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事例で紹介! 若年性アルツハイマーの問題と向き合い方

kurashino

アルツハイマーと聞くと、高齢者が発症するイメージですが、若い方にも起こる病気です。
症状は物忘れや徘徊など、生活に影響を及ぼすことも多いため、もし発症したらどうすればいいのか不安を感じる方も多いと思います。
そこで今回は、若年性アルツハイマーとはどのような病気なのか、若年性アルツハイマーの症状や治療法、・実際にあった若年性アルツハイマーの事例と、そこから読み解く問題と向き合い方についてまとめました。

事例をみると、症状や生活の変化が分かりやすいので、若年性アルツハイマーを自分のことのようにイメージできると思います。病気の特徴や生活を支える制度を知り、若年性アルツハイマーへの理解を深めましょう。

若年性アルツハイマーとはどんな病気?

65歳以下で発症する認知症のことを若年性認知症といいますが、若年性アルツハイマーはそのなかのひとつです。女性より男性に多く発症する傾向があり、推定発症年齢の平均は51.3±9.8歳というデータがあります。
若年性認知症は、年齢とともに有病率が上がります。以下の表を見ると、5歳刻みの年齢階層がひとつ上がるごとにほぼ倍増していることが分かります。

年齢

人口10万人当たりの有病率(人)

推定患者数
(万人)

総数

40~44歳

18.5

11.2

14.8

0.122

45~49歳

33.6

20.6

27.1

0.209

50~54歳

68.1

34.9

51.7

0.416

55~59歳

144.5

85.2

115.1

1.201

60~64歳

222.1

155.2

189.3

1.604

厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について」を基に作表

若年性認知症の原因疾患はさまざまですが、厚生労働省のデータ(平成21年)によるとアルツハイマーによるものが2番目に多い原因になっています。これはやや古いデータですが、より新しい研究においてもこの傾向は変わらないとされています。

厚生労働省「若年性認知症ハンドブック改定版」P15の図を基に作図

若年性アルツハイマーの症状とは?

アルツハイマーは、大脳にある神経細胞の働きが失われる神経変性疾患のひとつです。脳が萎縮することで、以下のようなさまざまな症状が現れます。

  • 記憶力の低下
  • 判断力の低下
  • 見当識障害:日付や時間、今自分のいる場所が分からなくなる。
  • 実行機能、遂行機能障害:物事を計画的に進められない。料理や仕事の手順が分からなくなる。
  • 言葉が出てこない
  • 性格の変化:無関心、怒りっぽくなる。
  • 症状が進行すると、歩行困難や発声・嚥下ができなくなる。

どの症状も、生活に影響をおよぼすものばかりです。しかし、うつや更年期障害など、他の病気と勘違いして診断が遅れることもあります。実際、家族が最初に気づいた若年性認知症の症状は、「もの忘れ」(50.0%)、「行動の変化」(28.0%)、「性格の変化」(12.0%)、「言語障害」(10.0%)だったというデータ(※)があります。
「同じことを何度も聞く」「探し物が増えた」など、普段とは違う様子から病気に気づくことが多いようです。

アルツハイマーは、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンを補う薬で治療します。薬を使うことで、症状の進行を遅らせることができます。しかし、いまだ病気そのものを治す薬はありません。アリセプトという薬の処方が一般的ですが、使用できる薬が増えています。内服薬のほかに、皮膚に貼って使う薬もあります。

厚生労働省「若年性認知症ハンドブック改定版」P43の表を基に作図

実際にあった若年性アルツハイマーの事例

ここで、筆者が看護師として実際にお会いした若年性アルツハイマーの患者さんの事例を紹介します。症状の進行にともなう生活の変化を知っていただければと思います。

Aさん:50代男性。家族構成は、妻と娘2人の4人です。
はじめに現れた症状は物忘れでした。その後、実行機能障害も現れ、病院を受診したところ若年性アルツハイマーと診断されました。
仕事がうまくできなくなったため、40代後半で早期退職しています。何度も徘徊して行方不明になり、警察に相談したこともあります。自宅で妻が介護していましたが、デイサービスを利用し始めました。

はじめのころは自分で身の回りのことができていましたが、症状が徐々に進行するにつれ、食事、トイレ、入浴の認識ができず、介助が必要になりました。トイレに行ってもズボンをおろすことが分からないことも。目の前に食事があっても食べずに立ってどこかへ行ってしまいます。会話が成立しなくなり、デイサービスに一緒に通う利用者さんに暴言をはくこともありました。一方で、仕事をしていた頃の記憶は残っており、話題にすることが多かったです。

家族、特に妻の精神的負担が大きかったように思います。デイサービスの連絡帳に「いつも迷惑をかけて申し訳ございません」と何度も書かれており、職員を気遣われていました。

事例から読み解く若年性アルツハイマーが生活に及ぼす影響

この事例から、若年性アルツハイマーを発症すると生活にどのような影響を及ぼすのかまとめました。

日常生活に支障が出る

Aさんは、食事やトイレなどの基本的な生活動作ができなくなりました。誰かに介助してもらわなければ、生活できません。

仕事を辞めなければならない

物忘れや実行機能障害により、40代後半で早期退職しています。症状が進行しても、仕事の記憶は残っていたことから、Aさんは仕事に一生懸命だったことがうかがえます。
このようなAさんが若くして仕事を辞めることは、生きがいの喪失につながります。
また、経済的にも不安定になります。自宅で家族が介護するとなると、家族も仕事を制限しなければならないため、収入が減ってしまいます。

徘徊による影響

Aさんは何度も徘徊をして行方不明になり、警察に捜索してもらったことがあります。徘徊は事故にあう危険性があり、油断できません。いつも本人の様子に気を配らなければならないので、家族は気が休まらず負担が増えます。

若年性アルツハイマーとうまく付き合うために

今回紹介した事例と問題点から、若年性アルツハイマーとうまく付き合うためにできることをピックアップしました。

早めに病院を受診する

若くてもアルツハイマーになる可能性があることを知り、おかしいと思ったら早めに受診しましょう。症状の進行を遅らせるためには、早めの治療が有効です。
もし別の病気と診断され、治療をしても効果がないと感じたら、若年性アルツハイマーを疑ってセカンドオピニオンを検討することをおすすめします。

今後について話し合う

早期発見ができ、本人と話し合える状態であれば、今後の生活や財産について話し合いましょう。成年後見制度を利用するのもひとつの方法です。成年後見制度とは、認知症や精神疾患などで判断能力が十分でない方を守る制度で、本人に代わって財産管理や契約をします。

日常生活の工夫

日常生活がスムーズに送れるように工夫すると、本人も混乱せず穏やかに過ごせます。たとえば、メモを書いて見やすい場所に貼る、整理整頓を心がけ、欲しいものがすぐ探せるようにするなどです。用事ごとに、必要なものをまとめておくという方法もあります。また、玄関に人感センサーを設置すれば徘徊予防に役立ちます。

経済的負担を軽減する

若年性認知症の発症後、収入が減ったと約7割の人が回答しています。(※)
医療費の自己負担額を軽減できる自立支援医療(精神通院医療)、傷病手当金など、さまざまな制度があります。
仕事への意欲がある場合は、精神障害者福祉手帳を取得し、障害者雇用で働けないか職場へ打診してみましょう。また、仕事の指導や生活支援が受けられる就労継続支援事業所で働く方法もあります。

介護保険サービスを利用する

認知症の場合、40歳以上であれば第2号被保険者となり利用できます。介護認定を受ける必要があるため、まずは市町村の窓口に相談しましょう。デイサービスやデイケアなど、通所サービスも利用できます。このようなサービスが利用できれば、家族の負担を軽減できます。
施設によって、その日のプログラムやレクリエーションはさまざまです。利用者に高齢者が多く、内容が高齢者向けだと若い人が馴染めない可能性があるので、1度見学することをおすすめします。

本人に対する家族の関わり方と精神的負担の軽減

若年性アルツハイマーは完治しないため、できないことが増えていくかもしれません。それでもなるべくできることに目を向けて、どのように工夫したらできるか考えましょう。本人に何か話すときやメモに書くときは、分かりやすく端的にすると効果的です。
症状が進行すると、本人も不安になります。家族が不満をぶつけたり責めたりすると、本人の気持ちを傷つけ、さらに不安になってしまいます。一緒に生活する家族は、精神的につらくなることもあるかもしれません。実際、家族介護者の約6割が、抑うつ状態にあると判断されたというデータがあります。(※)
ありのままの気持ちを吐き出す場所をもち、相談にのってもらうことが、介護を続けるために必要です。相談できる場所は、全国の都道府県に設置された若年性認知症支援コーディネーターや家族会などがあります。患者本人の気持ちを受け止めることも大切ですが、同時に自分の感情も否定せず認めてあげられると楽になれます。

まとめ

若年性アルツハイマーは、治療しながらずっと付き合っていく病気です。65歳以下でも起こりうることを知り、早期発見につなげて早めに治療を開始しましょう。
症状が進行すると、本人も家族も混乱し負担が増えます。無理なく生活できるようさまざまな制度を活用し、周りを頼りにしながら病気と向き合うことが大切です。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0319-2.html

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