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老後に海外移住するメリットとデメリットを知り、理想の暮らしを実現しよう

kurashino

人生100年時代といわれるようになった昨今、老後に不安を感じる人は多いことでしょう。中でも定年が迫りつつある50代では約8割が「不安がある」(※1)と答えています。不安の理由は「老後の生活設計」「健康」「住まい」に関することが多く、その不安を解消し、理想の暮らしを実現することを期待して物価の安い海外で老後を過ごすことを考える人が増えています。
多くの人が不安を感じる「老後の生活設計」「健康」「住まい」は、老後生活資金の問題に直結しますから、物価の安い国への移住はこれらの不安を低減するうえで検討の余地がありそうです。一方で、住み慣れた日本を離れ、海外で生活することにはさまざまなリスクもあるものです。
そこで、今回は高齢者の海外移住の現状を確認しながら、実際に海外に在住しているファイナンシャルプランナーの筆者が、老後に海外移住することのメリットとデメリットをお金の面から紹介します。老後の生活設計の一助になれば幸いです。

日本人がロングステイしたい国は?

リタイア後の生活の地を検討するとき、「暮らしやすさ」を重視するのは国内でも海外でも同じです。暮らしやすさと言ってもさまざまな基準がありますが、海外に居住の地を求めるなら、"多くの日本人が住んでいる"ことは注目したい基準のひとつです。

一般社団法人ロングステイ財団の調べによると、ロングステイを希望する日本人が最も多い国は、「マレーシア」、次いで「タイ」「ハワイ」「フィリピン」「オーストラリア」と続きます。

ロングステイ希望国・地域トップ5

 

1992年

2000年

2006年

2010年

2016年

2017年

2018年

ハワイ

オーストラリア

マレーシア

マレーシア

マレーシア

マレーシア

マレーシア

カナダ

ハワイ

オーストラリア

ハワイ

タイ

タイ

タイ

オーストラリア

ニュージーランド

タイ

タイ

ハワイ

ハワイ

ハワイ

アメリカ西海岸

カナダ

ニュージーランド

オーストラリア

台湾

台湾

フィリピン

ニュージーランド

スペイン

ハワイ

カナダ

フィリピン

フィリピン

オーストラリア

一般社団法人ロングステイ財団「ロングステイ希望国・地域2018」のデータを基に作図

ひとくちにロングステイと言っても、駐在、海外起業、留学、悠々自適なリタイア生活など、さまざまな滞在スタイルがあるものです。滞在スタイルや理由が違えば、移住先や移住している年齢層も異なります。そこで、上位5つの人気国にはどのくらいの数の日本人高齢者が住んでいるのか、外務省の「海外在留邦人数調査統計(2018年)」で確認してみましょう。

外務省「海外在留邦人数調査統計(2018年)」を基に作図

ロングステイ人気上位5カ国のなかで、日本人が多く住んでいる国は、「オーストラリア」や「タイ」であることが分かりました。しかし、これは全世代を合わせた日本人在留者の数ですので、現役世代のうちから移住し、そのまま老後を迎えた人が含まれているとも考えられそうです。
そこで、50代、60代以上の在留者数を比較したのが、下記のグラフです。

これを見ると、定年以降の移住先として選ぶ人が多い(50代よりも60代以上の在留が多い)のは、割合でみると、「フィリピン」や「ハワイ」だと言えるのかもしれません。

海外移住のメリット

「老後2,000万円問題」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。年金が主な収入源となる老後生活では一般的に数千万円の資金の準備が必要とされるものです。そこで物価が安い国(地域)に住み、日本での生活費よりも低く抑えることができれば、準備すべき老後の生活資金も少なくて済む可能性があります。これは経済的なメリットと言えるでしょう。

たとえば、60歳以上の日本人在留者が多いタイの例で見てみましょう。

先に見た国(地域)の中でも東南アジア諸国は、日本よりも物価が安く、タイ(チェンマイ)でのシニア夫婦の1カ月の平均的な生活費は、日本円に換算して15万円前後と言われています(1バーツ=3.5円として計算)。日本の平均的な生活費として総務省のデータを参考にすると、高齢夫婦の無職世帯の消費支出額は、1カ月当たり約24万円(※2)ですから、9万円近く少なくて済む計算になります。

また、高齢夫婦の無職世帯の可処分所得は約19万4,000円(※2)であり、日本の老後生活では月々4万2,000円の貯蓄取り崩しが必要と算出されていますが、タイの生活では4万円前後の余剰資金ができる計算になります。ときどき日本に帰国する費用も用意しておきたいと考えると、老後に貯金ができる可能性もあるのは大きなメリットと言えますね。 

そのほか、人気上位国は温暖な地域が多いことからも分かるように、気候的に住みやすい場所を選べるのも海外移住のメリットのひとつでしょう。ヒトは年齢を重ねるごとに耐寒性が弱まる傾向にあるので、年中温暖な地域に住めば、老後の健康に関する不安感もやわらぐかもしれません。

海外移住の注意点

一方で、生活費に関してはメリットばかりではなく、リスクもあることは知っておかなければなりません。たとえば、物価上昇リスクがそのひとつです。
東南アジアには継続的な経済成長をしている国が多くあります。たとえば、移住先として人気のフィリピンの物価上昇率は5.2%(2018年)、レーシアは、3.7%(2017年)という状況です。
現在は日本よりも生活費を安く抑えることができても、数年後には物価が上がり、日本の年金だけで悠々自適な生活ができなくなるリスクもあることを想定しておきましょう。

 外務省データ「物価上昇率」を基に作図。
フィリピン共和国
タイ王国
マレーシア ※2018年データなし

・ビザ取得には経済条件がある
一般的に海外に長期滞在するためにはビザが必要です。どの国もビザの種類はさまざまですが、リタイアメント制度のビザでは経済証明が必要となるのが通常です。中には経済的なハードルが高めの国もあります。生活費の安さばかりに注目し、老後資金の準備を怠っているとビザの取得ができないリスクがあります。アジア3カ国のビザ申請に必要な経済条件は次の通りです。

ビザの種類

経済条件

タイ

ノンイミグラント-O-Aビザ

(ロングステイ)

いずれかひとつを満たすこと

・年金は月額65,000バーツ(約227,500円)以上の受取りがある

・預金残高が80万バーツ(約280万円)以上ある

・年金と預金残高合算で80万バーツ(約280万円)以上ある

マレーシア

長期滞在ビザMM2H

(50歳以上が対象)

・35万リンギット(約945万円)以上の財産証明と月額1万リンギット(約27万円)以上の収入証明または年金証明がある

・仮承認後、上記財産のうち15万リンギット(約405万円)をマレーシアの金融機関に預け入れること

フィリピン

SRRビザCLASSIC

(50歳以上が対象)

・夫婦の場合、フィリピンの金融機関に1万USドル(約108万円)以上の銀行預金を入金かつ月額1,000 USドル(約108,000円)以上の年金受取りがある

または

・フィリピンの金融機関に2万USドル(約216万円)以上の預金預け入れること

在東京対応国大使館ウェブサイトマレーシア政府観光局ウェブサイトフィリピン退職庁ウェブサイトの情報を基に作成
(注)タイ1バーツ=3.5円、マレーシア1リンギット=27円、1USドル=108円で換算

ビザの種類はここで紹介したもの以外にもあります。該当国の大使館で必ず確認するようにしましょう。

老後の理想の暮らしとは?

国は違えど筆者も海外在住15年近くになりますが、海外生活するうえで感じる不便さやリスクは多々あります。たとえば、病気になったとき。日常生活やビジネスでは問題なく現地の言葉でコミュニケーションができても、医者にかかるときなどは知らない言葉も多く、不安に感じるものです。
食べ物に関しても、長く生活するうえではリスクとなり得ます。年を取るごとに食べ物の嗜好が変わってくる傾向がありますが、外国に住んでいれば日本食が食べたくなるものです。世界中の多くの国で日本食は食べられますが、価格は日本の数倍するのが通常です。
また、宗教の違いによっては禁止されている食材もあります。自分には関係なくても、周りの人たちが食べられない中、自分も我慢せざるを得ない状況になることもあります。
若いときには異国の文化を受け入れやすいものですが、年を取るごとに日本との違いに対する適応性が低くなりがちです。実際に住んでから困ることのないように、リタイアする前に何度か現地を訪ね、現地情報を肌でつかんでおくことが大切でしょう。

人それぞれの適応性や家族事情などにもよりますが、老後の理想の暮らしは日本と物価の安い国の両方をときどき行き来する暮らしではないかと思います。
実は先に紹介した外務省の在留者データはあくまで在外公館への在留届提出者がベースで、「3カ月以上」滞在している人の数。必ずしも、これだけの人が「海外移住」しているとは限らず、定年後に自分へのご褒美として、ゆったり時間を取って"外国に3カ月以上の滞在をしているだけ"かもしれません。

定年後に海外移住してしまうのではなく、終の棲家は日本に置いておき、まずはお試しロングステイをしてみるのがおすすめです。

※「令和2年度平均年収と学歴調査

※1  日本FP協会「世代別比較くらしとお金に関する調査2018」
https://www.jafp.or.jp/about_jafp/katsudou/news/news_2018/files/newsrelease20181105.pdf

※2 総務省「家計調査報告/家計収支編(2018年(平成30年)平均結果の概要」表1 二人以上の世帯のうち高齢無職世帯の家計収支 -2018年-
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2018.pdf

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