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自宅で親の入浴介助をしたい! 気を付けたいポイントと利用可能な制度は

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親の介護で悩むことのひとつに、入浴介助があります。入浴介助は手間が多く重労働なので、家族の負担は大きくなります。さらにはヒートショックや転倒などのリスクもあり、注意が必要です。

今回は、親を入浴介助するときに気を付けたいポイントや手順について解説します。介助が難しくなったときに利用したい公的・民間の介護保険サービスも一覧にしました。安全な入浴介助の方法を、ぜひ一緒に考えていきましょう。

メリットが多い入浴。しかし、高齢者の入浴介助は重労働!

まず、入浴にはどんな目的やメリットがあるのでしょうか。毎日の生活であまり意識することはないものの、改めて考えてみるとさまざまな効果があります。

1.からだの清潔を保つ

清潔を保つ方法として清拭(せいしき)もありますが、入浴のほうがより皮膚の汚れは落ちやすくなります。

2.血行が促進される

温かい湯船につかることで血管が拡張し、血液の流れがよくなります。

3.全身の皮膚状態が観察できる

衣服で覆われている部分の皮膚は、脱いだタイミングでないとなかなか見る機会がありません。特に高齢者の場合、乾燥や褥瘡(じょくそう)などの皮膚トラブルが起きやすいので、入浴のたびに確認できれば早期発見につながります。

4.リラックスできる

湯船につかると、浮力によって体重が軽くなり、筋肉や関節を休ませることができます。さらに、適切な温度で入浴すると、副交感神経が優位になりリラックス効果が高まります。

なお、千葉大学大学院が2018年に発表した資料では、週に7回以上入浴する高齢者では、週0-2回と比較して要介護認定リスクが約3割減少することが明らかになった、としています。

八木 明男(千葉大学大学院)お風呂の習慣(浴槽入浴)で要介護認定が3割減. JAGES Press Release NO: 157-18-20からの転載

さらには、入浴が要介護リスクを低下させる理由として、千葉大学大学院 八木明男先生は次の要因を可能性として挙げています。

  • 入浴をともなう一連の動作と温熱刺激が、運動と同様のトレーニング効果を発揮する
  • 入浴によるリラックス効果が、抑うつや認知機能低下を予防する
  • 体温上昇によるヒートショックプロテインの産生が、抗炎症作用や細胞保護効果をもたらしている
    ※ヒートショックプロテイン:損傷が起きた細胞の修復を促すタンパク質

このように、入浴にはさまざまなメリットがあります。しかしながら入浴介助は重労働です。入浴するには、衣服の着脱、浴室への移動、浴槽への移乗、からだを洗う......と、多くの手順が必要であるからにほかなりません。また、浴室は高温多湿のため、慣れている介助者でも体力を使います。これもまた、入浴介助を重労働とするゆえんです。

高齢者の入浴に潜むリスクとは

高齢者の入浴ならではの、気を付けなければならないポイントもあります。介護者は、安全に入浴できるよう、さまざまな配慮を行う必要があります。

1.ヒートショック

ヒートショックとは、急な温度変化で血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を発症することです。これらの病気によって最悪の場合、死に至ることもあります。

平成30年に消費者庁が公表した資料によると、高齢者の事故のうち「不慮の溺死」「溺水」による死亡者数は増加傾向にある、「家」や「居住施設」の「浴槽」における事故が約7割を占めています。

消費者庁 「ニュースリリース 冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!-11 月 26 日は「いい風呂」の日-みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故 ②|図1.高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数の年次推移」からの転載

さらに、高齢者の「おぼれる」事故は11月から3月にかけての冬季に多く、年間の事故数全体の約7割にのぼります。要因のひとつとして、寒暖差によるヒートショックが考えられます。

消費者庁 「ニュースリリース 冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!-11 月 26 日は「いい風呂」の日-みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故 ②|p4 図7.男女・発生月別に見た高齢者の「おぼれる」事故による人口 10 万人当たりの救急搬送者数(平成 28 年)」からの転載

2.転倒

加齢によって、足の筋力は衰えやすくなります。さらに、浴室の床は滑りやすく転倒のリスクが高まります。もしも転倒して骨折をすれば、寝たきりになるリスクも大きく、注意を要します。

3.脱水

高齢者は、成人に比べてからだの水分量が少ないため、入浴で発汗が促されると脱水を引き起こすことがあります。

自宅で安全に入浴するために 高齢者の入浴介助の手順とポイント

高齢者の入浴にはリスクがあるものの、健康的に暮らすためには入浴が欠かせません。自宅で安全に入浴するために気を付けたいポイントを、手順に沿って解説します。

1.入浴前の準備

ヒートショックを防ぐために、脱衣所と浴室を温めておきましょう。浴室暖房や小型のヒーターの利用も効果的です。浴槽のふたを取ることで、浴室内を湯気で温める方法もあります。このとき、シャワーチェアや滑り止めマットなど、入浴補助用具も用意しておきましょう。
入浴者の体調に変わりがないかも確認しましょう。高齢者は、発熱や血圧の異常があっても自覚症状のないことがあります。できるだけ、入浴前に測っておくと安心です。そして、水分補給もしておきましょう。入浴後だけでなく、入浴前にも行うことで脱水をより確実に予防できます。このほか、着替えや軟膏など、入浴後に必要なものを準備します。

2.入浴中の介助

入浴中は、体調の変化を注意深く観察しましょう。安全に入浴するために、お湯の温度は41度以下、お湯につかる時間は10分までが目安です。

3.入浴後のケア

医師から処方されている軟膏があれば塗りましょう。高齢者は皮膚が乾燥しやすいので、保湿剤を塗るのもおすすめです。また、入浴後は、爪が柔らかく切りやすいので、伸びているようなら切っておきましょう。脱水予防のための水分補給も忘れず行いましょう。

入浴介助に役立つグッズはどう選ぶ?

安全に入浴するために使用するグッズを「入浴補助用具」といい、主に次のようなものがあります。

シャワーチェア

座りながらシャワーを浴びたり、からだを洗ったりできます。座面の高さが調整できるものや、使用しないときには折りたためるものもあります。

滑り止めマット

浴室や浴槽内に敷いて、転倒を防止します。

手すり

浴槽のふちに設置し、安全に浴槽をまたげるようにします。

浴槽台

高さの低い踏み台のようなもので、浴槽の中に設置します。段差を少なくできるので、楽に浴槽をまたいだり、腰を掛けて半身浴ができたりします。

 

ここで紹介した入浴補助用具以外にも、たくさんの種類があります。どのように選んだらよいのか迷う場合は、ケアマネジャーや福祉用具の担当者に相談しましょう。被介護者の状態を見ながら、適切な入浴補助用具を選んでもらえます。

介護認定を受けていると、入浴補助用具にかかる料金が補助されます。以下にポイントをまとめました。

  • 入浴補助用具はレンタルではなく購入になります。これは、他人が使用したものを使うのは衛生面で難しいためです。
  • 介護保険を利用すると、自己負担1割(その人の所得によっては2割や3割)で購入できます。介護保険を利用せず、全額自費での購入も可能です。
  • 支給限度額は、4月から翌年3月までの1年間で10万円。金額はどの介護度でも同じです。超えた分は自費になります。

家族の入浴介助が難しいときは介護保険サービスを利用しましょう

ここまで、家族が入浴介助をすることを前提に説明してきました。しかし、入浴介助は家族にとって負担が大きいものです。いまよりも親の状態が悪化すれば、入浴介助を続けられなくなることも考えられます。そのような場合は無理せず、介護保険サービスの利用を検討しましょう。
入浴介助が受けられる介護保険サービスには、以下のようなものがあります。

①訪問介護や訪問看護

自宅の浴槽を利用して、入浴介助を行います。訪問看護であれば、医療的ケアが必要な人も安心です。

②通所介護(デイサービス)

身体機能の維持や他者との交流などを目的に、日帰りで施設に通うサービスです。通所介護で入浴できれば、自宅で入浴する手間が省けます。

③訪問入浴介護

横になったまま入浴できる浴槽を自宅に運び、入浴介助を行います。寝たきりの方や重度の障害がある方などでも入浴可能です。

まとめ

私たちの生活にとって欠かせない入浴ですが、高齢者の入浴にはさまざまなリスクがあります。それを踏まえたうえで不測の事態が起こることを防げるよう事前に準備をすることが大切です。

また、必ずしも家族が介助する必要はありません。負担が大きいと感じたら、無理せず介護保険サービスを利用しましょう。

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