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親の介護に限界を感じたら? 介護と上手に付き合うための5つの対処法

kurashino

家族の介護が始まると、日々のお世話や通院の付き添い、こまごまとした雑務などに追われ、気の抜けない日々が続きます。そのうえ介護のために仕事を休まなくてはならないこともあり、そのたびに職場へ迷惑をかけることに負い目を感じて悩んでしまう方もいるでしょう。

介護は子育てと違い終わりが見えないため、介護者の悩みはよりいっそう深刻になりがちです。今回は、介護者が抱える悩みを深く掘り下げ、悩みの解決に向けた具体的な対処法をお伝えします。

親の介護――どんなことに悩んでいる?

介護者は、介護のどんな点に悩んでいるのでしょうか。厚生労働省の資料によると、「介護における悩み」として、6割以上が「精神的に疲れる」、半数近くが「介護がいつまで続くかわからない」を挙げており、メンタル面の疲労の強いことがうかがえます。
また、「自由な時間がない」「思ったように仕事ができない」など、介護に拘束されて介護者自身の生活が脅かされている実態が読み取れます。

厚生労働省「介護に取り組む家族の支援に資する民間サービスの普及・促進に関する調査研究事業 平成29年3月 株式会社 日本総合研究所 報告書」の情報を基に作図

食事、入浴、排泄などにサポートが必要になってくると、介護者の負担は一気に重くなります。特に認知症の人の介護は、徘徊、火の不始末、食べられないものを食べてしまう「異食」など、命にかかわる危険もあるため、介護者は一時も目を離せない状況になります。
このような日々が続けば介護者のストレスは募る一方です。介護に限界を感じるのも無理はないといえるでしょう。

介護の悩みが深刻化する原因とは?

介護の悩みが深刻化してしまう理由のひとつに、「ほかに頼れる人がいない」という事情が考えられます。

下記「あなた以外に介護に関わっている家族や親族がいるか」の問いに対し、「他にいない」が37.5%、「他にいるが自分が主に関わっている」が43.4%で、ほぼひとりで介護をしている人が全体の8割以上にのぼっています。

厚生労働省「介護に取り組む家族の支援に資する民間サービスの普及・促進に関する調査研究事業 平成29年3月 株式会社 日本総合研究所 報告書」の情報を基に作図

ほかに協力者がいないと、毎日の介護だけでなく、手続きなどの事務処理やお金の管理、介護に関する悩みごとやトラブルをすべてひとりで背負わなければなりません。介護者の孤立感はいっそう深まり、精神面にも悪い影響を及ぼすことが懸念されます。

また、仕事を持つ方が頭を悩ませるのが、「仕事と介護の両立」ではないでしょうか。
個々の介護状況にもよりますが、たとえば親の通院のために会社を休むことが増えたり、介護の疲れや寝不足がたたって仕事に支障が出てしまったりすると、仕事の継続が難しくなってくることもあるでしょう。

総務省のデータによると、平成28年10月から平成29年9月までの1年間で、介護や看護のために仕事を辞めた人は9万9千人以上にのぼります。

総務省統計局「平成29年就業構造基本調査|結果の概要 図I-5」を基に作図

仕事を辞めてしまうと、収入が途絶えてしまうだけでなく、これまで積み上げてきたキャリアや経験を手放すことにもなり、介護者にとっては大打撃です。また、介護離職をしたのちに再び仕事に就こうとしても、再就職率は介護離職者全体の3割にしか満たず、年齢が上がるほど再就職が厳しいという現状もあります。さらに、前職で正規雇用だった人でも、離職期間が長期化すると再就職では非正規雇用になってしまう例も少なくありません。(※)
そのため、たとえ親の介護のためであっても、本意でない離職はできるかぎり避けるのが望ましいと言えるでしょう。

このように、介護者を追い詰める「孤立感」や「介護離職問題」を避けるには、一体どのような方法があるのでしょうか。

親の介護に限界を感じたときの対処法

多くの場合、両親に少しでも心地よく過ごしてもらいたいという気持ちと、実際に自分ができることのギャップに、介護者自身も葛藤しながら日々介護に向き合っていることと思います。そのような方が、少し肩の荷を下ろして楽になれるよう、ぜひ実践していただきたい対策をご紹介します。

1.兄弟姉妹と話し合う

もし兄弟姉妹がいる場合は、ぜひ1度話し合いの機会を設けましょう。もともと兄弟姉妹には平等に親を扶養する義務があります。遠方に住んでいるなど介護に携わるのが難しいケースもあるかと思いますが、誰かひとりに介護の負担が偏るのは避けなければなりません。実際に介護を担うのが無理であれば、金銭的な援助をしてもらうなど、兄弟間で負担のバランスがとれるように調整するのが理想です。

親の介護状況や困っていること、自分の置かれている境遇を兄弟姉妹にも知ってもらい、介護の分担や今後の介護の方向性について全員でよく相談しましょう。

2.専門機関へ相談する

介護をひとりで抱え込むと、心身の疲労が積み重なってうつ病を発症してしまう人もいます。こうした最悪の事態を避けるには、早めにしかるべき場所へSOSのサインを発することが重要です。

介護に関する相談は、お住まいの地区の地域包括支援センターや市区町村の専門窓口などで受け付けています。できれば、介護が始まったらすぐに相談に行くのがよいでしょう。介護保険の利用案内や、今すぐ利用できるサービスの紹介など、さまざまなアドバイスをしてくれるはずです。

認知症の相談なら、公益社団法人「認知症の人と家族の会」でも無料の電話相談を受け付けています。ぜひ利用してみてください。

3.介護保険サービスを利用する

介護保険をまだ利用していない方は、早めに申請をしましょう。要介護認定で「要支援」や「要介護」の認定が下りれば、1~3割の負担で介護保険サービスを利用できます。日々の介護の一部を専門のヘルパーに任せることができれば、自分の時間が持てたりストレス解消になったりなど介護者にも数々のメリットがあります。

介護はひとりで背負い過ぎないことが肝心です。ぜひ積極的にプロの手を借りて、介護から精神的肉体的に解放される時間を作りましょう。

要介護の認定者数は年々増加しており、比較的軽い介護度である「要支援1~2」「要介護1」の人も多くいます。認知症がないから、ケガや病気があるわけじゃないからと諦めずに、日常生活に困っている状況であればとりあえず申請してみるのがおすすめです。

厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割(平成30年度)」を基に作図

4.介護休業制度を利用する

仕事をしながら介護をしている方は、「介護休業制度」や「介護休暇制度」などの利用を検討しましょう。これらは国の定める「育児・介護休業法」による制度のため、もし会社に制度がない場合でも利用することが可能です。

このほか、家族の介護をしている従業員へ向けて会社独自のサポート制度を設けている企業もあるので、利用条件や支援内容などを担当者にたずねてみましょう。

厚生労働省「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために」の情報を基に作図

5.介護施設への入居を検討する

自宅での介護が難しくなってきたら、介護施設への入居も視野に入れましょう。ただ、希望の条件にぴったり合う施設がすぐに見つかるとは限りません。そのため、まだまだ在宅でお世話していきたいという場合でも、いざという時に備えて早めに周辺の介護施設の情報を集めておくのがおすすめです。

立地、設備、費用、医療体制、看取りの対応など、施設それぞれの特徴を知り、この先どのような暮らしをしていきたいのか本人の希望も踏まえたうえで、自分たちにとってベストな施設を選ぶようにしましょう。

介護にかかる費用はどのくらい?

やはり気になるのは、「介護にはどのくらいお金がかかるのか」という点ではないでしょうか。ここでは、おおまかな介護費用の目安をお伝えします。

月々の介護費用はいくら?

「生命保険文化センター」の資料によると、介護費用の全体の平均月額は、7.8万円となっています。

公益財団法人 生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」の情報を基に作図

しかし、介護費用は介護度によって大幅に変わるため、上記金額はあくまで参考程度にとどめておきましょう。そして、介護施設へ入居することになれば、月々の介護費用はさらに上がる場合も考えられます。公的施設であれば、状況によっては入居費用を低く抑えられるケースもありますが、民間の有料老人ホームでは最低でも月々10万円以上、なかには何十万円もかかる施設も珍しくありません。長く入居することも頭に入れ、無理なく支払える価格帯の施設を検討しましょう。

介護保険サービスの利用料について

介護保険サービスを利用するには、要介護認定の申請をして「要支援」か「要介護」の認定を受ける必要があります。認定の区分は、要支援1~2と要介護1~5の7種類があり、このどれかに該当すれば介護保険サービスを利用できます。

利用料金は、サービスにかかった費用の1~3割。何割負担になるかは所得によって決まります。ただ、介護度によって利用できる介護保険サービスの限度額が定められており、上限を超えた分は10割負担になるので注意しましょう。認定が下りたからといって介護保険サービスが使い放題になるわけではありません。ケアプランを作成してくれるケアマネジャーとよく相談し、無理のない範囲で介護計画を立てていきましょう。

まとめ

ここまで育ててくれた両親に恩を感じ、「手厚い介護をしてあげたい」と思う方は少なくないでしょう。ですが、子ども自身も仕事や家庭をもち、その中で両親のためにどのくらい時間や労力を使えるかというと、難しい現実もあるのではないでしょうか。

介護は、ひとりで抱え込まないこと、悩んだらすぐに介護の専門家に相談すること、積極的に支援やサービスを利用することが大事です。介護をする相手のことばかりではなく、自分のことも大切にして、よりよい介護方法を選択していきましょう。

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