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自宅介護の強い味方「訪問看護」ってどんな制度? サービス内容と利用方法について

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近年、医療政策によって入院期間が短縮し、健康に不安を抱えたまま自宅へ退院する高齢者が少なくありません。
高齢者世帯が増えるなか、子世代も仕事や家庭を持っているような状況で、「親のことも心配だけれど、介護する自信がない」「自分の生活で精いっぱいなのに、介護まで引き受けたら共倒れするのでは......」と悩む方は多いのではないでしょうか。

今回は、高齢の親と家族が安心して療養生活を送るためのヒントとして、「訪問看護」の利用方法・サービス内容について紹介します。

在宅療養の強い味方!「訪問看護」はどんなサービス?

「訪問看護」という言葉を聞いたことはあっても、それがどのようなサービスで、どうすれば利用できるのかは、あまり知られていません。

訪問看護は病気や障害のある方、介護が必要な方など、医師が必要と認めれば誰でも利用できるサービスです。療養者のご自宅に伺って、その方の状態に応じて必要な医療処置・看護ケアを提供します。

公益財団法人日本訪問看護財団のウェブサイトには、以下のように紹介されています。

看護師がお宅に訪問して、その方の病気や障がいに応じた看護を行うことです。健康状態の悪化防止や、回復に向けてお手伝いします。主治医の指示を受け、病院と同じような医療処置も行います。

訪問看護とは(一般の方むけ) Q1 訪問看護は、どんなサービスですか?(公益財団法人 日本訪問看護財団)

従来、治療や看護を提供するのは医療機関や介護施設が中心でした。しかし、訪問看護をはじめとする在宅サービスが整った現在では、住み慣れた家に療養の場を移し、日々の生活を営みながら必要な医療・看護を受けることができます。

では、実際に訪問看護を受けられるのはどのような人でしょうか? 訪問看護の対象となるのは「病気や障害を抱える人」「介護が必要な人」ですが、障害の程度や介護度はさまざまです。
普段の生活は自立していて、一見健康そうに見える方が「介護予防」「薬の管理」などを目的に訪問看護を受けるケースもあります。

参考として、糖尿病で入院し、退院後もインスリンの自己注射が必要になった方を想定してみましょう。

「間違えずに注射できるか心配」という本人や家族の不安に対して、自己注射の見守りやアドバイスを行うのも訪問看護の役割のひとつです。そのほか、「リハビリをしてほしい」「薬をしっかり飲めているか確認してほしい」など、療養者の生活・健康面で気になることがあれば、訪問看護を導入する理由となります。

現在、日本は深刻な少子高齢社会です。内閣府によると、高齢者の数は年々増え続けており、65歳以上の方がいる世帯は全世帯の約半数に上ります。なかでも、高齢者の「単独世帯」「夫婦のみの世帯」が過半数を占め、老後の生活や健康に不安を抱える方は多いと考えられます。

内閣府「令和元年版高齢社会白書(全体版)|第1章 高齢化の状況(第1節3)3 家族と世帯」を基に作図

また、高齢の親が要介護状態で、子は共働きというケースも少なくありません。厚生労働省によると、共働き世帯は、3世帯に1世帯以上(※1)となっています。

このような社会構造のなかで、高齢の親を看ていくのは簡単なことではないでしょう。親の介護を理由に仕事を辞めたり、体調不良になったりという話は決して他人事ではありません。そうなる前に、ぜひ医療機関や市区町村窓口に相談しましょう。主治医が「訪問看護が必要」と認めた方であれば、誰でも訪問看護を受けられます。

なお、医療・看護を受けるのは療養者本人ですが、同時に「一緒に暮らす家族」「(別居であっても)療養者を支える家族」のケアも行うのが訪問看護の大きな特徴です。
「家族が介護に疲れている」「不安が強い」「家族も病気を抱えていて十分な介護ができない」など、介護者の問題が起点となって訪問看護の利用を始めるケースもあります。

訪問看護ではどんなサービスが受けられる?

団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年に向けた政策のひとつとして、数年前から「地域包括ケアシステム」という概念が提唱されています。これは、「病気や障害を抱えた高齢者が、最期まで住み慣れた場所で自分らしく生活できるように、地域における医療・介護体制を整えていく」ことがねらいです。また、限られた医療資源を確保するために「病院から在宅へ」という流れが進んでおり、従来のように軽症で入院したり、本人・家族の都合で退院時期を延長したりということが難しくなっています。

このような流れを受けて、訪問看護を提供する事業所(訪問看護ステーション)の数は、2010年以降右肩上りで増えており、より身近な存在としてサービスを提供できるようになりました。

一般社団法人 全国訪問看護事業協会「令和元年訪問看護ステーション数調査結果」の情報を基に作図

訪問看護の主なサービス内容には、次のようなものがあります。

医療的処置

  • 健康状態の確認(体温・脈拍・血圧・呼吸状態など全身の観察)
  • 観察に基づいた異常の早期発見、病状悪化の予防
  • 点滴・注射
  • 傷の処置
  • 医療チューブの管理・交換
  • 人工呼吸器の管理
  • 痰の吸引
  • 痛みのケア(痛み止め・麻薬の管理など)
  • 終末期ケア
  • 緊急時の対応

看護ケア

  • 清潔を保つ援助(入浴・洗髪・体拭き・着替え・口腔ケアなど)
  • リハビリ
  • 食事指導
  • 服薬や自己注射の確認・指導
  • 療養生活の相談・アドバイス
  • 家族の介護相談・健康相談
  • 精神的ケア
  • 福祉用具の提案
  • 主治医やケアマネジャーとの連携

このほかにも主治医の指示や療養者の状態に応じて必要な医療処置・看護ケアを提供します。

高齢の親がひとり暮らしをしている方、これから介護を始める方の多くは、「本当に自宅での療養生活が可能なのか?」と不安を感じていることでしょう。しかし、訪問看護をはじめとする在宅サービスを上手く利用して体制を整えれば、病状の変化が激しい急性期を除いて、ほとんどの方は自宅療養が可能です。
療養生活を続けていくなかで、病気の悪化・再発によって入院治療が必要になることもありますが、なるべくそうならないようにサポートするのが訪問看護の役割なのです。

訪問看護を利用するためにはどうすればいい?

画像1利用規約

訪問看護を利用したい方は、主治医やケアマネジャー、訪問看護ステーションなどに相談をしましょう。

主治医に相談する

訪問看護は「医療保険」もしくは「介護保険」が適用されます。いずれの場合も、主治医による訪問看護指示書が必要です。主治医に訪問看護を利用したい旨を伝えるか、病院の介護相談窓口で希望を伝えるとよいでしょう。

ケアマネジャーに相談する

すでに他の介護サービスを利用している方は、担当ケアマネジャーに訪問看護の希望を伝え、利用のための手続きを進めてもらいましょう。

地域包括支援センターに相談する

これまで介護保険サービスを利用したことがなく、担当ケアマネジャーがいない方は、居住地の地域包括支援センターに相談しましょう。介護保険の申請や訪問看護利用までの手続きについて説明を受けることができます。

訪問看護ステーションに相談する

どのような理由で訪問看護を利用したいのか、主治医や担当ケアマネジャーの勤務先や名前、被介護者の居住地などを伝えると話がスムーズです。「利用するかどうか迷っている」という方は、1度電話で相談されるとよいでしょう。

訪問看護にかかる費用は?

「訪問看護を利用してみようかな?」と考えたとき、気になるのが費用面です。利用するうえで、「医療保険」と「介護保険」のどちらを適用するかによって料金設定が変わってきます。

介護保険

訪問看護は医療保険・介護保険の双方で利用可能ですが、65歳以上の高齢者の方は基本的に介護保険が優先されます。また、40〜64歳の方で「特定疾病」と診断された方も介護保険の利用が可能です。特定疾病に認められているのは、末期がん・関節リウマチ・脳血管疾患を含む16疾患です。地域差もあるため、具体的な費用は訪問看護ステーションに確認するとよいでしょう。

医療保険

介護保険対象外の方や、難病患者・終末期患者、急激な病状悪化で頻回な訪問が必要な方は医療保険の対象となります。

介護保険・医療保険のいずれの場合も、年齢や所得に応じて1〜3割の費用を負担します。また、利用時間・利用回数・オプション(24時間対応や緊急時訪問など)の有無によって利用料金が変わります。(※2)

途中解約もOK! まずは気軽に相談を

仕事や子育てなど自分自身の生活を送りながら、同時に高齢の親を介護するのは簡単なことではありません。これから介護を始める方はもちろん、いつまで続くかわからない介護生活に疲れや不安を感じている方は、訪問看護の利用を検討されてはいかがでしょうか。訪問看護を利用することですべての問題や不安が解決するわけではありませんが、「相談できる人がいる」「ひとりではない」と感じられるメリットは大きいと言えます。
なかには、訪問看護の利用を開始したものの「イメージと違った」「看護師との相性がいまいち......」という方もいます。そのような場合は、途中解約や担当者を変更してもらうことも可能です。

まずは、ご本人とどのような療養生活を送りたいのかを十分に話し合い、必要なサービスをうまく利用しながら、本人・家族ともに安心して療養生活が送れる体制を整えましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 厚生労働省 「平成27年版厚生労働白書-人口減少社会を考える-|図表1-3-66「夫婦のいる世帯」に占める共働き世帯と夫が雇用者で妻が無業者の世帯の割合」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/backdata/01-01-03-066.html

※2 公益財団法人 日本訪問看護財団「訪問看護とは(医療・福祉関係者むけ)Q8訪問看護の費用は、どのくらいかかりますか?」
https://www.jvnf.or.jp/homon/homon-1.html

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