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子どもがいない夫婦の相続はどうなる? 遺言書の書き方は?

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子どもがいない夫婦の割合は増加傾向にあります。
2015年実施の「出生動向基本調査」(※1)によると、結婚15~19年の夫婦のうち、子どものいない割合は6.2%となっています。1992年の調査では3.1%、2002年の調査では3.4%ですから、その割合は少しずつ増えていると言えるでしょう。

さて、子どもがいない夫婦の一方が亡くなった場合、その相続人は誰になるのでしょうか。
漠然と「夫または妻だけが相続人になる」と思っている人も少なくないかと思いますが、実はそうではありません。

この記事では、子どもがいない夫婦の相続人についての解説と、取りうる対策についてお伝えします。なお、夫婦の形や財産、収入状況は家庭によってさまざまですが、文章を簡潔なものとするため、夫が不動産をはじめとする財産を多く持っている前提で進めていきます。

子どもがいない夫婦の相続

子どもがいない夫婦の相続人は、夫なら妻、妻なら夫のみではありません。では、子どもがいない夫婦の相続人は誰なのでしょうか? その前に、まずはご自身にとって、相続人が誰になるのかを正しく知っておきましょう。

子どものいない夫婦のうち、夫が亡くなった場合の相続人は次のとおりです。

政府広報オンライン「約40年ぶりに変わる"相続法"! 相続の何が、どう変わる?」より転載

夫の親が存命の場合

まず、夫の親が存命なのであれば、妻とともに夫の親が相続人となります。両親とも存命なのであれば、妻と、夫の両親が相続人になりますし、夫の母親のみが存命なのであれば、妻と、夫の母親が相続人になるということです。なお、めったにないケースですが、夫の両親は他界していても、夫の祖母が存命であれば、妻とともに、夫の祖母が相続人になります。

夫の親や祖父母がすべて他界している場合

夫の親や祖父母といった直系尊属が全員他界している場合は、夫のきょうだいが、妻とともに相続人となります。また、きょうだいのなかに既に亡くなっている人がいる場合は、その亡くなったきょうだいの子である夫の甥姪が代襲し、妻とともに相続人となります。

夫の親や祖父母がすべて他界し、きょうだいや甥姪もいない場合

夫の親や祖父母といった直系尊属がすべて他界しており、かつ、夫のきょうだいや甥姪もいないときは妻のみが相続人となります。

 

以上から、妻のみが相続人となるケースは、かなりまれであることがお分かりいただけることでしょう。
このなかでもっとも多いパターンは、妻と、夫のきょうだいや甥姪が相続人となるケースです。こうした親族関係のある状況で、何も対策をしないまま夫が亡くなると、どうなるのでしょう。

妻とともにきょうだいや甥姪も相続人になるということは、夫の死後、いくら妻であっても勝手に夫の預貯金を解約したり、一緒に住んでいた夫名義の自宅を自分名義に代えたりはできないということです。

預貯金の解約や自宅不動産の名義変更をするためには、夫のきょうだい等と遺産分割協議をしなければなりません。遺産分割協議とは、相続財産を誰がどのように相続するのかについての話し合うことで、多数決などではなく、原則として全員の同意が必要です。また、きょうだい等からは、法定相続分である4分の1の財産の相続できるよう主張される可能性もあるでしょう。

遺産分割協議がスムーズにまとまれば、その協議の結果を記した遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書を使い、預貯金を解約や不動産の名義変更の手続きをするわけです。

一方、この遺産分割協議が成立しなければ、相続手続きを進めることはできません。当人同士で協議がまとめられないのであれば、家庭裁判所での調停を行ったり、最終的に裁判所に結論を出してもらう審判へと移行したりすることになります。そうなれば、弁護士費用などがかさむのみではなく、時間や心理的な負担も少なからずかかることになるでしょう。

子どもがいない夫婦の相続には、お互いのきょうだいや甥姪が関わってくることを、まずは知っておきましょう。

子どものいない夫婦と生前贈与

このように、子どもがいない夫婦は何らかの対策をしなければ、相続時にお互いのきょうだいと話し合いをする必要があります。話し合いがまとまらなければ、相続争いとなってしまいます。
これを避けるために、何か方法はあるのでしょうか。取りうる対策としては、主に「生前贈与」と「遺言書」の2つが考えられます。まずは、生前贈与についてみていきましょう。

生前贈与のメリット

生前贈与とは、生前に財産を贈与すること全般を指します。生前贈与をすることにより、自分の目の黒いうちに財産を渡しておける点が、非常に大きなメリットと言えるでしょう。
たとえば、妻が安心して自宅に住み続けられるよう自宅の不動産を生前贈与しておくことが考えられます。

生前贈与に使える特例

相続で財産を渡す際には「相続税」がかかりますが、生前贈与の際には原則として「贈与税」がかかります。ただし、贈与税は基礎控除額が低いことから、相続税よりも税額が高くなる傾向にあります。生前贈与をする際は、この点によく注意をすることが必要です。せっかく贈与をした財産の大半が税金で取られてしまっては、元も子もありません。

大きな財産を生前贈与する際に検討したいのが、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」(※2)の活用です。この特例を使えば、居住用不動産等を2,000万円まで非課税で贈与することが可能です。ただし、この特例を使うには婚姻期間が20年以上であることや、対象が居住用不動産等に限定されている等の要件があります。仮に要件を満たしていない場合には多額の税金がかかってしまいますので、実際に贈与をする前に税理士等へ相談されると良いでしょう。
このような特例を使うことで、税金の心配をすることなく生前贈与をすることが可能です。

生前贈与の注意点

ここまで生前贈与のメリットや税制面の優遇について解説してきたものの、安易な生前贈与はおすすめできません。なぜなら、夫婦のうちどちらが先に亡くなるのかは、誰にも分からないためです。自分の死後の妻の生活を守りたい一心で自宅不動産を生前贈与したものの、思いがけず妻が先に亡くなってしまう可能性もゼロではありません。
このように、自宅不動産を生前に受け取った妻が先に亡くなってしまうと、夫がその不動産を自分に名義に変えるには、やはり妻側のきょうだいなどとの協議が必要となってしまいます。

「もともと自分が買って、自分が妻に贈与したものなのに......」と感じるかもしれませんが、自動的に自分の名義に戻すことはできません。生前贈与をする際には、この点を十分注意する必要があります。
仮に妻が先に亡くなった場合には自宅不動産を自分が相続できるよう、妻に遺言書を作っておいてもらうなどの対策をしておくと良いでしょう。

子どものいない夫婦と遺言書

子どものいない夫婦の相続対策として、もうひとつ考えられるのが遺言書の作成です。
遺言書と聞くと、高齢の人が作るものというイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、子どもがおらず、かつ夫婦一方の名義の家で暮らしているような世帯の場合には、万が一に備え、できるだけ早い段階から遺言書を作成しておくと安心です。

遺言書があるとどうなるのか

遺言書をきちんと作成しておく一番のメリットは、相続が起きた後、遺産分割協議が不要となる点にあります。たとえば、夫が「妻に全財産を相続させる」という内容の遺言書を作成した場合、妻はその遺言書にしたがい、自分ひとりで不動産の名義を自分に変えたり、預貯金の解約をしたりすることが可能です。夫のきょうだい等と話し合ったり、同意を得たりする必要はありません。これにより、話し合いがなかなかまとまらず、相続手続きが進まないといった事態を避けることができるでしょう。
財産が自宅不動産しかない場合に法定相続分を主張されると、本当に大変です。相続分のお金を用意するのに苦慮するなど、相続手続きが進まなくなる恐れがあるので、上手に活用したいところです。

ただし、遺言書はその要件が民法で細かく定められています。公証役場で作成をする公正証書遺言であればより確実ですので、まずは利用を検討してみましょう。自分で書く「自筆証書遺言」で作成する場合には無効にならないよう、要件を確認しながら慎重に作成しましょう。

子どものいない夫婦の遺言と遺留分

要件に沿って作成をした遺言書があれば、相続が起きた際には原則、その遺言書のとおりに財産を相続することができます。ただし、これには例外があります。それは、遺留分を侵害した場合です。

遺留分とは、一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分と考えてください。遺留分を侵害した内容の遺言書も作成自体はできますが、いざ相続が起きた後にもめることがあります。遺留分のある相続人から財産を多くもらった人に対して、「遺留分侵害額請求」がなされるおそれがあります。

遺留分侵害額請求とは、「自分の遺留分を侵害しているので、その分を金銭で返還してください」という請求のことです。この請求をされたら、遺留分侵害額相当分を金銭で支払わなければなりません。ただし、この遺留分はきょうだいや甥姪にはありません。つまり、妻ときょうだいや甥姪が相続人となる場合には、「妻に全財産を相続させる」という内容の遺言書を作成しておけば、その遺言書のとおりに実現できるということです。

こうしたこともあり、子どもがいない夫婦の相続対策をして、遺言書はとても役に立つツールであると言えるでしょう。

子どものいない夫婦は、早めの相続対策を

子どものいない夫婦の相続人は、お互い以外に親族が絡んできます。
ですので、仮に何も対策をしないまま相続が起きてしまうと、とても困った事態になってしまうことが考えられます。しかし、早いうちからきちんと対策をしておけば、問題を未然に防ぐことができます。
子どもがいない場合には、早いうちから遺言書の作成など、相続対策について検討しておくことをおすすめします。

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