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本当に怖い「睡眠負債」 寝不足が与える影響と解消方法

kurashino

「睡眠負債」という言葉を聞いたことがありますか? 2017年には「ユーキャン 新語・流行語大賞」のトップ10に選ばれ、注目を集めました。

睡眠負債とは、一時の睡眠不足と異なり、知らず知らずのうちに睡眠不足が重なり蓄積されることをいいます。まさに負債のようにどんどん積み重なり、心身の不調につながってしまうのです。そのため、日々の生活リズムを見直し、毎日適切な睡眠をとることが大切です。

今回は、睡眠負債の概要と目安や条件、睡眠負債がもたらす影響をはじめ、睡眠習慣にまつわるうわさとその真偽、睡眠負債の解消方法についてまとめました。

長く健康で過ごすためには、良い睡眠習慣が大切です。睡眠負債を抱え込まないよう、日々の睡眠習慣を見直してみましょう。

睡眠負債と睡眠不足は、どう違う?

睡眠負債と睡眠不足の違いは、本人が睡眠不足を自覚しているかどうかです。一般的な睡眠不足であれば、翌朝に眠気やだるさを感じます。しかし、睡眠負債は自覚症状がありません。いまは不調を感じなくても睡眠負債が続くことで、のちのち心身に悪影響が出るおそれがあります。

ここで、日本人の睡眠にまつわるデータを見ていきましょう。厚生労働省の調査によると、1日の平均睡眠時間は、「6時間以上7時間未満」が最も高くなっています。平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性36.1%、女性42.1%で、男女ともに「40代が最も高い」という結果でした。(※1)
40代は、仕事や子育てで忙しく、責任が増す世代です。このような社会的背景によって睡眠時間が減っていると考えられます。

下図は、平均睡眠時間の推移です。近年は横ばいで推移していますが、グラフがスタートする1976年から比べると減少傾向にあることが分かります。

厚生労働省 「平成26年版厚生労働白書~健康・予防元年~|図表2-3-21 平均睡眠時間の推移(15歳以上)」の情報を基に作図

また、厚生労働省の平成29年の調査によると、直近1カ月間で「睡眠で休養が十分にとれていない」とした人は20.2%でした。約5人にひとり、とさほど多くないようにも受け取れますが、過去の推移を見ると、徐々に増加していることが分かります。

厚生労働省 「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要 25P 」の情報を基に作図

睡眠負債とはどういう状態? 睡眠負債の目安とは

睡眠負債と睡眠不足の違いは、本人の自覚があるかどうかと説明しました。実は、これが睡眠負債の厄介なポイントです。睡眠負債は自覚できないため、なかなか自分では気づけません。
そこで、睡眠負債のひとつの目安となるのが「休日の寝だめ」です。

国立精神・神経医療研究センターの発表(※2)によると、「健康成人の必要睡眠時間を精密に測定した結果、平均約1時間の自覚していない睡眠不足」があったそうです。
ここからは、眠気やだるさがなくても寝だめをしてしまう人は、日々の睡眠時間が足りていないことが考えられます。なお、同センターは、「休日に長時間の寝だめを行わないで済む睡眠時間の確保が、潜在的睡眠不足を予防する目標となる」としています。

睡眠負債による心身への影響とは

睡眠負債に陥ると、身体面や精神面にさまざまな悪影響を与えます。

1.肥満

睡眠が足りないと、食欲を抑えるホルモンであるレプチンが減り、食欲を増強させるグレリンが増加するため、肥満につながります。

2.生活習慣病

高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病など、さまざまな生活習慣病を引き起こします。原因はさまざまですが、ひとつは自律神経のバランスが崩れるためです。交感神経が働くことで血管が収縮し、高血圧になりやすくなります。さらに、高血圧が原因となり、心臓病や脳卒中などさまざまな病気につながります。
もうひとつは、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが増えることで、血圧と血糖値が上昇し、病気へとつながります。

厚生労働省 「e-ヘルスネット[情報提供] 睡眠と生活習慣病との深い関係」の情報を基に作図

3.免疫力低下

生活習慣病の原因にもなりうるコルチゾールは、免疫力も低下させます。また、睡眠負債によって成長ホルモンが減少し、疲労回復が遅くなることも免疫力低下の原因になります。

4.うつ病

不眠とうつ病の関係性は、イメージしやすいかと思います。これは、睡眠不足によって脳内の神経伝達物質であるセロトニンが減少し、精神状態が不安定になるためです。睡眠負債でも同じようなことが起こると考えられます。

5.肌の老化

成長ホルモンの分泌が低下すると、肌のダメージを修復しきれなくなり、老化につながります。睡眠負債は、病気だけでなく美容にも大敵です。

これって本当? よい睡眠習慣の真実

ちまたには睡眠習慣に関するさまざまな噂が流れています。それははたして本当なのでしょうか。ひとつずつ見ていきましょう。

1.平日忙しくても、休日に寝だめをすれば問題ない

これは間違いです。寝だめをしても睡眠不足による悪影響は防げません。長時間の寝だめは睡眠リズムを崩すので夜になってもなかなか眠れず、結果的に睡眠不足になるという悪循環に陥ります。

2.適した睡眠時間は7~8時間である

適した睡眠時間は、その人によって異なり、年齢やホルモンバランスによっても変わります。なお、女性はホルモンバランスによって睡眠状態が変化します。生理前は眠くなりやすく、更年期は眠りが浅くなる傾向があります。そのため、「何時間寝るのがよい」と一律には言えないのです。

3.22時から2時までがゴールデンタイムである

美容や健康のために、22時から2時までに寝たほうがよいという話はよく耳にします。実はこれも間違いです。細胞の再生を促す成長ホルモンは、一定の時間に分泌されるのではありません。入眠直後の眠りが深くなったときに分泌されるため、22時から2時という時間は関係ないのです。

睡眠負債を解消したい! おすすめの睡眠習慣とは

睡眠負債はなかなか自覚できず、いつの間にか蓄積されてしまうからこそ毎日の睡眠習慣を整えることが大切です。そのためにできることを、4つにまとめてお話しします。

1.自分に合った睡眠時間を知る

適した睡眠時間は、その人によって異なります。そのため、自分にとってベストな睡眠時間を知ることから始めましょう。

上述の研究結果では、健康成人に1日あたり平均1時間の睡眠負債があることが分かりました。これを参考に、普段より1時間長く睡眠をとってみるのもひとつの方法です。その後の体調や気分の変化を比べ、調子がよいと感じるのであれば、1時間睡眠時間を長くしたほうがよいということになります。
普段の睡眠時間と寝だめした睡眠時間の差を測ってみるのもおすすめです。

2.適した睡眠を習慣化する

自分に合った睡眠時間が分かったら、それを習慣化していきましょう。
習慣化のコツは、最初に睡眠時間を決めることです。1日のスケジュールを睡眠時間中心に組み立ててみましょう。「何時までに寝るのか」「何時間寝るのか」を先に決めてしまうのです。そうすることで、よい睡眠が習慣化しやすくなります。
ベッドでのスマホや寝酒などにも注意が必要です。これらは睡眠の質を低下させ、よい睡眠習慣が身につかなくなります。

3.昼過ぎに15~20分程度の睡眠をとる

昼過ぎに眠くなるのは自然なことです。完全に横にならず、座ったままでもいいので短時間の睡眠をとりましょう。短時間であれば、夜の睡眠に与える影響を少なくできます。

4.どうしても足りないときは休日に睡眠時間を延長する

睡眠時間を確保することは大切ですが、残業や夜の外出が続くと寝不足になることもあります。このような場合は、休日の睡眠時間を延長し、しっかり休んでください。ただし、生活リズムを崩さないために、平日の睡眠時間との差は2時間以内にしましょう。

まとめ

睡眠負債は、睡眠不足とは違って自分では気づけません。しかし、睡眠負債が続けば心身の健康が保てなくなってしまいます。仕事や家事で日々忙しく過ごしている人は、1度睡眠習慣を見直してみましょう。

睡眠負債を解消するためには、毎日の睡眠習慣が大切です。どうしても睡眠がとれないときは日中や休日に補い、心身の健康維持につなげましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

【参照サイト】

*1 厚生労働省 「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要 25P」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf

*2 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター「プレスリリース『潜在的睡眠不足』の解消が内分泌機能の改善につながることを明らかに」
https://www.ncnp.go.jp/up/1477381449.pdf

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