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トランス脂肪酸は、なぜからだに悪い? 健康への影響を薬剤師が詳しく解説

kurashino

食の欧米化にともない、日本人の食生活は大きく変わりました。なかでも食事に占める脂質の割合は著しく増えており、健康への悪影響も指摘されています。

今回は、トランス脂肪酸が含まれている食品や、からだに悪いとされる理由、日頃の食生活で注意したい点について解説します。

トランス脂肪酸とは?

脂質に含まれる成分のうち、とりわけ問題視されているのが「トランス脂肪酸」です。世界保健機関(WHO)は、トランス脂肪酸から摂取するエネルギー量(カロリー)を総摂取エネルギー量の1%未満にすることを目標として掲げています。欧米では食品中のトランス脂肪酸濃度を規制している国もあります。

もっとも、欧米に比べて脂質の摂取量が少ない日本ではトランス脂肪酸に対する規制は制定されていません。しかし、脂肪エネルギー比率が30%を超えている人の割合が増えてきていることを踏まえると、何らかの対策を講じるべきと考えます。

厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告|第 1 部 栄養素等摂取状況調査の結果 第4表 脂肪エネルギー比率の区分ごとの人数の割合-脂肪エネルギー比率の区分,年齢階級別,人数,割合-総数・男性・女性,20 歳以上」を基に作表

どんな食品に含まれている?

トランス脂肪酸は、脂質を構成する脂肪酸の一種です。油脂を精製したり加工したりするときにできるため、植物油脂を精製したサラダ油、油脂の加工品であるマーガリンやショートニングなどに含まれます。また、牛をはじめとした反すう動物の胃でも作られるため、牛肉や乳製品にも含まれています。

以下は、国内に流通している食品のトランス脂肪酸含有量(平均値)です。このグラフをみると、油脂類や乳製品、これらを材料として作られる食品で、トランス脂肪酸含有量が高くなっていることがわかります。

厚生労働省資料「新開発食品評価書 食品に含まれるトランス脂肪酸 2012年3月|P.16 表4 国内に流通している食品のトランス脂肪酸含有量」を参考に筆者作成

からだに及ぼす影響

農林水産省のウェブサイト(※1)によると、海外の研究では、トランス脂肪酸について以下のようなことが報告されています。

  • トランス脂肪酸の摂取量が増えると、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や空腹時の中性脂肪の量が増え、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減る。
  • LDLコレステロールや空腹時の中性脂肪の増加は、冠動脈性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)のリスクを高めるため、トランス脂肪酸の摂取が冠動脈性心疾患のリスクと関連している可能性がある。

ただし、これらの研究報告は、日本人に比べて脂質の摂取量が多い欧米人を対象としたものです。そのため、この結果をそのまま日本人に当てはめることはできません。
実際、農林水産省の調査(※2)によると、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は総摂取エネルギー量の0.5%未満となっており、WHOの目標値である1%未満の半分以下と言われています。とはいえ、日頃から脂質の摂取量が多い人は要注意です。トランス脂肪酸の過剰摂取が気になる場合は、まずWHOの目標である総摂取エネルギーの1%未満を目指しましょう。これは重さに換算すると約2g(※3)になります。食品によっては一食でトランス脂肪酸含有量が2gを超えるものもあるので、カロリーだけではなく食品に含まれる成分にも意識を向けましょう。

▼外食食品一食当たりのトランス脂肪酸含有量

最小

最大

平均

ピザ

約0.81g

約2.12g

約1.11g

ハンバーガー

約0.36g

約1.16g

約0.72g

洋食

約0.14g

約1.86g

約0.82g

和食

約0.17g

約0.56g

約0.31g

中華

約0.11g

約0.56g

約0.27g

厚生労働省資料「新開発食品評価書 食品に含まれるトランス脂肪酸 2012年3月|P.19  表9 外食食品中のトランス脂肪酸含量(平成 20 年度)」を参考に筆者作成

食生活で注意したいこと

日常の食生活ではどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、冠動脈性心疾患のリスクが高まると言われていますが、だからといってトランス脂肪酸の摂取量を減らすために極端な食事制限をするのはよくありません。なぜなら脂肪酸を含む脂質は、からだに欠かせない栄養素のひとつだからです。

そして、健康を維持するためには、脂質の摂取量に配慮しつつバランスの良い食事をとることが大切です。最近は食品メーカーを中心とした取り組みにより、食品中に含まれるトランス脂肪酸の量はかなり抑えられています。そのため、トランス脂肪酸の過剰摂取を防ぐためには、まず脂肪の摂取量を総摂取エネルギー量の20~30%にとどめることから始めるのがおすすめです。同時に、塩分や飽和脂肪酸(動物性脂肪に多く含まれる成分)のとりすぎにも注意したいものです。

この機会に食事の内容を見直し、いまから続く将来も健康に過ごせるように努めましょう。

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