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認知症の初期症状とは? サインを見逃さないためのチェックポイントを内科医が解説

kurashino

「物忘れがひどい」「同じことを何度も聞いてくる」などの症状から、親や家族が認知症ではないか、とご心配の40〜50代の方が増えています。

この記事では、内科医でもある筆者が「親が認知症かもしれない」とご心配の方に向けて、そもそも認知症とはどのようなものなのか、認知症の初期症状、認知症と加齢による物忘れの違いに加え、認知症かどうかの簡単なチェックポイントや適切な受診のタイミングについてわかりやすく解説します。

認知症とは何か?

厚生労働省の資料では、認知症を下記のように定義しています。

いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態がおよそ6ヶ月以上継続すること

引用:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について (参考資料)|認知症の症状

つまり、認知症とは病気の名前ではなく症状の名前であるということです。

認知症の症状は大きく分けて2つ

厚生労働省 「認知症の中核症状|認知症の中核症状とは」の情報を基に作図

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状(行動・心理症状)」に大きく分けられます。「中核症状」とは、脳の神経細胞が死んでいくことによって直接発生する次のような症状で、周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなります。

(1)記憶障害

新しいことを覚えられなくなったり、思い出せなくなったりします。ひどくなると、昔のことも思い出せなくなります。

(2)見当識(けんとうしき)障害

見当識とは、現在の年月や時刻、自分の所在など基本的な状況を把握することです。認知症になると、これらがわからなくなります。症状が進むと、家族を含めた人との関係もわからなくなります。

(3)理解・判断力の障害

考えるスピードが遅くなり、二つ以上のことが重なると処理できなくなります。たとえば、倹約を心がけながら必要のない高額商品を購入したりするのが良い例です。自動販売機や駅の自動改札、銀行のATMの操作ができなくなることもあります。

(4)実行機能障害

計画や段取りを立てて行動することができなくなります。買い物時に同じものを購入してしまう、料理を並行して進められないなどの症状が現れます。

 

なお、「周辺症状」とは、本人がもともと持っている性格や環境、人間関係などさまざまな要因がからみ合って起こる、うつ状態や不安、焦燥(しょうそう)、幻覚、妄想、徘徊といった心理面・行動面の症状をいいます。

認知症の原因

認知症の原因となるものは、たくさん考えられます。病気や疾患のほか、物質や薬剤が起因となる場合もあります。なお、脳外科的疾患、内科的疾患、物質や薬剤の影響で生じた認知症は、適切な治療で完治させることが可能です。
ここでは、考えられる主な症状をまとめました。

▼認知症の原因として考えられること

原因

具体的な病名・疾患名など

認知症をきたす病気

アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、外傷性脳挫傷など

脳外科的疾患

正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫

内科的疾患

甲状腺機能低下症、ビタミンB12低下症など

神経疾患

パーキンソン病、ハンチントン舞踏病など

感染症

HIV感染、プリオン病など

その他

物質・薬剤の影響など

認知症の人はどのくらいいるのか

高齢化にともない認知症の方は増えています。内閣府の資料によると、2012年時点で認知症の高齢者数は462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(およそ15%)にあたります。これが2025年には約5人に1人に増えるとの推計もあります。

内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版) 3 高齢者の健康・福祉」の情報を基に作成

認知症の初期症状

1.認知症の前段階「軽度認知障害」

認知症ではないものの、年齢相応よりも認知機能が低下している人の症状を、「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」と呼びます。これは、いうなれば正常と認知症の中間の状態です。以下の基準を満たすとMCIと診断されています(※5)。

  • 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない物忘れがあること
  • 本人や家族からもの忘れの訴えがあること
  • 全般的な認知機能は概ね正常範囲であること
  • 日常生活に支障がないこと
  • 認知症ではないこと

正常な方からは年1〜2%が認知症を発症するのに対し、MCIからは年間10〜30%が認知症に進行することがわかっています。数年間かけて観察すると正常なレベルに回復する人も多く、いかにしてMCIの段階で発見し、対処をするのが大切であるかがわかります。

2.認知症かもしれない。疑うべき症状は?

すでに認知症と診断された高齢者のご家族が、具体的にどのような症状を見て最初に認知症だと気がついたのかをまとめたのが下記の内容(※2)です。いずれも比較的ささいなことばかりで、日常的にもよくあることのように見えますが、これらが重なって起こると認知症を疑う十分な理由となります。

  • 同じことを何回も言ったり聞いたりする
  • 財布を盗まれたという
  • だらしなくなった
  • いつも降りる駅なのに乗り過ごした
  • 夜中に急に起き出して騒いだ
  • 置き忘れやしまい忘れが目立つ
  • 計算の間違いが多くなった
  • 物の名前が出てこなくなった
  • ささいなことで怒りっぽくなった

加齢による単なる物忘れと認知症との違い

加齢による単なるもの忘れと認知症との違いは下記のとおりです。

このうちもっとも特徴的なのが、「体験」です。食事を例に挙げると、朝ご飯に何を食べたのかを忘れることは、加齢による物忘れによくあるパターンです。ところが認知症を疑うもの忘れの場合は、朝ご飯を食べたこと自体を忘れてしまいます。
この場合、「朝ご飯の内容=体験の一部」「朝ご飯を食べたこと=体験の全体」を意味します。

もの忘れの状況から認知症の兆しを知る

自分や家族のもの忘れが、加齢にともなう単なるもの忘れで良いのか、それとも認知症の兆しかどうかを知るには、上記表のなかでも、以下の点を特にしっかり見てみてください。

  • もの忘れのために日常生活に支障をきたしているか
  • 本人が忘れっぽくなったことを自覚しているか
  • もの忘れの範囲は全体か、それとも部分的なものか
  • もの忘れ以外の認知機能の低下(失語・失認・失行・遂行機能)が見られるか

はたして認知症なのか......もの忘れ以外のチェックポイント

もの忘れ以外にも、認知症を疑うサインはたくさんあります。具体的にどのような点から認知症の初期症状に気づくことができるのでしょうか。ここでは、認知症を疑ったときの観察のポイントを紹介します。

厚生労働省四国厚生支局「認知症の基礎知識と対応について| p24 観察のポイント(アセスメント)」より転載

たとえば、記憶障害があるかどうかを確認するには、「食事の内容」や「病院にかかるときの交通手段・目的」など、最近のできごとに関する記憶の有無を確認してみてください。うまく思い出せない場合は、認知症を疑ってみる必要が考えられます。なお、認知症でも昔のことは比較的鮮明に覚えています。重度の認知症の方が、今朝パンを食べたことは忘れても、小学校時代の初恋の人の話を嬉しそうにするのはそのためです。

また、時々「今日は何年の何月何日?」と聞いてみると、簡単に見当識のチェックができます。何月何日は正しく答えられていても、今年が何年になるのか、また今の元号がわからない場合は要注意です。さらに、お通夜にピンク色の服を着ていく、雨なのに傘を持たないなど、状況に応じたなど適切な服装を選べない場合には、判断や実行機能に障害があることを疑います。

これらのチェックポイントは、同居の家族でなくても気軽に確認できるものばかりです。

なお、東京都福祉保健局のウェブコンテンツをはじめ、ネットには自分でできる認知症のチェックリストがたくさん出ています。これらを上手に利用し、自分や家族の物忘れが病的なものかどうか、また以前よりも進行が見られないかどうかを定期的に確認しておきましょう。

適切な受診のタイミング

家族の認知症を疑ったら、迷わずできるだけ早い受診をお勧めします。治療で完治する認知症や、認知症と同じような症状を出すうつ病などを見逃さないことが大切です。
また、症状が軽いうちに認知症であることに気づき、特にMCIの段階で適切な治療が受けられれば、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできます。

認知症かどうかを判断するための「もの忘れ専門の外来」を開設している医療機関も多くなってきましたが、予約は数カ月待ちのところも少なくありません。「おかしいな」と思った時点で、もの忘れ外来の予約を取ることをおすすめします。

「公益社団法人認知症の人と家族の会」のウェブサイトでは、もの忘れ外来を解説している全国の病院を調べることができます。

「家族が認知症なのかどうか不安だけど病院を受診させるほどではない」、または「近くに物忘れ外来を含む認知症の治療を行っている病院があるかどうか分からない」という場合は、地域包括支援センターへ相談してみるとよいでしょう。上述の「公益社団法人認知症の人と家族の会」では、認知症の電話相談も行っています。まずは気になることを気軽に相談してみてください。

認知症の電話相談(公益社団法人 認知症の人と家族の会)
電話番号 0120-294-456
受付時間:午前10時~午後3時(月~金 ※祝日除く)
※携帯電話・PHSの場合は075-811-8418(通話有料)
このほか、全国47か所の支部でも電話相談を受け付けています

「認知症かな?」と思ったら、早めに受診しましょう

認知症および認知症の前段階である軽度認知障害は、早めに対処することで進行を遅らせることができます。家族だけで抱え込まず、早めに専門家に相談することをお勧めします。
家族の行動に「ちょっとおかしいな?」と違和感を持ったら、早めの受診を心がけましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 厚生労働省e-ヘルスネット 軽度認知障害

※2 東京都福祉局「高齢者の生活実態及び健康に関する調査・専門調査報告書」1995

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