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老後も賃貸に住むのはあり?賃貸住宅の魅力とリスク

kurashino

マイホーム購入か、賃貸暮らしを続けるかは人によって意見が分かれるところ。持ち家神話は過去の話となりつつあるのか、近年ではあえて賃貸暮らしを望む人も増えてきているようです。しかしながら、労働収入のあるうちは家賃を払い続けるのもいいですが、老後も賃貸で暮らすとなれば、お金の面を中心に多くのリスクが考えられます。
老後に賃貸暮らしを続けることでどのようなメリットとデメリットがあるのかを考えながら、定年までの期間にリタイア生活における住まいについての対策を取っていきましょう。

老後の賃貸暮らしの状況

老後の賃貸暮らしの是非を問う前に、まずは現在のリタイア層の人たちの居住形態の現状を確認してみましょう。
総務省の「平成30年住宅・土地統計調査/住宅及び世帯に関する基本集計」によると、現在「持ち家」に居住している高齢者夫婦世帯は542万3,500世帯です。対して「借家」に居住している高齢者夫婦世帯は73万6,800世帯となっており、高齢者夫婦世帯の12%が賃貸暮らしという状況です。(※1)
家計を主に支える人の年齢を分けずに全体で見た場合、賃貸暮らしの世帯は全世帯の約37%ですから、リタイア層では賃貸暮らしの世帯割合は少なくなることがわかります。

総務省「平成30年住宅・土地統計調査/住宅及び世帯に関する基本集計」を元に作図

一方で、借家暮らしをしている世帯の状況を、「家計を主に支える人」の年齢別に見てみると、老後に借家暮らしをしている人の数は決して少なくありません。一般的にマイホームを購入する人が多い40代以降、年齢が進むにしたがい借家世帯の数は少なくなっているものの、80歳までは極端に減少しているわけでもないことがわかります。また80歳以上でも約84万世帯が借家で生活している状況です。

総務省「平成30年住宅・土地統計調査/住宅及び世帯に関する基本集計」を元に作図

賃貸暮らしのメリット

国土交通省が提供している住宅関連データを見ると、住み替え後の居住形態として「借家」を希望する人の割合が増えてきているようです。この傾向は現在賃貸暮らしの人に多いようですが、現在持ち家に住んでいる人でも住み替え後は借家暮らしを望む人が増えてきている様子を見ると、持ち家志向が低下しているとも考えられそうです。

国土交通省「平成30年度 住宅経済関連データ」 3.住宅に関する国民の意識/今後の居住形態及び住み替え方法」を基に作図

賃貸派が増えてきている様子を見ると、賃貸暮らしに魅力的なメリットがあるのだろうと思ってしまいますね。そこでまずは、賃貸の主なメリットを挙げてみましょう。

住宅ローンがない

何といってもローン返済の必要がないことは大きなメリットでしょう。一般的に住宅ローンは20年、30年と返済期間が長く、精神的にもずっしり重みを感じるものです。また、自然災害が頻繁に起こり、その規模も大きくなってきている昨今では、ローンを返済中の持ち家が大きな損害を被る事例を見聞きすることも多くなってきています。家賃とローンの月額返済額が同程度だとすると、過去にはマイホームを購入するほうがお得と考える人が多くいたようですが、最近では賃貸のほうが、気持ちが楽だと思うようになってきているのかもしれませんね。

固定資産税・土地資産税の負担がない

住宅購入後には毎年に「固定資産税・土地資産税」の支払いが発生します。賃貸ではこれらの諸税はかかりませんから、金銭的に賃貸のほうが負担がなく、楽と言えそうです。

ライフスタイルの変化に合わせて住み替えしやすい

人生100年時代と言われるほど私たちの一生は長くなりつつあります。その間にはライフスタイルの変化で居住地域を変える必要や、必要な部屋数・間取りが変わって住み替えを検討することも多々あるでしょう。老人ホームへの入居を考えるようになるかもしれません。持ち家がある場合、売却や新たな購入、または自分の家を賃貸に出す方法がありますが、ローン金利や買値・売値の損得、売買にかかる税金や諸費用を考えると、簡単にはいかないことも多いものです。このような手続きのない賃貸は住み替えが簡単ですね。

老後に賃貸暮らしをするリスク

賃貸暮らしにはデメリットもあります。老後に賃貸暮らしを続ける上でのデメリットやリスクを考えてみましょう。

経済的なリスク

老後に一番のリスクとなり得るのは家賃負担の問題でしょう。老後は家賃の安い物件に住み替える場合でも、家賃の負担は一生続きます。仮に家賃が月6万円、老後生活期間を30年と考えると、6万円×12ヶ月×30年=2,160万円かかります。また、賃貸の場合は更新がありますから、2年ごとに更新料と火災保険も見積もっておかなければなりません。仮に更新料を家賃の1カ月分、火災保険を1万円と仮定すると、(6万円+1万円)×15回=105万円。合わせて2,265万円が老後の住居費になります。

老後生活資金2,000万円問題が話題になりましたが、実はこの2,000万円には住居費はほとんど含まれていません。というのも、この2,000万円の計算根拠として用いられる総務省の「家計調査報告 平成30年」(※2)では、住居費は平均13,625円、家計支出に占める割合はわずか5.8%という状況です。このデータを詳しく見ていくと、高齢無職世帯の持ち家率は93.3%となっており、2,000万円の計算対象になっているほとんどの世帯が持ち家居住、かつ住宅ローンも完済し、住居費がほとんどかかっていない夫婦であることが推測できるのです。
つまり、老後に賃貸暮らしを続ける場合には、別途住居費を合わせた老後資金を貯蓄しておくことが必要で、ここであげた例であれば、4,265万円(2,265万円+2,000万円)をリタイアまでに準備しておくことが望まれます。

居住に関するリスク

賃貸物件には一般的に契約更新があることは前述しましたが、金銭的な問題以外に退去を求められるリスクも考えられます。家主から退去を申し出る場合には、賃借人が次の住居を探す期間を設けるために事前に申し出るべき期間が法律で決められています。しかし年金生活となった高齢者の場合、入居を断られるケースもあると聞きます。考えたくはないことですが、老後に住む場所を失ってしまう不安もあることも知っておきましょう。
これらのリスクを懸念してなのか、実は高齢者夫婦世帯に絞って見てみると、老後に借家暮らしをしている世帯は大きく減少しています。
先ほど、家計を主に支える人の年齢別に借家暮らし世帯の状況を見ましたが、60歳以上の世帯(緑色)のうち、高齢者夫婦世帯(オレンジ色)がどれだけあるかを示したのが次のグラフです。

総務省「平成30年住宅・土地統計調査/住宅及び世帯に関する基本集計」を基に作図

この状況から推測できるのは、老後に賃貸物件に住む場合、夫婦だけではなく子ども家族などと同居する人が多いのではないか、ということです。仮に生活費の多くを高齢者夫婦が負担するとしても、家賃をはじめ家計を子ども達と分担しているのかもしれません。また、賃貸契約を子ども名義で結ぶことで入居審査にも通りやすくなるでしょう。

老後の住まいへの対策はお早めに

老後も賃貸暮らしを続けるかどうかは個々人の希望や考え方によるところが大きく、住まいの選び方に正解はありません。しかし、さまざまなリスクを考えると、リタイア生活に入ってしまってから選択を考えるのではなく、リタイア前にあらゆる選択肢をじっくり考え、対策を取っておくことが大切です。たとえば、子ども家族と同居するのもひとつの対策です。その場合でも、あらかじめ子ども達と話し合っておくことが大切でしょう。
夫婦だけで住む場合、老後暮らしの生活費を全般的に低く抑える対策も必要でしょう。たとえば、現在首都圏に住んでいる人は、地方へ移住することで家賃を含めて生活費を下げることができるかもしれません。リタイアまでにいくつか希望の地域を見て回り、家賃相場や地域の物価を調べておくことが必要です。

高齢者向けの賃貸住宅へ引越しする方法もあります。床の段差や手すりの設置など、高齢者の使いやすさに配慮した住宅で、入居時の礼金や不動産業者への仲介手数料、また更新料が不要です。また、一定条件を満たせば家賃軽減を受けられることもあります。ただし、物件のある地域が限られていることや、申込みは抽選で行われるため必ずしも希望どおりにならない可能性もあります。申込みに関する条件もありますので、事前に調べておくことが必要です。
老後の家賃だけで2,000万円以上かかるようなケースでは、小さなマンションを購入するのもひとつの対策かもしれません。段差や手すりの設置など、購入に合わせてあらかじめリフォームしておけば後々の予期せぬ出費を抑えることを期待できそうです。ただし購入の場合には、定年後にローンが残らないよう返済計画をきちんとしておくことが大切です。また、マンションの場合には管理費・修繕積立金などさまざまな諸費用もかかりますから、入念な資金計画を練っておくことも重要です。

老後の暮らしは持ち家派でも賃貸派でも不安が多いのが実情です。できるだけ早いうちから住まいへの対策を取り、安心できるリタイア生活を目指してくださいね。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1 総務省「平成30年住宅・土地統計調査」 第40表 世帯の種類(3区分),家族類型(25区分),家計を主に支える者の年齢(14区分),住宅の所有の関係(6区分)別普通世帯数(高齢夫婦世帯数,65歳以上の世帯員のいる世帯数―特掲)-全国,都道府県, 21大都市
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031865739&fileKind=0

※2 総務省「家計調査報告/家計収支編(2018年(平成30年)平均結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2018.pdf

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