夫婦・家族 親のこと

自宅での生活を希望する両親の介護 遠方に住む子どもにできることとは

kurashino

今、高齢者だけの世帯がどんどん増えています。
厚生労働省が発表した国民生活基礎調査(平成28年)によると、65才以上の高齢者の単独世帯、高齢者を含む夫婦だけの世帯ともに、年々増加していることが分かります。

厚生労働省「家族形態別にみた65歳以上の者の構成割合の年次推移」を基に作図

またそれとは反対に、子どもの家族と同居する高齢者が少なくなっていることも、上記の表から読み取ることができます。

そのような背景のなか、両親の介護問題に直面することがあります。
両親と離れて暮らす子どもの対応は、定期的に実家に通って介護している人、仕事を辞めて単身で実家暮らしを始める人、両親を引き取って同居をはじめる人など、さまざまです。
介護が必要になってきたと同時に、老人ホームなど介護施設を探し出すことも少なくありません。

しかし、私はケアマネジャーの立場としてこのような場面に立ち会ってきて、子どもの想いと両親の想いの違いを感じることが数多くありました。
私の経験を基に、遠方に住む子どもに必要な両親の介護の考え方と対応についてお話します。

遠方に住む子どもに必要な考え方

遠くに住む両親に介護が必要な状態になった時には、「自分が介護しなければいけない」と抱え込んでしまう人が少なくありません。その理由の一端を知れるのが、「介護を理由にした離職」です。最新のデータでは、10万人近い人が介護離職している現状があります。

内閣府「仕事と生活の調和レポート2018」図表3-4-53を基に作図

「介護離職」とは、両親の介護問題に直面した際に、働き続けたいにもかかわらずに介護のために離職を検討したり、実際に離職してしまったりすることを言います。

「介護」を必要以上に重大に捉えてしまう人は、少なくありません。また重大であると考えているわりには職場に相談せずに離職を決断してしまうことが多いのです。しかし、介護保険サービスを利用して自分で抱え込みすぎないことが大切であると考えます。
「お世話になった両親のために介護していきたい」という考えはとても素晴らしいものですが、自分だけで抱え込むのは自分自身の生活を壊してしまいかねません。

また、「介護うつ」という言葉をご存じでしょうか。
介護による身体の疲労だけではなく、精神的にも緊張状態が続いてしまうことがきっかけとなって発症するうつ病のことを指しています。
いつまで続くのか分からない介護生活が不安になり、抑うつ状態や不眠状態が現れます。自分自身がうつ病であるとは気付かずに無理をしてしまい、重度のうつ病となってしまうことも珍しくありません。

現在は介護保険サービスが充実しており、日々の生活のサポートから通院、リハビリなど、希望に沿ったさまざまなサービスを受けることができます。
一見、介護保険サービスは、介護が必要な高齢者のためのもの、と捉えられがちですが、そんなことはありません。

介護保険サービスの考え方に「レスパイト」というものがあります。介護する人がしっかりと休息が取れ、介護疲れが出ないようにするために介護保険サービスを受けてもらうといった考え方です。

介護をする人も健康で安心した生活ができるように、介護保険サービスは用意されているのです。

高齢者の本音「家族に迷惑をかけたくない」

内閣府「平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査」を基に作図

内閣府が発表している統計データによると、「自宅で最期を迎えたい」と考えている人は、全体の54.6%に上る一方、「子どもの家」を挙げる人はわずか0.7%に留まっています。
この結果を見ても、子どもの世話にならずに、自宅で過ごしていたいという意識が伝わってくるのではないでしょうか。

また、この調査にはもう少し踏み込んだ内容のものも存在しています。一例を挙げると、「もし認知症が進行し、身の回りの手助けが必要でかなり衰弱が進んできた場合」、人生の最終段階を過ごしたい場所として、下記のような調査結果が出ています。

内閣府「平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査」を基に作図

この回答を見てみると、介護が必要な状況になれば、介護施設に入所し、介護施設で最期を迎えたいと考えている人が多いことがわかります。

さらに「人生の最終段階について考える際に重要なこと」について調査したデータをご紹介しましょう。

「人生の最終段階について考える際に重要なこと」(上位10項目)

割合(%)

家族等の負担にならないこと

73.3

体や心の苦痛なく過ごせること

57.1

経済的な負担が少ないこと

55.2

自分らしくいれること

46.6

家族等との十分な時間を過ごせること

41.6

信頼できる医師等に見てもらうこと

38.1

人間としての尊厳を保てること

34.0

不安がないこと

31.0

どんなことでも相談できる窓口があること

24.5

馴染みのある場所にいること

23.7

厚生労働省「平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査」を基に作図

このデータは、高齢者だけを対象にした結果ではありませんが、人生の最終段階においては『家族等の負担にならないこと』が最も大事であるといった結果が出ています。

以上からお分かりのように、両親は、子どもが思うほど、子どもに面倒を見てもらおうとは思っていないということです。必要な介護サービスを自ら受けながら、自分らしく過ごしていくことを最も望んでいると言えるのではないでしょうか。

終末期をどう過ごすか~必要な家族間での話し合い

人生の最終段階おける医療について

家族と話し合ったことがある者の割合(%)

詳しく話し合っている

2.8

一応話し合ったことがある

39.4

全く話し合ったことがない

55.9

無回答

1.8

厚生労働省「平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査」を基に作図

冒頭から述べてきたように、人生の最終段階における高齢者本人の想いと子どもの想いとでは、かなり違いがあるように感じられます。
上記のデータからも、その答えが見いだせるように感じます。

人生の最終段階をどのように過ごすかは、関心の高い事項ではありますが、「まったく話し合ったことがない」と答える割合は、過半数を超えています。これは、まったく準備のないまま両親の介護問題に直面し、慌てて対応する人が多いことを示唆しているように感じます。
なお、「まったく話し合ったことがない」理由として、以下のようなデータが出ています。

人生の最終段階おける医療について話し合ったことがない理由

割合(%)

話し合いたくないから

5.8

話し合う必要性を感じられないから

27.4

話し合うきっかけがなかったから

56.0

知識がないため、何を話し合っていいのか分からないから

22.4

その他・無回答

11.8

厚生労働省「平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査」を基に作図

回答は、「話し合うきっかけがなかったから」が最も多いものの、「話し合う必要性を感じられないから」「知識がないため、何を話し合っていいのか分からないから」という回答も一定数存在しています。
ここには、「両親が元気なあいだは、介護問題を具体的に考えることができない」。そんな事情が見え隠れしているのかもしれません。

しかし、高齢者本人が自宅でどのように生活し続け、介護が必要になった場合にはどのような生活を望んでいるかは、早い段階から話し合いを行っておく必要があります。元気に過ごしていても、少しずつからだは衰えてくるものです。
また場合によっては、本当に介護が必要になったときに自分の想いを伝えることができない可能性もあります。

高齢者本人は住み慣れた我が家で生活し続けたいと考えています。また子どもには迷惑をかけないようにしたいと考えているものです。
自宅で生活し続けられるように介護保険サービスを受けられるようにし、必要に応じて介護施設に入所することを検討することが、本人の希望に沿った過ごしかたなのかもしれません。

介護保険サービスの上手な活用方法

高齢者だけの世帯であっても、介護保険サービスを利用し、うまく遠距離介護をしている人も少なくありません。遠距離介護を成功させるには、家族が介護しすぎるのではなく介護保険サービスを適切に活用することが大事です。

そのためには、以下を参考に、まずは介護保険サービスがどのようなものなのか、利用にあたっての仕組みや概要を把握しておくようにしましょう。

介護保険を利用するにあたって、主に関わることになるのが、ケアマネジャーです。
ケアマネジャーは、高齢者本人の想いをくみながら介護保険サービスを導入していきます。介護保険制度においては、高齢者本人の希望に沿った介護保険サービスを、ケアマネジャーに計画してもらうようにします。

介護保険サービスに任せてしまうことは不安があるかもしれませんが、何でも相談していこう」といった姿勢を持つことが大事です。
「遠方に住んでいる」「どのくらい両親に協力することができるのか」といったことをしっかりと伝え、両親のもとに帰省する際にはケアマネジャーと面談できるようにします。

またどうしても帰省できない時には、電話連絡でも構いません。日々の介護保険サービスでの様子などを詳しく伝えてもらえ、今後必要になるサービスや介護施設入所のタイミングなどを相談することができます。
そのような密にやり取りするなかで、ケアマネジャーと信頼関係を結ぶようにしていきます。

介護保険サービスは、介護が必要な高齢者でも安心して生活するためのものです。また離れて暮らす子どもにとっても大事なサービスであるといえるのです。

まとめ

  • 家族に迷惑をかけたくない
  • 自宅に長く住み続けたい
  • 介護が必要になれば施設に入所したい

人生の最終段階おいては、このように考えている高齢者が多いことが分かります。

私はケアマネジャーとして多くの高齢者や家族と関わる中で、介護問題を深刻に捉えすぎないことが大事だ、と考えてきました。介護を重大に考え過ぎることが、『介護離職』や『介護うつ』を生み出すきっかけになるように感じます。
遠方に暮らしているような場合や仕事を抱えているような場合、ケアマネジャーをはじめとする介護保険サービスと情報交換を行っていくようにします。
信頼して介護保険サービスに任せることが、長く遠距離介護を続けていくための秘訣です。

また職場などにも両親の介護について事前に相談しておき、何かあった際には休暇などに協力してもらえるような工夫をしておくことも必要でしょう。遠距離介護は子ども自身の時間を大切にしていかねばならないのです。

そのために冒頭からお伝えしてきたとおり、人生の最終段階おける高齢者本人の想いをしっかりとつかんでおくようにしましょう。その想いを聞いておくことができれば、いざ介護が必要になったときに迷わずに行動できる指針になります。
それが両親の生活だけではなく、子ども自身も安心した生活の継続のために大事なことなのです。

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