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熟年離婚を回避する「卒婚」という選択肢 "なるべく一緒にいないための極意"とは

kurashino

「人生100年時代」が到来しています。会社勤めや子育てが一段落したあと、残る人生が長くなれば、重みを増してくるのが「夫婦関係」です。良好に保つことができれば、「人生の第2ステージ」の幸福度も大きくなります。

しかし、残念ながら多くの夫婦が「熟年離婚」を決断しているのが現実です。
なぜ、長年連れ添った夫婦が離婚してしまうのでしょうか。そして、別れを選ぶことなく、幸せな人生を歩み続けるには、どうすればよいのでしょうか。
統計データや実例を紐解いてみると、ヒントが見えてきます。もし夫婦生活に既に不満や不信感を抱えているなら、「なるべく一緒にいないスタイル=卒婚」を実践してみてはいかがでしょうか。

5組に1組は「熟年離婚」

「最近、周りで離婚が増えてきた」と感じませんか? 筆者も親族や友人だけで、離婚経験者が数人思い浮かびます。

実際はどうなのか、統計を見てみましょう。厚生労働省によると、2018年の年間婚姻件数は58万6481件、離婚件数は20万8333件、30年前の1988年と比べると、婚姻件数は約12万件減少しましたが、離婚件数は約5万件増えています。
2018年における「婚姻:離婚」の比率は、「2.8:1」。1988年は、婚姻が離婚の4.6倍ありましたが、現在は3倍を下回ります。この比率を単純にとらえて、「3組に1組が離婚する時代」とする論調もあります。

離婚件数自体は、2002年(28万9836件)をピークにゆるやかな減少傾向にありますが、それを上回る勢いで結婚するカップルが減っています。結婚と離婚の差が急速に縮まっているので、「離婚が珍しくなくなった」と感じるのも不思議ではないわけです。

厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計の年間推計」を基に筆者作成

次に離婚件数全体のうち、同居期間20年以上の夫婦による「熟年離婚」の割合を見てみましょう。2018年の割合は19.9%で、離婚する夫婦の5組に1組が熟年離婚であることがわかります。熟年離婚の割合は2010年(16.9%)以降、8年連続で上昇しています。

厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計|年次別にみた同居期間別離婚件数及び百分率、ならびに平均同居期間」を基に筆者作成

離婚件数自体がゆるやかに下がり続けるなか、熟年離婚は2年連続で微増しました。最も分布が多い「同居期間5年未満」での離婚が3年連続の微減ですので、この増加傾向は注目に値すると思います。

離婚したい妻「毎日一緒、耐えられない」

ここからは、離婚する理由について考えてみましょう。
明治安田総合研究所が2018年6月、全国の40~64歳の男女1万2000人に行った調査「人生100年時代の結婚に関する意識と実態」では、既婚者には「結婚生活に不満な理由」を、離婚経験者には「離婚した理由」をそれぞれ尋ねています。
男女とも「性格・価値観の不一致」がトップ、次点は「金銭問題」でした。この順位は、既婚者か離婚経験者か、あるいは子どもがいるかどうかを問わず、同じでした。「性格・価値観の不一致」はどの夫婦にも起こりうることですが、「配偶者の浮気」や「精神的虐待」のような決定的な要素を大きく上回る意外な結果となっています。

株式会社明治安田総合研究所「人生100年時代の結婚に関する意識と実態」12ページを基に筆者作成

また、「自分や配偶者の定年を機に離婚(定年離婚)を考えたことがある」と答えた既婚者は、男性で2割、女性で3割に上りました。実際に離婚した人も含めた理由のトップは、女性が「定年退職後に毎日、家で一緒に生活するのは耐えられないから」(45%)というもの。多くの女性が"世話の焼ける"、あるいは"憎たらしい"夫から解放されたい、と願っているのかもしれません。調査結果では、「夫としては妻のこの思いに鈍感であってはいけない」とも指摘しています。(※1)

女性が熟年離婚を考えるうえで最大のネックと言えるのが「経済的リスク」ですが、このリスクが緩和されつつあることも後押ししているようです。
2007年には、離婚時に年収の少ない側(多くの場合、妻側)に有利に働く「年金分割制度」も導入されました。この調査でも、定年離婚を考えた理由に「配偶者の退職金からの分与や年金分割が期待できるから」と答えた女性が6.6%(男性は0.8%)いました。

一方、男性が定年離婚を考えた理由のトップは「妻からの愛情が感じられない・妻への愛情を感じない」(37.6%)で、2番目が「毎日、家で一緒に生活するのは耐えられない」(27.8%)でした。夫も妻と同様、毎日一緒に過ごすストレスを不安視している傾向が見て取れます。

株式会社明治安田総合研究所「人生100年時代の結婚に関する意識と実態」15ページを基に筆者作成

卒婚で「以前より仲良く」

これまでの各種統計・調査結果から、熟年離婚の流れが加速していること、そして回避するには「なるべく一緒にいない」ことで互いのストレスを和らげることが、打開策になりうることが浮かび上がってきたと思います。

ここで、改めて「卒婚」をキーワードに、夫婦の新しいスタイルを模索してみましょう。
卒婚は、卒業と結婚を組み合わせた造語です。ライターの杉山由美子さんが著書「卒婚のススメ」で、別居や役割交代という形で「卒婚」を試みた夫婦の事例を紹介し、一般的にも知られるようになりました。

先に紹介した結婚に関する意識・実態調査では、卒婚について「離婚はしないが、配偶者に必要以上に干渉せずに自分のライフスタイルを楽しむ夫婦関係」と定義したうえで、どう思うかを尋ねています。その結果、世代間に差はあるものの、「良い」「どちらかと言えば良い」と肯定的にとらえていたのは男性で5~6割、女性で7~8割に上りました。(※1)

卒婚に肯定的なのは高齢女性ほど多く、若年男性ほど少なくなるという興味深い結果となっています。いずれにしても、多くの中高年世代が、卒婚に共感し、関心を示し始めていると言えるでしょう。

株式会社明治安田総合研究所「人生100年時代の結婚に関する意識と実態」16ページを基に筆者作成

卒婚をうまく実現させたモデルとして、著者が相談を受けた60代夫婦の事例を紹介します。
この夫婦は数年前、夫の定年を機に自宅を売却。徒歩15分ほどの距離に別々のマンションを借り、別居生活を始めました。夫はひとりで小旅行やグルメスポット巡りを楽しみ、妻はパートの仕事に精を出しています。関係が断絶したわけではなく、週に数度は会って外食し、たまには家族旅行にも行きます。「お互い介護が必要になったら、また一緒に暮らそうか」とも話し合っているそうです。
妻のほうが「腹立たしかった夫のしぐさや行動があまり気にならなくなり、以前より仲良くなった」と話していたのが印象に残っています。

夫の自立がカギ

別居はせず、同居したままそれぞれのライフスタイルを追求する「プチ卒婚」でも一定の効果を期待できると思います。ただ、家事分担が中途半端になり、結局は妻に偏ってしまうことが起こりがちですので、特に男性は、少なくとも「自分のことは自分でやる」ことを心がけたほうがよいでしょう。

株式会社日本総合研究所は2019年3月、東京圏で働く45~64歳の高学歴中高年男性を対象に意識・生活実態調査を行っています。男性が担う家事分担の割合を尋ねたところ、「全体の20%未満」の回答が約6割あり、最も多い結果になりました。これは共働き世帯であっても同じ傾向で、男性の家事に対する意識の低さを表しています。(※2)
別居するにしても、同居で自立を目指すにしても、男性の家事はネックになりそうです。

株式会社日本総合研究所「東京圏で働く高学歴中高年男性の意識と生活実態に関するアンケート調査結果(報告)」39ページを基に筆者作成

この調査では、夕食の準備について「(全く)やっていない」とする高学歴中高年男性の回答が半数に上りました。(※2)
それだけに料理が分担できれば、妻の負担もかなり軽減できると思います。妻に万が一のことがあったときの備えとしても、すぐ始めるに越したことはありません。もし住み替えやリフォームを検討しているのであれば、広くて使いやすいキッチンに一新してみるのもよいかもしれませんね。

『自分らしい』夫婦像の模索を

熟年離婚を回避する夫婦の形として、「なるべく一緒にいない生活スタイル=卒婚」を勧めてきました。ただし、やみくもに卒婚をスタートさせても、経済面などさまざまな壁に直面してしまいます。別居であれば、同居の倍の生活費がかかることを見込んで、計画的な資産運用や節約も必要になってきます。
また、関係性についても、距離を置きすぎると「もはや修復ができない」「婚姻関係を続けても意味がない」という事態を招きかねません。ある程度密に連絡を取り合い、困りごとがあったらサポートしあえるようにしましょう。

お互いがよりよいパートナーであり続けることが、卒婚の目的です。感情に任せて距離をとるのではなく、それぞれの意見や立場を尊重しながら、自分たちに最も適した距離感、スタイルを模索してほしいと思います。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

【参考資料】

※1 株式会社明治安田生活福祉研究所「人生100年時代の結婚に関する意識と実態」
https://www.myri.co.jp/research/report/2018_04.php

※2 株式会社日本総合研究所「東京圏で働く高学歴中高年男性の意識と生活実態に関するアンケート調査結果(報告)」
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=35021

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