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両親の介護は子どもがするべき?後悔しない選択とトラブル回避のコツ

kurashino

両親に介護が必要になったとき、どのように両親をサポートしていけばよいのでしょうか。
両親が安心して暮らしていけるようにできるだけフォローしたい気持ちはあるけれど、自分の家族に負担や迷惑をかけるのは忍びない――そのように思っている人が大半かと思います。介護の方法にはさまざまな選択肢がありますが、この選択を誤るとのちに家族間の不満やトラブルを招くことにもなりかねません。

この記事では、介護は誰がどのように担っていくのかをみながら、介護の手段やトラブルを避ける方法をお伝えします。両親と自分たち家族がともに幸せに暮らしていくために、介護の大切なポイントをしっかり押さえておきましょう。

親の介護は誰が担っている?

家族に介護が必要になったとき、いったい誰が介護を担うことになるのでしょうか。
厚生労働省のデータによると、介護を担うのは「同居」の親族が約6割と最も多く、主な内訳は、「配偶者(25.2%)」「子(21.8%)」「子の配偶者(9.7%)」となっています。別居の家族もまた1割強が担っており、その比率は以下のとおりです。

厚生労働省「国民生活基礎調査の概況 平成28年」図 35 を基に作図

なお、同居して介護をしている人は、男性34%、女性66%となっています。これらのデータから、介護はまず同居している配偶者や子どもが深くかかわっており、なかでも女性が担うケースが多いことがうかがえます。

現在は、昔にくらべて兄弟姉妹の数が少ないため、誰かひとりに介護の負担が集中してしまうケースも多く、親の介護問題はきょうだい間でも常にトラブルの種です。ましてや、父親や母親と同居していれば否応なしに介護せざるを得ないのは避けられない、ともいえるでしょう。とはいえ、なかには要介護状態であっても介護保険サービスを利用しながら自宅でひとり暮らしをしている高齢者も少なくありません。家族が介護をする場合も、本人がひとり暮らしを続ける場合も、介護計画を立てていく際に欠かせないのが、「介護保険の利用」です。

そこで、まずは介護保険とはどういうものなのか、どんなサービスをどの程度受けられるのかを、わかりやすく説明します。

介護保険の中身を知っておきましょう

介護保険とは?

介護保険とは、「高齢者の介護を社会全体で支援する制度」のことですが、その仕組みは少々複雑です。まず、その人にどのくらいの介護が必要なのかを専門機関が判定し、その介護度に応じて給付額が決まります。給付額の範囲内であれば、利用者はかかった費用の1~3割の負担でサービスを利用することができます。介護サービスを提供する民間企業もありますが、その場合は利用者が料金の全額を支払わなければならないため、負担の軽い介護保険は、ぜひ活用したいものです。介護はさまざまなシーンでお金がかかるため、介護保険をうまく利用して出費を抑えるのが得策です。
サービス利用料の「自己負担割合」は、個人の所得額に応じて決まります。自分がどの割合に該当するのかは、毎年6~7月に市区町村から交付される「負担割合証」で確認できます。

厚生労働省の資料を基に作図

介護保険の利用条件

介護保険を利用できるのは、以下に該当する人です。

  • 第1号被保険者......65歳以上の人
  • 第2号被保険者......40~64歳で医療保険に加入している人

65歳以上の人は、要介護認定が下りれば誰でも介護保険を利用することができます。ただし、40~64歳の第2号被保険者の人は、末期ガン、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症といった「老化に起因する疾病」で、要介護認定を受けた場合のみ利用が可能です。

厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成30年」16ページの表を基に作図

どんなサービスが利用できる?

介護保険のサービスには、ヘルパーに自宅訪問を依頼し、食事介助や入浴介助をしてもらう「訪問介護サービス」や、要介護者が施設へ出向く「デイサービス」「ショートステイ」などが一般的です。
デイサービスとは、朝から夕方までの時間を施設で過ごし、入浴・食事・機能訓練・レクリエーションなどを受けられるサービスのことです。一方、ショートステイは「短期入所生活介護」ともいい、1週間程度の短期間(連続利用は30日まで)を施設で過ごすサービスのことです。
ほかにも訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、住宅改修費支給など、さまざまな場面で介護保険を利用してサービスを受けることができます。

介護保険は積極的に利用するべき

高齢者の中には、ヘルパーなど他人の手を借りることに抵抗を感じる人も多く、介護現場では介護拒否といったトラブルが発生することもめずらしくありません。ですが、認知症になったり、からだに麻痺が生じたりして要介護度が上がるにつれ、本人のみならず介護をする側の肉体的・精神的負担も増していきます。そのため、家族だけで介護を担っていくのは想像以上に過酷です。その点、介護保険サービスの利用には、以下のようなメリットがあります。

  • 介護技術やノウハウを熟知した専門スタッフに介護してもらえる
  • 日々のバイタルチェックなどで異変があればすぐに対応してもらえる
  • 介護者の肉体的、精神的、時間的負担を軽減できる
  • 介護離職を防げる
  • 気になることがあれば、専門知識を持ったプロに気軽に相談できる

このように、介護保険サービスの利用は、介護を受ける側・担う側の双方にとってプラスになる面がたくさんあります。本人があまり気乗りしていない様子でも、もしも日常生活に困難を感じているのであれば、一度「市区町村の担当窓口」や「地域包括支援センター」へ相談してみてください。特に地域包括支援センターには、介護に精通しているケアマネジャーや社会福祉士が在籍しており、介護を希望する本人や家族からのさまざまな相談に乗っています。彼らに日ごろの悩みや不安に思っていることを相談すれば、プロ目線からのさまざまな生活のアドバイスや今すぐ利用できるサービス、いざというときの対処法など役に立つ話を聞くことができるでしょう。

在宅介護と施設介護のメリット&デメリット

介護は大きく「在宅介護」と「施設介護」に分かれます。それぞれのメリットとデメリットをみていきましょう。

在宅介護の場合

老後もずっと住み慣れた家で過ごせることは、本人にとって最大のメリットになります。好きなテレビやラジオを楽しんだり、庭に植えた草花の成長に癒されたり、また長い付き合いのあるご近所さんの存在も励みになったりするでしょう。ただ、在宅介護の大きなデメリットが家族の負担が増してしまうことです。要介護度が上がれば上がるほど介護者の余裕も減っていき、中には介護のために仕事を辞めざるを得ない状況に陥ってしまう人もいるほどです。

【在宅介護のメリット】

  • 本人が住み慣れた家で過ごせる
  • 生活リズムや食事内容など、自由度が高く自分のペースで暮らせる
  • 施設に比べて費用が安く済むケースが多い

【在宅介護のデメリット】

  • 介護を担う側の精神的・肉体的ストレスが増す
  • 緊急時の対応が遅れることがある
  • 安全面や介護のしやすさを優先するため、部屋のリフォームが必要になる場合がある

施設介護の場合

施設に入居すると、介護スタッフによる質の高いサービス、栄養バランスのよい食事、緊急時の素早い対応など、安全面で多くの利点があります。また、介護者の負担を軽減できる点も重要なポイントですね。その反面、初めての場所で見知らぬ人たちに囲まれて暮らすことや、生活の自由度が低くなることに、最初のうちはストレスを感じる人も多いかもしれません。また、高い入居費用がネックになるケースもあるでしょう。

【メリット】

  • 介護のプロにお世話してもらえる
  • 日々のバイタルチェックや緊急時の対応など、医療従事者がいるので安心
  • 介護者の精神的・肉体的・時間的負担が軽減できる

【デメリット】

  • 費用の負担が大きい
  • 環境が変わることで本人がストレスを感じるケースがある(場所や人に馴染めない・自由に生活できない)

在宅と施設、どちらがいい?

在宅介護と施設介護は、お互い長所と短所があり、一概にどちらの方がよいとはいえません。厚生労働省の調査を基に、この問題を考えてみましょう。

調査によると、自身が望む介護の姿として「家族に依存せずに生活できる介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい(37.4%)」が最も多くなりました。「自宅で家族中心に介護を受けたい(18.6%)」「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい(17.5%)」を合わせると、7割以上が自宅での介護を望んでいることがわかります。

厚生労働省「平成 27 年度 少子高齢社会等調査検討事業報告書高齢社会に関する意識調査」図 2-2-27 を基に作図

また、内閣府の調査を見ても、からだが虚弱化してきたときに住みたい場所として「自宅」を挙げる人は半数以上にものぼり、自宅での介護を希望する人の多いことがわかります。

内閣府「平成30年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」図表2-2-15-1を基に作図

続いて、介護状態になった場合の不安要素を見てみましょう。
内閣府の調査によると、「家族に肉体的・精神的負担をかける」ことを不安視する人が、50.6%にのぼっています。

内閣府「平成29年高齢者の健康に関する調査」図表 2-2-6-1を基に作図

その一方、介護を依頼したい人は「配偶者(36.7%)」「子(22.7%)」と家族を挙げる人が約6割を占めています。ここからは、「家族に迷惑はかけたくない。でも、お願いしたい」という複雑な心境が読み取れます。

内閣府「平成29年高齢者の健康に関する調査」図表2-2-7-1を基に作図

介護方法の決め手は? 優先すべきこと

介護の方法を決めるには、「本人の要介護度」「本人の希望」「子ども世帯の希望やライフスタイル」などを考え合わせ、家族でよく話し合って決めることが重要です。本人が心地よく感じられる環境で過ごすことはとても大切ですが、そのために誰かに一方的に負荷がかかるような選択は望ましくありません。子ども世帯にも生活があり、とくに働き盛りの世代であれば介護にかける時間を捻出するのが難しいケースも多いでしょう。とはいえ、本人の希望は今後の介護計画を立てるうえで欠かせない情報です。お互いにとってベストな選択をするために、ぜひ一度じっくりと本人の本音を聞く機会を設けましょう。

まとめ

「両親の介護は子どもがするべきか否か」の問題については、できるだけ本人たちの希望に沿いながらも、介護保険を利用して適切なサービスや情報提供を受けつつ、自分たちの可能な範囲で両親をサポートしていく、というのが現実的といえるでしょう。どちらの希望も尊重しつつ、双方によってよりよい道を選べるよう早いうちから親御さんの希望を聞いたり、介護に関する情報収集をしたりと、将来の介護に少しずつ備えていきましょう。

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