夫婦・家族 親のこと

家で看取る? それともホスピス? 家族を見送る時に考える終末期医療

kurashino

ホスピスと聞くと、どのような印象を持つでしょうか。「がんの痛みで苦しんでいる、末期がん患者の最後を看取る場所」というイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。

1981年以降、がんは日本人の死因の第1位であり続けています。ただ、がんに限らず、病気の最終局面では、必ず「看取る」という場面がやってきます。誰もが苦しまず安らかな最後を迎えたいと願っているとは思いますが、見送る側としては、どのような「看取り方」の準備をしておけば良いのでしょう。

ホスピスで行う終末期ケアを「ホスピスケア」とも言いますが、この言葉はがん末期患者を強く連想してしまうことが多いようです。そのため最近では、さまざまな病気の終末期ケアを「緩和ケア」と呼ぶことが多くなっています。

公益財団法人日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団のウェブサイトでは、世界保健機関(WHO)の定義として、緩和ケアを以下のように解説しています。

「生命を脅かす疾患による問題に直面する患者と其の家族に対して、痛みや其の他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメント対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである。」

ホスピス・緩和ケアとはなんですか | ホスピス財団

緩和ケア(ホスピスケア)を行う場所として、大きな病院に入院するほうがよいのか、それとも家で看取ってあげたほうが良いのか、ホスピスという選択肢もあるし――と、なかなかイメージが持てないと思います。

本コラムでは、「看取る」ことに家族としてどう対応していくか、ホスピスや在宅ホスピスの制度、現在の日本の医療制度を交えて解説します。

巡礼者の宿泊所や救護所であったホスピス

そもそもホスピスとは何なのでしょうか。その起源には諸説ありますが、中世ヨーロッパ時代に旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会が、その始まりとされています。その後、旅人が病や不調で旅立てない場合にそのままケアや看病を行うようになったことから、看護を行う収容施設をホスピスと呼ぶようになりました。

20世紀に入りヨーロッパでは、治療方法のないさまざまな病気の終末期患者の安息をもたらす施設として、現在のような形でのホスピスがもたらされるようになりました。宿泊所であったホスピスが、終末期患者のケア全体を行う場所へと変化していったのです。

ホスピスケア(緩和ケア)は痛みだけを対象にしない

日本のホスピスは「がん末期の方が入る場所」を主たる目的として広がってきました。1973年に大阪市の淀川キリスト教病院にがん末期患者のケアを行う専門チームが創設されたのが日本で初めてのホスピスケアです。
その後、1990年にホスピス・緩和ケアが日本の医療制度に組み込まれ、診療報酬が支払われることでホスピス・緩和ケア病棟が増加しました。しかし、医療現場におけるホスピス・緩和ケアを普及させる試みは、期待したほど全国には広がりませんでした。

従来、一部を除き、がん治療は主に外科医が担っていました。そのせいなのか、「緩和ケアは、『逃げ』の治療である」と考える外科医が多かったことが、その理由の1つとして考えられています。多くの医師が緩和ケアという領域に慣れていなかったこともまた影響しています。しかし、冒頭のとおり、世界保健機関が緩和ケアを「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対するケア」であるとし、がんに限らず、さまざまな病気に早期から緩和ケアが提供されるべき、という立場を明確にしました。以降、現在にいたるまで、がん以外にも重度の心不全、呼吸不全、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、治療法がない、または確立されていない病気でもホスピスケア(緩和ケア)が提供されています。

緩和ケア病棟と在宅ホスピス(在宅医療)

ホスピスケア(緩和ケア)は、外来通院をはじめ、緩和ケア病棟や在宅ホスピス(在宅医療)など、さまざまな場所で受けられます。何らかの理由で通院が難しい場合は、入院または在宅医療が選択されます。

ホスピスケアを受けられる入院施設は、2020年4月1日現在、全国に402施設(※1)ある、がん診療拠点病院、2019年2月現在、全国に399施設(※2)ある緩和ケア病棟になります。

がん診療拠点病院には、専門の緩和ケアチームが常駐しています。ただし、必ずしもすべての拠点病院が緩和ケア病棟を併設しているわけではありません。緩和ケア病棟への入院を考える際には、まずは通院先への確認が必要です。一方、在宅ホスピスの場合は、自宅で生活をしながら病院へ通院したり、訪問診療や訪問看護に来てもらってケアを受けたりすることができます。
緩和ケアを受ける方にとって自宅は、最も安らぎを得られ、自分の意思を最大限実現しながら生活できる場所です。したがって、最後の日々を自分の家で過ごしたいと願う患者や家族の希望を最大限尊重できる方法といえるでしょう。

病院は看取りに適しているのか?

通院が難しくなった、食事がとれないなど、さまざまな理由で入院することも出てきます。たとえば、がん診療拠点病院に入院したとしましょう。

病院では基本的に、急性期治療を終えた方の長期入院は認めてもらえません。現在の医療制度では、急性期病院に入院する人の平均入院期間が長期化すると、診療報酬が引き下げられてしまうからです。そのため、いくら患者や家族が希望したとしても、転院か自宅退院(在宅ホスピス)を勧められます。

また、一般病棟の看護師配置は急性期病院であれば7対1(患者7人に対し、看護師1人)という割合が決められています。そのため、手術後の人が多く入院している場合は、ホスピスケア(緩和ケア)に割ける時間はかなり限られてしまい、悪い言い方をすれば、後回しになる可能性もあります。そのため、足腰が弱っていて歩行に問題があるようなら、歩かないように言われ、もしも指示を守れないことが続けば、「抑制」という処置がとられ、自身での行動すら制限されることもあります。

在宅ホスピスに重要な訪問診療医の選び方

在宅ホスピスでは自宅に往診医が来てもらえるため、ケアにかける時間などは個々の事情により調整できます。最近では24時間対応してもらえる往診医も増えてきており、わざわざ病院へ行かずとも、適切なケアを適宜受けることができます。病院のように退院を迫られることも、もちろんありません。

多くの訪問診療医は、もともと大学病院やがん診療拠点病院などで、がんに携わる勤務医として働いていた医師です。あるいは最初から訪問診療医を目指し、修練を積んだ内科医がクリニックを開設して在宅医療を担っています。そのため、専門性に応じた特色を持っていることが多い、と期待できるでしょう。

たとえば、長年がん診療に携わった経験のある訪問診療医であれば、がんの緩和ケアに長けていたりします。特に緩和ケアに用いる医療用麻薬に関しては、使用経験の差が効果に直結します。そのため、もしもがんに対する緩和ケアの在宅医療を導入するのであれば、がん診療の経験があって、医療用麻薬の使用経験が豊富な在宅診療医を選ばれることをお薦めします。

まずは、ソーシャルワーカーに相談しましょう

在宅で緩和ケアを行い、家族を看取るためには、いろいろな準備が必要となります。まず、いま通院している病院のソーシャルワーカーに、在宅医療に関する相談をしましょう。ソーシャルワーカーはさまざまな医療制度の紹介、市区町村の担当者やケアマネジャーとの調整などを行う医療職です。もちろん、在宅診療医の紹介もしてくれます。
医療制度のなかには、家族が申請をしなければならないものも多数ありますが、全てソーシャルワーカーが相談に乗ってくれますので、遠慮せずに申し出ましょう。

加えて、介護保険の申請を行いましょう。介護保険では介護ベッドの購入費やレンタル費、バリアフリー化のための改築資金などの補助が出ます。ただし、介護保険の申請には「主治医意見書」が必ず必要になるため、忘れず書いてもらいましょう。

在宅ホスピス(緩和ケア)のメリット・デメリット

在宅ホスピスを導入するにあたってのメリットは、何といっても暮らし慣れた自宅で生活できることにあります。その一方、さまざまな医療行為を家族が行わなければならず、大きな負担となる場合もあります。
24時間体制の訪問診療を行うクリニックもありますが、病状が急に変化したときなどは、看ている家族には大きな負荷がかかってしまいます。
こうした想定されるいろいろな点を踏まえ、訪問診療医の体制をしっかり確認することをお薦めします。

看取られる方を主人公に

ホスピス、在宅ホスピスの役割は、看取られる方が安らかに天寿を全うされる手助けをすることです。家族が家で看取られたいと願う場合は、その願いを叶えることが大切です。
その一方で、自宅の環境や介護する家族の状況にも大きく左右されます。あらかじめ、いろいろな専門家と相談し、準備することが重要です。

このコラムが、皆さんにとって終末医療に必要な知識を得られ、事前の準備と心構えをもつ手助けになれば、幸いです。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 厚生労働省「がん診療拠点病院等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html

※2 国立がん研究センター「がん情報サービス|病院を探す 緩和ケア病棟のある病院を探す」
https://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/xpPalliativeSearchTop.xsp

HOT

-夫婦・家族, 親のこと
-,