくと、下記のような症状の出てくることが考えられます。

  • サルコペニア:加齢による筋肉の衰え
  • ロコモティブシンドローム:骨や関節、筋肉に障害が出て日常生活に影響しはじめる
  • カヘキシア:がんなどからだの消耗をきたす疾患によって痩せが進む

いずれも要介護につながる、あるいは死亡リスクが高まる見逃せない症状です。内部疾患だけでなく、骨や関節の変形につながるという点には注意が必要です。

低栄養は、認知機能が低下するリスクが高くなることも分かっています(※1)。
認知機能には鉄分を必要とする赤血球、脂質を必要とするHDL(善玉)コレステロール、たんぱく質を必要とするアルブミンの量が関係しています。これらの数値が少ないと認知機能低下のリスクが高くなることが、東京都健康長寿医療センター研究所の調査によって明らかになっています。からだのあらゆる健康を害する低栄養の悪循環は断ち切らなければなりません。

東京都健康長寿医療センター研究所ウェブサイト「食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケン-」の情報を基に作図

栄養のとりかたと食が細くなっているときの解決策

健康を維持できる栄養摂取は一般的にも言われるとおり、「バランスの取れた食事」が基本です。主食、主菜、副菜といった和食の基本もそうですが、乳製品や果物の必要性に注意しましょう。

なお、「一汁三菜」を基本とする和食=日本人の伝統的な食文化は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。健康的な食生活を支える栄養バランスであることも選定のポイントです。日本の食文化の優れている点は、ぜひとも有効活用したいですね。

ちなみに、朝昼晩の3食で栄養を均等に取ることは、1日のどこかで一気に取るよりも身体に良い影響を与えることが分かっています。(※2)
しかし、毎日バランスのよい食事を取ることは大変です。猛暑で食欲が落ちている時期は特に、からだが受け付けないという日もあるかもしれません。こういうときは、栄養補給飲料やゼリーなどを食事の代わりにとって構わないでしょう。ただし、エネルギーが180kcal以上のもの、かつたんぱく質を含むものを取り入れ、健康維持に努めることが大切です。
買い物に出かけるのがおっくうな日も偏食にならないよう缶詰や乾物、冷凍食品を備蓄しておくと安心です。サプリメントの準備があるとなお良いでしょう。

長生きは健康なからだがあってこそ

医療技術の進歩もあり、「人生100年」と言われるようになりました。
「長生きをするなら少しでも長く健康な状態でいたい」。そう願うのは、誰もが同じです。これを叶えるためにも、高齢になればなるほど「食べる」ことの重要性を考えたいものです。

また、自分の健康はさることながら、「高齢の両親の食生活が心配」という方も多くいらっしゃることと思います。こうした不安を取り除く方法として、ハムや冷凍の干物などたんぱく質をとりやすい食品を時々送るのも良いかもしれません。

わたしたちのからだは食べたものからできています。この基本を忘れることなく、充実した食生活で健康な毎日を送りましょう。

※1 食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケンー|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所

※2 Mamerow MM et al., J. Nutr., 144: 876-880, 2014、下方浩史/安藤富士子, 2011, サルコペニアの基礎と臨床,監修: 鈴木隆雄、編集:島田裕之,出版:真興交易(株)医書出版部, p72-80.)

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