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在宅介護で頼りになる「訪問介護」 内容や費用、利用方法とは?

kurashino

日本では高齢者が急速に増えており、国は住み慣れた自宅で過ごす「在宅介護」を推進しています。
厚生労働省によると、要支援と要介護を合わせた居宅(介護予防)サービス受給者数は388.9万人。これは、施設サービス受給者数95.2万人の約4倍にのぼります。(※1)

在宅介護では家族が介護を担いますが、家族だけで対応するのは身体的・精神的に大きな負担がかかります。そこで利用したいのが、介護サービスのひとつである「訪問介護」です。訪問介護は、入浴や食事といった介護面だけでなく、買い物や掃除などの生活に欠かせないものもサポートしてくれます。

今回は、訪問介護の概要、そのサービス内容とメリット、費用や手順、さらには事業所の選び方について紹介します。

訪問介護とは

訪問介護とは、利用者の自宅を訪問して日常生活の援助を行う介護サービスです。介護保険制度で定められたサービスのひとつで、介護認定を受けた人は、少ない自己負担額で利用できます。

自宅に訪問するのは、訪問介護員(ホームヘルパー)です。研修で介護のスキルを習得した、介護職員初任者研修や介護福祉士などの資格を持つ人が従事しています。

厚生労働省によると、平成29年9月中の利用者ひとり当たりの訪問介護利用回数は19.7回。居宅サービスのなかで一番に利用されています。(※2)これは、「サービス内容が生活に密着していて幅広く展開されている」「最短で20分から利用できる」ことが、理由として考えられます。

訪問介護というと、日中に来てもらうイメージがあるかもしれませんが、夜間に利用できるものもあります。「夜間対応型訪問介護」といって、18時~翌朝8時のあいだにトイレや寝返りの介助などを行います。訪問介護とは別の介護サービスとしてくくられています。

下記の図のとおり、訪問介護の利用者は、要介護度が軽い人ほど多くなっています。このように、訪問介護は介護が必要になったばかりの人たちに多く利用されています。

厚生労働省 「平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況 2 居宅サービス事業所等の状況」8ページの内容を基に作図

訪問介護で、できることできないこと

訪問介護のサービスは、「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに大別されます。それぞれどのような内容なのか、みていきましょう。

身体介護

身体に直接かかわる、生きるために必要な動作の介助を行います。入浴、トイレ、食事介助などがあります。

生活援助

自立した生活を送るために必要な洗濯、料理、掃除等の介助を行います。

通院等乗降介助

訪問介護員自らが運転する車での通院、それにともなう車への乗り降りなどを行います。ただし、実際にサービスを提供する事業所は少なく、主に介護タクシーで実施されています。徒歩や車イスで通院する一般的な通院介助は、身体介護に含まれます。

このように、訪問介護では生活にかかわるあらゆることを介助してもらえます。しかし、何でもやってもらえるわけではありません。訪問介護でできることとできないことを考えるうえで、以下の5つのポイントをおさえましょう。

利用者ができない部分を介助する

介護保険制度の基本的な理念は、「自立した生活に向けて支援すること」です。そのため、できる部分は利用者自身で行います。トイレ介助を例に挙げると、歩行が不安定な利用者であればトイレまで付き添い、ズボンの上げ下ろしは利用者が行います。
どこをどのように介助すればいいのか、訪問介護員は利用者に応じて判断しながら介護します。

吸引と経管栄養は、認定を受けた訪問介護員から受けられる

平成24年より、介護職員が吸引や経管栄養(胃ろうや経鼻経管栄養など)を実施できるようになりました。しかし、介護員の方なら誰からでも受けられるわけではありません。以下2点に当てはまる方からのみ可能です。

  • 事業所が、都道府県知事に届け出を出した登録事業者であること
  • 研修を受け、都道府県知事の認定を受けた介護員であること

家事代行サービスではない

訪問介護員は家事代行サービスの提供者ではありません。何でもやってもらえるわけではなく、利用者の日常生活に欠かせないことのみ介助をします。たとえば、ペットの世話や庭の草むしりなどはサービスの範囲外です。

サービスの対象は利用者本人のみ

介護サービスの目的は、利用者本人の日常生活のサポートです。同居家族の部屋の掃除や買い物代行などはできません。

生活援助は、同居家族がいると利用できないことがある

掃除や洗濯などの生活援助は、同居家族がいると利用できません。ただし、同居家族に病気や障害がある場合や、仕事で不在の時間が長い場合などやむを得ない事情があるときは、例外として利用できます。

訪問介護を利用するメリット

訪問介護の利用は、家族の介護負担を減らすばかりでなく、さまざまなメリットがあります。

介護のコツを学べる

訪問介護員は、介護のプロです。安全でスムーズに介護する方法を知っています。基本のやり方だけでなく、多くの利用者とのかかわりで得た知識と技術をもとに最適な方法をアドバイスしてもらえます。

悩みや不安を聞いてもらえる

介護に悩みや不安はつきものです。誰にでも気軽に話せる話題ではないからと、こころの中にため込んでしまう家族も少なくありません。訪問介護員は介護の大変さをよく知っているので、気持ちを吐き出すことができ、気分転換になります。

安否確認の役目も担ってもらえる

利用者がひとり暮らしの場合や家族が仕事で長時間不在の場合に訪問介護を利用すると、安否確認にもなり、安心です。ただし、安否確認のみの利用はできないので注意が必要です。

利用者にとって刺激になる

家族ではない「よその人」が家に来ることは、利用者にとって刺激になります。普段は家族に甘えてダラダラ過ごしがちの介護者が、訪問介護員が来るとシャキッとする、というのはよくある話です。

利用するには、いくらかかる?

訪問介護を利用したいと思ったとき、費用がいくらかかるのか気になりますよね。介護保険サービスの自己負担は、原則1割です。しかし、要介護者の合計所得金額が一定以上になるとと、2~3割負担になります。第2号被保険者(40歳以上65歳未満の人)は、全員1割負担です。
以下の表は、1割負担の場合の自己負担額です。

サービス費用の設定

利用者負担(1割)(1回につき)

身体介護

20分未満

165円

20分以上30分未満

248円

30分以上1時間未満

394円

1時間以上1時間半未満

575円

生活援助

20分以上45分未満

181円

45分以上

223円

通院時の乗車・降車等介助

98円

厚生労働省 「介護事業所・生活関連情報検索 どんなサービスがあるの?ー訪問介護(ホームヘルプ)」の情報を基に作表

負担割合は、市区町村から交付される「負担割合証」に記載されています。手元に届いたら、確認してみましょう。
また、上記の費用はあくまで目安です。サービス内容や時間、住んでいる地域や訪問介護事業所によって変わります。詳しくは、担当のケアマネジャーに聞いてみるとよいでしょう。

もしも費用が高額になった場合は、「高額介護サービス費」や「高額医療・高額介護合算療養費制度」など、負担を軽減する制度があります。

利用の手順

ここで、訪問介護を利用するためのおおまかな流れを説明します。

1.要介護認定を受ける

訪問介護を利用できるのは、要介護1~5の認定を受けた人です。要支援でも受けられますが、「介護予防訪問介護」と別のサービスになります。

2.ケアマネジャーが利用者のアセスメントをする

利用者の身体状況や生活の様子を分析し、どの介護サービスを導入するのか検討します。

3.担当になる訪問介護事業所を決定する

訪問介護が必要と判断されたあと、事業所を決定します。

4.ケアマネジャーがケアプランを作成する

ケアプラン(居宅サービス計画書)には、介護目標やサービス内容、利用頻度などが書かれています。

5.利用者や家族が同意し、訪問介護を利用する

ケアマネジャーがアセスメントをした時点で、訪問介護の利用を打診されることもありますが、もしもそうでない場合は、どういう点で困っているのか、なぜ訪問介護を利用したいと思っているのかを伝えましょう。

以上が流れとなりますが、介護サービスは希望すれば必ず利用できるというわけではありません。なぜなら、要介護度によって「区分支給基準限度額」が異なるためです。区分支給基準限度額とは、1カ月間に介護保険で利用できるサービスの上限額をいいます。

区分支給基準限度額が超えても利用できますが、超えた分は全額自己負担になります。そのため、利用できるかどうかは、サービス内容や回数、他に利用している介護サービスとの組み合わせによって決まります。詳しくはケアマネジャーに相談してみましょう。

訪問介護事業所の選び方のポイント

訪問介護事業所は、多くの場合、ケアマネジャーが選定します。利用者の自宅近くにある事業所、他の利用者が利用している信頼できる事業所を念頭に、ケアマネジャーが事業所に空き状況を問い合わせし、訪問可能であればサービスの提供を依頼します。もちろん、利用者や家族が訪問介護事業所を選ぶこともできます。

また、1度依頼した事業所であっても、サービス内容に不満がある場合は変更できます。「どの事業所でも同じじゃないの?」と思うかもしれませんが、不満を抱える人もいるのが現状です。
日本政策金融公庫総合研究所の調査では、訪問介護に何らかの不満を抱える人が60.2%に上ることが分かっています。最も多いのが「自己負担額が高い」というもの。「利用回数に制限がある」「ヘルパーによって介護の仕方にばらつきがある」がその後に続きます。

日本政策金融公庫総合研究所 「介護者からみた介護サービスの利用状況~「訪問介護・通所介護に関するアンケート」から~」9Pの情報を基に作図

訪問介護員は資格保有者なので、安全な介護の仕方を学んでいます。しかし、長年の経験によるクセが出ることもありますし、当然ながら訪問介護員と介護を受ける人との相性もあるでしょう。ある人にとっては「良い訪問介護員」でも、別の人にとってはそうでないこともあります。不満があれば遠慮せずに直接伝えるか、ケアマネジャーに相談しましょう。

まとめ

訪問介護は、介護が必要になっても「住み慣れた自宅で過ごしたい」という願いを叶えるサービスです。あらゆるサポートをしてくれますが、家事代行サービスと混同しやすいので注意しましょう。
また、訪問介護のサービス内容や回数は、その人に適したものにできます。困ったことがあればケアマネジャーに相談し、ベストな方法を見つけるようにしましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 厚生労働省 「介護保険事業状況報告の概要(令和2年1月暫定版)」1ページ
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m20/dl/2001a.pdf

※2 厚生労働省 「平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況 2 居宅サービス事業所等の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service17/dl/kekka-gaiyou_02.pdf

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