健康

いつまでも健康な歯で過ごすために 50代から始める歯周病予防

kurashino

歯周病がどのような病気かご存知ですか? 言葉自体は、テレビコマーシャルなどにもよく出てくるので、ほとんどの方が耳にしたことがあるでしょう。しかしながら、内容はよくわからないし、今更聞けない......と思っている方も多いのではないでしょうか。

実は、歯周病にかかっている日本人は、40代以上で約45%と半数近くにものぼっています。(※1) 日本人の平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.25歳(※2)。『人生100年時代』と呼ばれて久しく、今後寿命はますます延びると考えられています。

40代で歯周病にかかった場合、その後の人生をその状態のまま過ごさなければなりません。自分の歯でよく噛んで健康的な人生を過ごすためにも、歯周病リスクの高い年代のいまだからこそ、正しい知識と予防習慣を身につけることが大切です。

そこで今回は、毎日の生活のなかでできる予防と対策、歯周病にかかってしまったらどうなるのか、その治療法について歯科医師が解説します。

歯周病とは?

「歯周病」とは、歯と歯ぐきの間の溝が、4mm以上の深さになっている状態です。この4mm以上の深さになった歯ぐきの溝を「歯周ポケット」といいます。歯科医院に行ったことのある方は、歯ぐきを針のような器具でつんつんとされたことがあると思います。これは、歯周ポケットの有無を専用の細い器具を用いて検査している様子。歯周ポケットがあると、歯ぐきが健康ではない状態とみなされます。

歯周病にかかっている日本人は、40代以上で約45%、初期高齢者では約半数にものぼります。(※1)。また、歯が失われる原因の80%は歯周病もしくは虫歯によるものと言われています。(※3)

厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」の情報を基に作図

では、なぜ歯周病は起こるのでしょうか? 歯の病気で思い浮かぶものに、虫歯と歯周病がありますが、歯周病と虫歯はまったく別ものです。虫歯がない人でも歯周病は起こりえます。

歯につく白い汚れを「プラーク」といいますが、その正体は細菌の塊です。このプラークが歯みがきで清掃されず石灰化したものが「歯石」です。歯石になると、セルフケアでは取り除くことができず、歯科医院にある専用の器具で除去しなければなりません。
歯みがきでも取り除けるプラーク、簡単には取り除けない歯石の中の細菌が炎症することで引き起こされるのが歯周病です。

最初は、磨き残しで歯にプラークがついていると、歯ぐきが赤く腫れてときに出血する「歯肉炎」の状態になります。歯肉炎の状態が進行すると、歯ぐきや歯を支える骨に炎症が起こり、徐々に骨が溶けて歯周病になるのです。

歯周病を放置すると......

歯周病をそのまま放っておくと、口腔内のみならず、からだにもさまざまな症状を引き起こします。具体的に見ていきましょう。

歯茎が下がる

歯周病を放置すると、歯周ポケットができることによって歯ぐきの溝が深くなり、ますます深いところに歯石がつきやすくなります。炎症が進行していくと、歯を支える周囲の骨が次第に溶け、結果、歯ぐきが下がっていきます。
このときは、自分でも「歯ぐきが下がってきた」と実感できるほど。つまり炎症状態があるだけでなく、見た目にも影響が出てきてしまいます。

歯がグラグラする

歯周病が進行し、支える骨が失われていくと、歯が徐々にグラグラとしていきます。もっと進むと、骨や歯茎が歯を支えきれなくなり抜けてしまう、もしくは抜かざるを得ない状況になります。歯がグラグラしたり、抜けたりすると、噛み合わせが安定しないだけでなく、入れ歯や差し歯ブリッジなど、これからできるはずの歯科治療の選択肢も少なくなってしまいます。

口臭がする

歯周病も虫歯と同じで、細菌が原因です。歯周病菌には、口臭の原因にもなる物質を産生するものもあるので、歯周病独特の口臭の原因にもなってしまいます。少しショッキングかもしれませんが、便のような匂いとも表現されます。

歯周病は全身にも影響する

歯周病の細菌は、全身に影響を及ぼす恐れがあります。日本歯周病学会のウェブサイト(※4)には、「口の中に歯周病を引き起こしている細菌が多くなると、血液や呼吸器内に入り込み、心筋梗塞・動脈硬化症・肺炎・早産などを引き起こしやすくします」とあります。
また、歯周病は、糖尿病との相互関連があると言われており、歯周炎をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が明らかになってきています。(※5)

歯周病予防のための習慣と治療方法

先述のとおり、歯周病にならないためには、毎日のケアで歯石になる前の歯垢の段階でしっかりと汚れを落とすことが大切です。歯垢も3日もあれば自分では取り切れない歯石になってしまいます。
どんなに毎日磨いていても磨きかたが十分でないと磨き残しが生じてしまいます。
ここでは、今日からできる磨き残しをしにくくなる方法を3つお伝えします。

1.歯を磨く順番を決める

歯は上下左右に生えています。また、歯の形状は立体的なので、表・裏・側面(歯と歯の間)・上面の部分とすべての面を磨かなくてはなりません。たとえば、右上の表側から順番に磨いてその後裏側、それから下の歯を同様に、など自分で磨きやすい順番を決めて磨きましょう。

歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいので、デンタルフロスを使用してプラークを取り除くとよいでしょう。歯と歯の間の根本の部分は、隙間がある方は歯間ブラシを使用するとより効果的です。

2.歯ブラシは開いていないものを

歯みがきには、毛先を歯に90度にあてて小刻みに動かして磨く方法、毛先を45度に傾け、歯と歯ぐきの間に斜めに当てて磨く方法などがあります。

ここで、ご自身の歯ブラシをチェックしてみてください。毛先は開いていませんか? 一般的な歯ブラシは、概ね1カ月程度が使用期間の目安になります。

毛先が開きすぎていると、理想的な角度で歯ブラシをあてても毛先が当たらなくなってしまい、清掃の効率が悪くなります。また、歯ぐきが傷ついたり、下がったりする原因にもなってしまいます。
「歯ブラシの毛先がすぐ開いてしまう」という方は、歯を磨く力が強いことが考えられます。

3.歯みがきに十分な時間をとる

「毎日歯を磨いています」といいつつ、実は30秒くらいで終わってはいませんか? 自分では磨いていると思っていても意外と十分ではないことがあります。

全部の歯をしっかりと磨こうとすると、10分くらいかかります。そのため、朝と晩の2回歯をみがく方なら、せめて夜は歯みがきに10分くらい時間をとるなど工夫をして、自分なりに完璧に磨いてみましょう。
朝と夜であれば、夜のほうが唾液の量が減り、虫歯のリスクが高くなると言われています。時間が取れない方は夜を優先するとよいかもしれません。

以上3つのポイントを紹介しましたが、さらにセルフケアをよりよくする方法があります。それは、自分の歯みがきの弱点を知ることです。
ご自分が磨き残しをしやすいところは知っていますか? 歯科医院で歯みがき指導を受けることもできます。定期的にプロにチェックしてもらい、自分のテクニックも上達させていきましょう。

習慣という点で、付け加えておくとしたら「タバコを吸う習慣」についてです。
喫煙は歯周病のリスクを高め、また、治癒も遅くします。喫煙をされていて歯周病にかかっている方、歯周病が心配な方は、これを機に禁煙にチャレンジするのが望ましいでしょう。

歯周病の治療方法

歯周病は、自分で歯のケアができるようにならないと根本的には改善できません。そのため、「歯科医院でのプロのケア+自宅での毎日のセルフケア」がどちらも重要になります。

歯科医院では、レントゲンや歯周ポケット検査など必要な歯周病の検査を行い、炎症の原因となっている歯石の除去等、歯ブラシ指導をします。検査は治療の段階に応じ定期的に行い、治療の経過を評価しながら実施していきます。
具体的には、歯や歯の根についた歯石を専用の器具で除去します。目で見える場所の歯石はすぐにとれますが、歯ぐきの奥の歯の根元の歯石は侵襲もあるので、部位ごとにわけて実施し、場合によっては麻酔をすることもあります。必要があれば歯ぐきの手術をすることもあります。

治療期間は、歯みがき習慣の改善も必要になってきますので、1日通院して終わり、というわけにはいきません。状態にもよりますが、歯周病の治療は数カ月〜年単位を覚悟しておくとよいでしょう。
歯周病で腫れているときよりも、歯周病が改善した時のほうが実は歯ぐきは下がります。治療したのに前より悪くなったというわけではありません、歯ぐきが健全な状態になった結果です。なるべく歯周病になる前から予防しておく習慣が大切です。

歯周病の予防と治療・セルフケアとプロフェッショナルケア一覧表

予防

セルフケア

歯みがき・フロス・歯間ブラシ

歯周病へ影響する生活習慣等の改善(喫煙・歯ぎしり・口呼吸等)

歯科医院

定期検診・歯みがき指導を受ける

治療

セルフケア

歯みがき・フロス・歯間ブラシ

歯科医院

歯周検査・プラークコントロール(歯みがき指導等)

  • スケーリング(歯石除去)・ルートプレーニング
  • 咬合調整・抜歯・歯周外科治療(手術)
  • 咬合機能回復治療(補綴等)
  • メンテナンス 等

まとめ

歯周病の治療のゴールは、元の状態に戻すことではなく、「炎症の原因を取り除くこと」「毎日のセルフケアをしっかりすること」になります。虫歯になったことがないから、と歯科医院に行かない方もいるかもしれませんが、これまで述べてきたとおり、歯垢が歯石になるとセルフケアでは取り除けません。

歯周病予防の習慣には、しっかり歯みがきをする生活習慣と、歯科医院への定期通院の併用が重要です。歯科医院で歯みがき指導や歯周病のケアを受けると、セルフケアの質も相乗的に高くなると思われます。

この記事をお読みの方は、歯周病に対する意識が少し芽生えたのではないでしょうか。
50代を超えたいまだからこそ、歯周病予防の習慣を始めて、老後もしっかりと自分の歯で噛めるように毎日のケアを心がけていきましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

【参考】

※1 e-Stat 政府統計の総合窓口「厚生労働省 平成28年(2016年) 歯科疾患実態調査|表Ⅴ-6-2 1999年・2005年・2011年・2016年調査における旧CPI個人最大コード3~4およびXの割合の比較、年齢階級別(15歳以上・永久歯)」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450131&tstat=000001104615&cycle=0&result_page=1&tclass1val=0

※2 厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況|主な年齢の平均余命」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf

※3 厚生労働省「e-ヘルスネット  歯周病」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth-summaries/h-03

※4 日本歯周病学会「歯周病の原因」
http://www.perio.jp/qa/cause/

※5 厚生労働省「e-ヘルスネット  歯周病と全身の状態 糖尿病と歯周病の双方向性」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-012.html

HOT

-健康