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働きながらでも介護できる? 認知症の経過と対策のポイント

kurashino

「最近、物忘れが増えた」「何度も同じことを聞くようになった」。
自分の親にこういう状況が起きたとき、頭をよぎるのが認知症です。

認知症は、治療薬はあるものの根本的な治療法は確立されておらず、徐々に症状が進行します。

もし親が認知症と診断され、介護が必要になったとき、自分の生活がどのように変わるのか心配ですよね。特に仕事をしている人は、今のまま仕事を続けられるのか不安だと思います。

そこで今回は、認知症の概要と介護者の現状、認知症の経過と対応のポイントをはじめ、介護離職を考えるうえで気を付けたいこと、働きながら認知症の介護を続けるコツについてまとめました。
仕事をしながらでも、介護を続ける方法はあります。親も自分も充実した生活が送れるよう、少しずつ考えていきましょう。

認知症とは? 患者数の推移と主な介護者の状況

認知症とは、記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をおよぼしている状態です。
根本的な原因は不明ですが、脳細胞の壊死や異常なタンパク質の蓄積などが考えられています。脳梗塞やくも膜下出血など、脳血管疾患を発症したあとに認知症になるケースもあります。

認知症にはさまざまな種類があり、一番多いのは「アルツハイマー型認知症」です。その他、「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」などがあります。患者数は年々増加しており、2012年には65才以上の高齢者の約7人にひとりでしたが、2025年には約5人にひとりになるといわれています。

内閣府 「平成29年版高齢社会白書(概要版) 3 高齢者の健康・福祉」の情報を基に作成

認知症に限ったデータではありませんが、同居している主な介護者の年齢構成に関するデータがあります。
要介護者が70代の場合、介護者もまた70代が最多ですが、要介護者が80代になると介護者は50代が最多になります。続柄でみると、子と子の配偶者が9割を占めています。

このデータから、働き盛りの50代で介護問題に直面している人が多いことが分かります。今後さらに高齢化が進めば、介護を担う現役世代が増える可能性があります。

厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況|表 21 要介護者等の年齢階級別にみた同居の主な介護者の性・年齢階級構成割合」の情報を基に作図

認知症の症状は? 認知症の経過と対処のポイント

認知症の症状は、認知症の種類やその人によって異なり、経過もさまざまです。今回は1番患者数の多い、「アルツハイマー型認知症」の経過を取り上げます。症状の重さに合わせ、その特徴や対処方法をまとめました。

軽度

物忘れや新しいことが覚えられないなど記憶障害はありますが、見守ることで日常生活が可能です。また、早い段階で治療を始めれば、症状の進行を食い止められる可能性があります。
本人もまた、「何かが違う」と不安を感じています。そのため「さっきも言ったでしょ」「なんでできないの」など責めるような言葉は避け、自尊心を傷つけないような関わり方が大切です。

公的援助として、要介護認定の申請を早めに検討しましょう。申請してから要介護認定の結果が分かるまでは、1か月ほどかかります。申請先は、市区町村の窓口か地域包括支援センターです。申請に至らなくても、相談にのってもらうだけで安心できるので足を運んでみてください。認定を受けたあとは、利用できるサービスがあれば利用し、本格的に介護が必要となる前に慣れておくという方法もあります。
そして、可能であれば、今後の生活について本人と相談しましょう。在宅か施設か、お金はどうするのかなど、あらかじめ考えを共有することで生活の満足度が高くなります。

中等度

症状が進行し、介助がなければ日常生活が困難になります。周りに暴力を振るう、幻覚を見る、徘徊するといったBPSD(認知症の行動・心理症状)が出始めます。
この段階では、できることは本人にやってもらいつつ、介護サービスを利用して介護する人自身の負担を減らしましょう。また、症状の進行に合わせて、介護保険の区分変更をおすすめします。区分変更して要介護度が上がれば、利用できるサービスの幅が広がります。本人の状態の変化に合わせて、介護サービスを見直すことが大切です。
介護者自身が不安やつらさを吐き出せる場所を見つけることも大切です。認知症が進行するにつれて、負担は増大します。ケアマネジャーに相談する、家族会に所属して仲間を見つけるなど、相談先はひとつでなく複数あると安心です。

重度

運動機能や言語機能に障害がでるので、活動性が落ちます。寝たきりになり、常に介護が必要です。失禁したり口から食べられなくなったりして、最終的には死に至ります。どのように看取るのか医師やケアマネジャーなどと相談し、環境と心の準備をしましょう。

仕事は続ける? 辞める? 認知症介護で後悔しないために

介護離職者数は、ここ数年概ね9~10万人で推移しています。過去のデータをさかのぼっても女性が主な担い手であることに変わりはないですが、年々男性が占める割合は増えつつあるといえます。

内閣府「仕事と生活の調和レポート2018」図表3-4-53を基に作図

介護をしていると、急に仕事を休まなければいけない状況も珍しくありません。離職すれば時間の融通がきくようになりますが、以下のようなデメリットもあります。

  • 収入が減るため、経済的負担が増える。それだけでなく、自分自身の老後費用が準備できなくなる場合もある
  • 今まで積み上げてきたキャリアがなくなり、社会的役割を喪失する。やりがいがなくなり、無気力になる人も
  • 介護から離れる時間がなくなり、息抜きが難しくなる

また、介護離職した人のうち、40代で約4割、50代で約2割、60代で約1割が求職中であるというデータがあります(※)。離職期間が長いほど再就職も難しく、必ずしも希望する職に就けないケースも出てくることでしょう。

このような理由から、可能であれば働きながら介護することをおすすめします。

働きながら認知症の親の介護を続けるコツ

ここでは、働きながら認知症患者の親を続けるコツをまとめました。

ひとりで抱え込まない

いつ介護が終わるのかは、誰にも分かりません。途中で息切れしないよう介護者の負担を減らすためには、周囲に頼ることがポイントです。家族や親戚にも協力をお願いしましょう。
介護の方法や制度について相談したいときは、看護師やケアマネジャーなど専門スタッフが頼りになります。

介護保険サービスを積極的に利用する

介護保険サービスには、訪問介護やデイサービスなどさまざまな種類があります。たとえば、仕事の日はデイサービスに行ってもらったり、訪問介護で入浴介助をお願いしたりできます。本人と介護者が楽になれるように、何をどのような形でサポートしてもらえればいいのか考えましょう。
また、介護者の息抜きを目的とした「レスパイトケア」というサービスがあります。主に利用されるのがショートステイ(短期入所)で、介護者は少しの間、介護から離れることでリフレッシュできます。ただし、要介護認定の結果によって使えるサービスや頻度が異なります。ケアマネジャーと相談しながら、導入を検討しましょう。

仕事と介護の両立支援制度を利用する

働きながら介護をする人の負担を減らすため、育児・介護休業法で制度を整えています。
代表的なものは以下の通りです。

  • 介護休業:要介護状態にある人ひとりにつき通算93日まで、3回を上限に取得できます。
  • 介護休暇:要介護状態にある人ひとりにつき年5日まで、2人以上は年10日まで、1日単位または半日単位で取得できます。

また、事業主は、短時間勤務制度やフレックスタイム制度など、要介護状態にある人、ひとりにつき利用開始から3年間で2回以上利用できるよう措置を講ずる必要があります。独自で制度を整備している会社もあるので、1度確認することをおすすめします。
また、親の介護をしていることを上司や同僚に伝えておくと、いざというときに協力を得やすくなります。

施設への入所も検討する

認知症の症状が進行し、自宅での生活が難しいと感じたときは、施設への入所も検討しましょう。利用できるのは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の他、認知症の人が共同で生活するグループホームなどがあります。ただし、施設によって要介護度による入所条件があるので注意が必要です。空きがないことも多いので、早めにケアマネジャーに相談しましょう。

まとめ

親が認知症になると、介護と仕事を両立できるのか不安になるかもしれませんが、介護離職を防止するための制度はさまざまあります。退職を決断する前に、会社と相談しながら両立する方法を探ってみてください。また、自分自身の負担を少なくすることも大切です。周囲を頼り、息抜きしながら、介護疲れを防ぎましょう。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

【参考資料】

※政府統計の総合窓口「就業構造基本調査 平成29年就業構造基本調査 結果の要約・概要・主要統計表」の情報を基に集計
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&tclass1=000001116995&stat_infid=000031735827

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