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両親の介護で疲れないために~介護ストレスを軽減させ楽しい毎日を過ごそう

kurashino

介護保険サービスはどんどん普及してきましたが、「介護は家族がするもの」「親の介護は子どもがするもの」といった考えは、まだ根強く残っているように感じます。

しかし、どれだけ両親のことを大切に思っているとしても、いつまで続くかも分からない介護生活で疲れてしまうことは当然のことです。介護負担を軽減しようとは思っているが上手くいかず、このまま共倒れしてしまわないか心配されている方は少なくありません。

厚生労働省の調査によると、同居して介護している人の約7割に、悩みやストレスがあるという結果が出ており、その内容もさまざまです。

厚生労働省 「平成28年 国民生活基礎調査の概況|同居の主な介護者の悩みやストレスの状況」の情報を基に作図

家族に対する病気や介護の問題だけではなく、自分の病気や介護のこと、お金まわり、家族との人間関係など、さまざまな悩みを抱えていることが分かります。介護を抱えてしまうことで、このような悩みが同時に現れてしまうのです。

介護ストレスが大きくなると、介護者自身がうつ病になったり、またストレスから虐待につながったりすることもあります。そのため、両親の介護を行う場合には、ストレスを解消できるような関わりが必要です。

わたしはケアマネジャーとして高齢者や家族と関わるなかで、さまざまなストレス対策をご提案してきました。その経験から、在宅介護している人がどのようにストレス解消していけばいいのか具体的な方法をお伝えしていきます。

介護ストレスの原因は介護者にある?

どれだけ両親が大事であっても、介護に対する考え方によっては大きなストレスとなってしまいます。
両親のことを「自分が介護しないといけない」と抱え込み、一生懸命になって介護に取り組んでストレスが蓄積している人は多く見受けられます。また、ストレスに気が付いてないことも少なくありません。

まずは、どんなことが介護ストレスの原因になっているのか自ら理解し、その特徴から解消の方法を見出すことが大事です。

介護は自分がしないといけないと抱えすぎている

厚生労働省「平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果からグラフでみる世帯の状況|要介護者等の要介護度別にみた同居している主な介護者の介護時間の構成割合_P52」の情報を基に作図

上記グラフは、同居家族に対して、どのくらいの介護時間を費やしているのかを調査したデータです。要介護度が上がっていくにつれ、「ほとんど終日」の割合が多くなり、要介護5になれば、「半日程度」と合わせて65.4%の介護者が介護に多くの時間を費やしていることが分かります。

介護度が上がっていけば、介護状態はより重度になっていきます。それを家族が抱え込んでしまうと、負担はそれだけ大きくなることは当然のことなのです。

あわせて、要介護利用者の短期入所生活介護(ショートスティ)の利用目的調査も見ておきましょう。「介護者、家族の心身の負担軽減のため」「介護者家族の疲弊に伴う利用者の状態像悪化を防ぐため」が最も多い回答となっています。

厚生労働省「短期入所生活介護におけるレスパイトケアのあり方及び在宅生活の継続に資するサービス提供のあり方に関する調査研究事業|P3.短期入所生活介護の利用目的」の情報を基に作図

短期入所生活介護(ショートスティ)が介護者のために活用されている様子が分かりますが、介護側もこのようなサービスを積極的に活用して休息することが大事です。

負担が大きいのに職場に相談できていない

厚生労働省「在宅介護実態調査の集計結果に基づく分析考察の一例(平成29年3月)|就労継続見込み別・介護のための働き方の調整」の情報を基に作図

上記の調査は介護者が職場に対して勤務調整などを行っているかどうかを調査した結果ですが、「特に行っていない」と答えた人の割合が約7割にのぼっています。

厚生労働省は仕事と介護の両立のポイント(※1)として、「職場に家族等の介護を行っていることを伝え」ることが大事であるとし、必要な時に休暇を取得できるように工夫することを進めています。しかし、実態は、働き方を調整している人は少ないことが分かっています。

仕事と介護の両立で大きなストレスとなる前に、職場に相談し、介護休暇の取得などを前向きに検討することもひとつです。

介護ストレスによって引き起こしてしまう問題

介護ストレスが積み重なっていくと、知らない間に冷静に判断できなくなってしまうことがあります。

介護者自身が「うつ病」になってしまうと、両親の介護どころか、自分自身の生活自体も大きく乱れてしまうおそれがあります。また、介護を抱えすぎることは「虐待」の引き金になりかねません。
「自分だけはそのようなことはない」と考えていても、介護者の「介護うつ」「虐待」は誰にでも起こりうるものなのです。

介護うつ

「介護うつ」とは、介護ストレスをきっかけに発症したうつ病のことを指します。
「介護は家族がするもの」「親の介護は子どもがするもの」と、介護に対する責任感が強かったり、周囲に相談せずに抱え込んでしまったりする人になりやすい傾向があるといわれています。

虐待

以下のグラフのとおり、介護者による虐待が増えています。

厚生労働省「平成 29 年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」 に基づく対応状況等に関する調査結果|養護者による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移」の情報を基に作図

高齢者に対する虐待の定義(※2)として「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」「介護・世話の放棄・放任」の5種類があります。

虐待というと「叩く」「殴る」など身体的なものをイメージするかもしれませんが、「無視する」「叱りつける」、さらには「年金を勝手に使い込む」なども虐待となります。そのため、虐待しているという自覚がないことも多く、介護を受けている高齢者自身も介護を受けているという負い目からひとりで抱え込んでいることが少なくありません。

介護ストレスを決して軽く考えるのではなく、負担を感じるようであれば軽減策を検討する必要があります。

介護をストレスにしないための具体的な対策

冒頭でご紹介したとおり、介護者の約7割がストレスを抱えながら介護をしているとされています。
介護ストレスの対策として、まず自分がひとりでやらないといけないという考えをなくすことがとても大事になります。「誰かに相談する」「介護サービス」に任せてしまう姿勢が重要です。

ここでは、どのようにすれば介護がストレスにならないのか、具体的な対策を3つのポイントにまとめてお伝えしていきます。

地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する

両親の介護で疲れないためには、専門家からアドバイスをもらって、ストレスを軽減することが大事です。介護者自身がしっかりと休養を取れるようにするには、自分がやらなければという考えをなくして、介護サービスを利用することが不可欠です。

介護サービスは介護が必要な高齢者だけのものではなく、介護をしている家族などが休息をとってストレスを軽減させるためのものでもあります。普段から両親の介護で悩んでいることがあれば、お住まいの地域を担当している地域包括支援センターに相談してみるといいでしょう。
地域包括支援センターは多くの場合、中学校区に設置されており、市町村には必ず設置することになっています。

主治医に相談する

介護が必要な高齢者の場合、必ずかかりつけ医がいます。
在宅で高齢者が介護を受けながら生活する場合においては、医療が生活の基盤になります。そのため、健康のことだけではなく、日常的な悩みがある場合においても相談してみるといいでしょう。

主治医は、日常的にケアマネジャーなど介護保険サービスと連携を図っており、医療に関連する情報を収集して治療に役立てています。両親の介護のことで相談を受けた場合も、医師からケアマネジャーに情報提供されることがあり、主治医からの意見で介護サービスが見直されるケースは珍しいことではありません。健康面からだけではなく、さまざまな視点からアドバイスをもらうことができますので、通院に付き添った際にでも相談してみるといいでしょう。

「介護者の会」などを利用する

在宅介護をしていると「気軽に相談できる相手がいない」ということが少なくありません。各地域では介護家族が集まって情報交換や相談のできる「介護者の会」が開催されています。たとえば、東京都世田谷区においては、区役所が中心となって「介護者の会・家族会一覧」を公表しており、介護家族が孤立しないような取り組みを行っています。
全国的な活動を行っている組織もあり、「認知症の人と家族の会」では、認知症介護をしている家族が集まって情報交換や勉強会などが開催されています。

現在、介護で辛い思いを抱えているという人であれば、同じ立場の人たちからアドバイスをもらうことによって、「自分はひとりじゃないんだ」と安心を得られるはずです。
上手く活用して、悩みを打ち明けてみるとよいのではないでしょうか。

まとめ

ケアマネジャーとして介護家族と関わっていると、責任感の強い人ほど自分で抱えてしまう傾向にあることが分かります。以下の項目が思い当たる人は、介護ストレスをうまく開放することを特に意識されるとよいでしょう。

  • 介護は自分がしないといけないと抱えすぎている
  • しっかりと休息が取れていない
  • 負担が大きいのに職場などに相談できていない

こうした傾向に気付かずに介護を続けていると、「両親のために介護をしなければならない」と常に自分を追い込み、知らないうちに介護うつを引き起こしたり、虐待をしてしまったりすることがあるのです。

両親の介護はとても大切ですが、それと同じくらい自分自身のケアも大事です。両親の介護によって共倒れしないようにするためには、上手く介護と付き合っていく方法を見つけなけましょう。

介護は、孤立が最も良くないことだと考えます。孤立しないためには、身近にいつでも相談できる体制を持っておくことが大事です。
介護サービスや医療サービスを提供するプロに相談したり、「介護者の会」などで経験者に相談したりすることが、負担を軽減させるうえでもっとも大事なことになるでしょう。

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