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離れて暮らす親の孤独死が心配 子どもにできる具体的な対処法

kurashino

高齢者の単独世帯が増えています。
また「孤独死」についての報道などを見かけることも多くなりましたので、離れて暮らす子どもにとっては他人事ではないでしょう。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」を基に作図

東京23区では、年々高齢者の孤独死が増えており、平成15年の1,451人から平成28年には3,179人と倍以上になっています。高齢化が進むなかで、これからも孤独死が増えてしまうことは予想できるでしょう。

人は高齢になるにつれて病気が増え、身体能力が衰えてしまいます。そのため事故や病気をきっかけとなって孤独死につながってしまうことは、ある程度仕方のないことのように思えるかもしれません。

しかし、私は長いケアマネジャーの経験から、地域社会とのつながりを持つことによって孤独死のリスクを下げることができると実感してきました。地域のコミュニティの協力によって、危ない事故などを乗り越えた場面に、今まで幾度となく遭遇してきたからです。

地域とのつながりは、高齢者の孤独死を防ぐだけではなく、安心して暮らし続けるためにもっとも大事なことだと感じます。

高齢者の暮らしの現状を理解し、どのように地域社会に関わっていけばいいのか具体的にお伝えしていきます。

高齢者の暮らしの現状

厚生労働省の調査によると、わが国の全世帯数は2017年現在、約5千万世帯ほど。その中で高齢者の単独世帯が増加しています。

高齢者の住む世帯のうち、単独世帯の割合が平成元年では男女あわせて14.7%(男:2.8%、女:11.9%)であったものが、平成28年には27.2%(男:8.7%、女:18.5%)となっており、男女ともに増加が著しいことが分かります。

厚生労働省「国民生活基礎調査 平成28年 世帯構造別にみた65歳以上の者のいる世帯数の構成割合の年次推移」を基に作図

高齢者の暮らしの現状が、孤独死が増える要因になっていることは間違いないと言えるでしょう。そのような状況のなかで高齢者自身は「孤独死」についてどのように考えているのでしょうか。

内閣府「高齢者の健康に関する意識調査(平成24年) 孤独死を身近な問題と感じるものの割合」を基に作図

上記は、全国の55才以上の男女3,000人を対象に、「孤独死を身近な問題と感じるものの割合」を調べたグラフです。そのなかで「ひとり暮らし」の人は、孤独死を身近に「とても感じる」「まあ感じる」という人の割合が、「夫婦のみ世帯」や「その他世帯」と比べると突出していることが分かります。

ここには、年齢を積み重ねて心身の衰えを感じるなかで、報道などで目にする孤独死を他人事として感じられないといった状況があるのかもしれません。ただし、そのような状況でも子どもとの同居を選択する高齢者は少なくなっている現状も感じて取れます。以下のデータをご覧ください。

厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)の結果からグラフでみる世帯の状況(平成30年発表) 家族形態別にみた65歳以上の者の構成割合の年次推移」を基に作図

平成元年では高齢者が住む全世帯の割合の中で、「子夫婦との同居」は42.2%を占めていたものが、平成28年にはわずか11.4%に減少しています。

ここには、親との同居を選ばない子自身の意思も含まれていると思われますが、高齢者自身も子夫婦の世話にならずに自活していきたい意思が高まっている結果であると考えられます。ただ、「配偶者のいない子と同居」する高齢者は増加傾向にあり、そこは孤独死を防ぐうえでのひとつの安心材料になっていると言えるのかもしれません。

これらの状況のなか、孤独死を防ぐには、冒頭でもお伝えしている通り「地域社会との関わり」にあると考えます。長い間、地元で暮らし続けていると、近隣住民など地域での関わりを持ちながら生活している人も少なくありません。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|地域での付き合いの程度」を基に作図

このデータは60才以上を対象に「地域での付き合いの程度」を調べたものです。
男性の73.3%、女性の81.1%が「よく付き合っている」「ある程度付き合っている」と回答していますが、逆を言えば、男性では約3割、女性では約2割が、人と関わりのない生活をしていると理解することができます。特に男性は人との交流の少なさが目立つように感じられます。「全く付き合っていない」割合が女性のほぼ倍にあることも、その傾向を示唆しているといえるでしょう。

私はケアマネジャーとしての経験から、人には「社会性」が大事であると考えています。人と会うときにはきちんとした身だしなみをしよう、マナーや言葉遣いに気を付けようといった考えは社会性によるものです。
この社会性が衰えてくると人と会うことがわずらわしくなり、心身を急激に衰えさせる原因となります。つまり悪循環の生活の中で、孤独死が生まれやすい状況となってしまうのです。

高齢者に多い事故

高齢者の単独世帯で注意しておきたいのが、「事故」です。
高齢者に多い事故として「家庭内事故」「交通事故」「火災」が挙げられます。その事故が原因となって亡くなってしまうことも少なくありません。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|65歳以上の者の家庭内事故」を基に作図

そして、これら事故の発生場所として、主に「居室」「台所・食堂」「階段」が挙げられます。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|65歳以上の者の家庭内事故」を基に作図

私がケアマネジャーとして高齢者と関わるなかでも、自宅内で転倒して起き上がれなくなるケースが頻繁に見られました。特に家庭内は段差が多く、カーペットやコンセントなどにつまずいてしまうようです。
高齢になると骨粗しょう症などによって骨がもろくなり、骨折しやすくなります。そのため「転倒しにくい環境づくり」「転倒しない身体づくり」「転倒した際の早期発見」について考えておく必要があります。

次に交通事故について見ていきましょう。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|交通事故死者数および65歳以上人口10万人当たりの交通事故死者数の推移」を基に作図

事故の総数は年々減少しているものの、65才以上の高齢者の割合は常に半数近くを占めています。心身の衰えによって状況に応じた反応が以前のようにできなくなってくることは、自覚しなければなりません。自動車運転が危険と感じたら「運転免許の自主返納」も検討するといいでしょう。

次に火災について見てきましょう。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|住宅火災における死者数の推移(放火自殺者等を除く)」を基に作図

住宅火災における死者数は減少しているものの、65才以上の死者数の割合は増加していることが分かります。

私がケアマネジャーとして関わるなかでは、「ガスコンロの消し忘れ」「暖房器具の使用」「たばこの不始末」などが多いように感じます。そのため「住宅用火災報知器の設置」「自動消火装置の設置」などと共に、「IHの導入」「暖房器具をエアコンに変更」「灰皿に水を入れる」などの対応をしてきました。
できる限り火を使わないということが予防のひとつでもありますが、難しい場合もありますので、早期発見できるように工夫することが大事になります。

また、事故ではありませんが、高齢者の自殺についても、その傾向をご紹介します。

内閣府「平成30年版高齢社会白書(全体版)4 生活環境|60歳以上の自殺者数の推移」、厚生労働省「自殺の統計 平成30年中における自殺の状況」を基に作図

自殺者数は年々減少傾向にあるように感じますが、その内訳をみると、直近では全年代の自殺者の中で、高齢者(60才以上)の割合が全体の約4割を占めています。

高齢者の自殺者の9割以上は、心身に不調を抱えているために起こっていることが分かっており、将来に対する不安や焦り、絶望感などが自殺につながっていると考えられます。
うつ病を発症している割合も多くなる年代ですから、日頃から人との関わりを持ち、周りが変化に気づくことが大事です。特に老年期のうつ病はメンタル疾患の経験がなくても、心身の不調によって急激に現れることがありますから、変化に気づく体制づくりをしておくようにしましょう。

孤独死を避けるための提案

何度も繰り返しますが、高齢者の孤独死を予防するには常日頃から人と関わる生活をしておくことが大事だと考えています。特に高齢者は子どもにお世話にならずにいつまでも自宅で暮らし続けたいと考えていることが多いため、人と関わりながら社会性を高めていくことが重要です。

そのポイントとして4つを挙げてみました。特に子どもが離れて暮らしているような状況の場合、このような地域のコミュニティと連携を図って、何か変わったことがあれば連絡してもらうなど工夫すればいいでしょう。

  • 民生委員との連携
  • 自治会・町内会への参加
  • 社会福祉協議会での福祉サービスの利用
  • 介護保険サービス(地域包括支援センター)の利用

なお、民生委員とは厚生労働大臣から委嘱されている地域の相談相手です。高齢者のお宅に訪問し、相談を受けたり支援したりしています。ボランティアではありますが、地域の見守り活動が主な役割です。状況によっては、家族とも連携を図ってくれますから、高齢者の家族のことが心配であれば事前に相談するようにしておけば、気にかけてくれるようになります。高齢者が住む地域においてどなたが民生委員をされているか、市町村に確認しておくとよいでしょう。

「自治会・町内会」を積極的に活用することもひとつです。
自治会・町内会とは地域のために組織された地縁団体ですが、地域交流や防災、環境改善などに大きな役割を果たしています。
自治会や町内会の中には、自主的に高齢者だけの世帯を把握し、民生委員やケアマネジャーなどと連携を図りながら、安心した暮らしづくりを推進しているところもあります。世話好きの人が役員をしているようなことが多いので、事前に相談しておくと定期的に訪問してくれるようなこともあります。

「社会福祉協議会」において福祉サービスを利用することもいいでしょう。福祉サービスというと介護保険サービスのようなイメージがありますが、各市町村に設置されている社会福祉協議会において「高齢者の見守り活動」などさまざまな事業を行っています。ひとり暮らしの高齢者や高齢者だけの世帯になどに対して相談や支援を行い、気になることは家族をはじめ民生委員や自治会、介護保険サービスなどに連絡してもらえます。ヘルパーやデイサービスなどの介護保険サービスが不要であるとしても、「地域包括支援センター」と連携を図っておくようにすると安心です。

地域包括支援センターとは、地域の高齢者が安心して生活できるように支援を行う「高齢者の相談窓口」です。介護保険サービスにつなげるだけではなく、必要に応じて家族や地域の民生委員、自治会とも連携を図ります。市町村に問い合わせをして、担当地域の地域包括支援センターを確認しておくようにしましょう。

まとめ

「高齢者の孤独死を防ぐには、離れて暮らす子どもが地域社会との潤滑油になること」。
私はケアマネジャーとして多くの高齢者に関わる中で、地域社会と高齢者をうまくつなげることが慣れ親しんだ自宅で暮らし続ける秘訣だと考えています。
「離れて暮らす親に何もしてあげられない」と抱え込むよりも、地域社会と高齢者の潤滑油になることが孤独死させないためにとても重要です。

「孤独死」の問題がクローズアップされることがありますが、だからといって子どもが高齢者の生活をすべて抱え込んでしまうことは良くありません。それは親の介護問題を重大に考えすぎて、「介護離職」につながると指摘されているからです。

健康に不安があるひとり暮らしの親のことが気がかりになることは間違いありません。「親が孤独死をしてしまうのではないか」と考えてしまうことも無理はないでしょう。しかし地域のネットワークを活用しながら、うまく子ども自身の生活を安定させることが大事だと考えます。

今回の記事では、地域で組織されているネットワークやサービスなどを挙げてみました。
介護保険サービスは一般的なものになってきましたが、地域に関わるネットワークやサービスは意外に知られていません。記事を参考にして、うまく利用していくことをおすすめします。

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