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放置すると生活習慣病に発展する可能性も 歯周病には早めに対処しよう

kurashino

歯周病は、歯垢に含まれる細菌が原因で起こる細菌感染症です。歯垢が蓄積し、歯ぐきに炎症が起きると、歯と歯ぐきの間にできる溝(歯周ポケット)が深くなっていきます。
歯周ポケットに歯周病の原因となる細菌が入り込んで増殖すると、歯石ができたり、膿が出たり、歯を支える骨を溶かしたりします。症状がさらに悪化すると、歯が抜け落ちることもあります。

日本人の口腔内の健康状態は世界的にみると良好といわれていますが、それでも65歳以上になると、以下の図のとおり、2人にひとりは歯周ポケットを有しています。

厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット|歯・口腔の健康>歯周病>歯周疾患の有病状況」の情報を基に作図

歯周病は口腔内に限定した病気だと思われがちですが、近年、糖尿病など生活習慣病に影響を及ぼす重大な病気であることが分かってきています。そこで今回は、糖尿病を中心に、歯周病とそのほかの病気の関係について解説します。

歯周病と糖尿病の関係

糖尿病は、歯周病の発症リスクを高める危険因子のひとつです。
糖尿病になって血液中の糖分が多くなると、余分な糖分を尿として排出するために多くの水分が必要になります。しかし、からだの中の水分が多く使われると脱水状態となり、唾液の分泌量も減少します。唾液の量が減って口の中が乾燥すると、歯肉の炎症が起きやすくなります。

また、血糖値が高くなると、からだを守る白血球の機能が低下して歯周病菌など病原菌に対する抵抗力が低くなります。高血糖状態が続くと、歯のまわりの組織に悪影響を与えて歯周病が悪化しやすくなることも知られています。このほか、血管がもろくなって傷が治りにくくなるリスクが生じます。

このようなことから、糖尿病になると歯周病菌に感染しやすく、炎症も進みやすいため重症化するケースが多くなります。

一方で歯周病もまた、糖尿病に悪影響を与えます。歯周病菌により産生される有害物質が血液に入ると、インスリン(血糖値を下げる働きを持つホルモン)の働きが悪くなり、血糖コントロールが悪化する可能性が、日本糖尿病学会によって指摘されています(※1)。

このように、糖尿病と歯周病には、いったん罹患すると互いに悪化させあう悪循環が存在します。

他方、科学的根拠は十分ではありませんが、糖尿病を治療して血糖値を良好な状態に保つと、歯周病にともなう歯ぐきの炎症が改善する可能性を、日本糖尿病学会が示唆しています(※1)。また、歯周病を治療すると、インスリンの働きが改善したり、血糖値が低下したりするという報告も数多くされています(※1)。したがって、糖尿病がある場合は、歯ぐきのはれや出血、歯のぐらつきなど歯周病の自覚症状がなくても歯科を受診し、歯周病がある場合は積極的に治療することがすすめられます。

厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット|歯・口腔の健康>歯周病>歯周病と全身の状態 糖尿病と歯周病の双方向性歯周疾患の有病状況

歯周病と糖尿病以外の病気との関係

歯周病は、糖尿病だけではなく、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)や脳梗塞、誤嚥性肺炎、早産や低体重児の出産、骨粗しょう症などとも関係があるといわれています。

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

虚血性心疾患は、心臓に血液を送る血管が細くなったりふさがってしまったりすることで起きる病気です。ライフスタイルや生活習慣病などと深い関係のある病気ですが、歯周病菌の関与も指摘されています。

歯周病菌が血管内に入り込み、心臓を取り巻く血管(冠動脈)の細胞を刺激すると、炎症が起きます。すると、動脈硬化を悪化させる物質が産生され、プラークと呼ばれるコブのようなものが血管内に張り出してきます。プラークは、血管の内側をせまくするため、血流が悪くなります。プラークがはがれると血管内に詰まり、死に至ることもあります。

脳梗塞

脳梗塞は、何らかの原因で脳の血管が詰まる病気です。発症すると、からだが動かしにくくなるなどの後遺症が生じて介護が必要になることもあり、時には命を失うこともあります。
歯周病菌が血管内に入り込むと、脳の血管にプラークができて脳梗塞の原因になることがあります。また、心臓や頸動脈などにできたプラークがはがれて流され、脳の血管を詰まらせることもあります。
歯周病のある人は、歯周病のない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいといわれています(※2)。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食べ物や異物が誤って気管や肺に入って発症する肺炎です。
食べ物をうまく飲み込めない高齢者に多い病気ですが、口腔内に歯周病菌などの細菌が多いと発症リスクが高くなります。

早産や低体重児の出産

妊娠中の人が歯周病になると、早産や低体重児出産のリスクが高まります。これは、歯周病菌が血液の中に侵入し、胎盤を通って胎児に直接悪影響を与えることが一因といわれています(※3)。

骨粗しょう症

閉経後の女性に多い病気です。骨粗しょう症になると骨がもろくなり、軽く転倒しただけで骨折してしまうこともあります。
閉経後の女性で骨粗しょう症のある人は、歯を支える骨がもろくなっているだけではなく、歯周病が進行している傾向があります。一方で、歯周病を治療して歯のまわりの組織の炎症をおさえると、骨粗しょう症が未治療であっても骨密度の低下を抑制できることが報告されています(※2)。

歯周病は治療後のメンテナンスも大切

歯周病を治療することは、糖尿病をはじめとした多くの病気の進行を防ぐことにもつながります。健康診断で血糖値の異常などを指摘された場合にはできるだけ歯科も受診し、必要に応じて治療を受けるようにしましょう。

ただし、歯周病を治療して症状が改善しても、ブラッシングが不適切であったり、歯石がついていたりすると再発するおそれがあります。治療終了後も定期的に歯科を受診し、口腔内だけではなく全身の健康を維持するようにしましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 一般社団法人 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン 2019年>13.糖尿病と歯周病」
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-13.pdf

※2 特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会「国民の皆様へ>歯周病について>歯周病が全身に及ぼす影響」
https://www.jacp.net/perio/effect/

※3 全国健康保険協会 協会けんぽ 東京支部 協会けんぽ健康サポート「健康サポート>歯の健康>歯周病と骨粗しょう症は一緒に予防することが大切」
https://kenkousupport.kyoukaikenpo.or.jp/support/04/20110727.html

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