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仕事を辞めない選択肢がある! 家族介護者が自分の人生を生きるために

kurashino

現在、働く介護者は346万3千人いるといわれ、年齢階級別では50~60代がその多くを占めています(※1)。

総務省統計局「平成29年就業構造基本調査 結果の概要」表I-6を基に作図

2025年には、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり、65歳以上の4人にひとりは介護が必要になるといわれています。一方で少子高齢化が進む中、現役世代は減少し、子どもひとり人当たりの負担は増える傾向にあると考えられます。
このような状況で家族介護者は、どのように仕事と介護を両立し、自分の人生を生きていけばよいのでしょう。

ご自身も介護離職の経験があり、現在も母親の介護をしながら介護離職についての啓蒙活動を行う、一般社団法人介護離職防止対策促進機構 代表理事・和氣美枝さんにお話を伺いました。

家族介護者が、自分の人生を最優先に考える

和氣さんは家族介護者にこそ「自分の人生を最優先に考えてほしい」と言います。その理由は大きく2つ。ひとつは、介護する側が幸せでないと、介護される家族も幸せになれないから。

「介護は"自立を目的とした生活支援"です。では、生活支援とは何かというと、食べる、歩くなどの行動支援以外に、QOL(生活の質。肉体的だけでなく精神的、社会的にどのようにその人らしい生活を送るかという人生の内容)を上げることがあります。
要介護者が笑顔で安全な生活を送ることでその人のQOLは安定します。そのために何が必要かというと、私たち家族介護者が笑顔で安全な生活を送ることなんです。
母との暮らしの中で、私が笑顔でなければ母は笑いません。私が幸せな生活を送らなければ、母も幸せにはならないんですよね」と和氣さん。

それは介護をする人の感情が介護される側に伝わるということだけではありません。介護ストレスの怖さがそこに潜んでいるのです。

「目の前に生活に困った親がいれば、家族は生活の軸を親にして考えてしまいます。でも、それで生きにくさを感じたり、強いストレスを感じたりするのであれば、一回立ち止まってほしい。そうしないと、事件事故という最悪なケースに発展してしまいます、それが介護の怖いところです。だから一回立ち止まって、自分が笑っていないといけないんだってことを思い出してほしいんです。自分が笑っていられる状態というのは、自分の人生をちゃんと生きられているということ。だからこそ、自分の人生を最優先に考えてください、ということをお伝えしています」

そしてもうひとつの理由が、介護者のことを考えられるのは当事者だけだから。

「介護というと、どうしても要介護者が中心の考え方になります。介護が必要な人のための支援なので、それは当然です。ケアマネジャー(※)や医師、ヘルパーなどが要介護者を支援しますし、そのために介護保険サービスがあります。
私たち家族介護者はどうかというと、公的なセーフティネットがありません。でも、親だけでなく、私たちにも人生があります。心身を含めて自分の人生は自分で守らなければなりません。自分の人生を考えられるのは自分だけなのです」

※ケアマネジャー......正式には「介護支援専門員」という介護専門職。支援が必要な人やその家族の相談に応じ、サポートのためのマネジメントを行います。

仕事と介護を両立するなら、会社に報告しましょう

自分の人生を最優先に考えるうえで、重要になってくるのが"仕事"の存在です。家族の介護をすることを会社に報告すると冷遇されるのではないか、出世から外れてしまうのではないか、と不安になってなかなか言い出せないケースもあります。しかし「仕事と介護を両立するためには、会社に報告したほうがいい」と和氣さん。なぜなら、会社に報告をしないことで、これまでに培ったキャリアが傷つく可能性があるからです。

「介護が始まったばかりの段階は、さまざまなところから呼び出しや連絡があります。そのため仕事の合間に電話をしなければいけなかったり、会社を抜け出さなければいけなくなったります。しかし会社に自身の状況を報告しないで、このような行動をしていたらどうでしょう。理由を知らない上司や同僚から見たら、勤務態度の悪い人になってしまいますよね。私の友人は、実際にこのようなケースで部署を異動になりました」

また、会社に報告することで受けられる支援があります。

「育児・介護休業法で介護休暇を取れるのはもちろん、会社により独自のサポートをしている場合があります。会社は支援したくても、従業員の状況を知らなければ何もできません。使える制度を知るためにも会社には報告したほうがよいと考えます」

育児や介護で取得できる休暇等を定めた「育児・介護休業法」では、半日単位で取得できる休暇が5日間、計10回まで取得でき、介護が必要な家族ひとりにつき通算93日まで仕事を休むことができる(年間3回までの分割取得可)などの制度があります。しかし総務省の調査(※2)では、家族介護者の6割以上が介護休暇・介護休業の制度の認知がない、というデータが上がっています。こうした公の制度も、会社独自のサポートも、会社に報告することでそれを知るきっかけになります。

そして、会社に報告することのもうひとつのポイントは、 "周囲に介護をしていることを隠している"というストレスから解放されることです。

「介護が始まるとこれまでの生活が一変し、想像以上のストレスがかかります。これに加えて会社でもストレスを抱えることは大きなリスクです。余計なストレスから解放されるためにも、会社に報告することをおすすめします」

また、社内に介護経験者がいたら、積極的に情報交換をしてほしいと和氣さん。

「介護経験者って貴重なんです。社内で介護経験者がいたら情報を得られますし、後々、自分自身が介護者となったほかの同僚の助けになることもできます。あなたの経験が必ず誰かのためになるのです。介護を経験していることの価値を認識してもらえたらと思っています」

※「令和2年度平均年収と学歴調査

出典

※1 総務省統計局「平成29年就業構造基本調査 表Ⅰ-6 男女,就業状態,従業上の地位,年齢階級別介護をしている者及び割合-平成 29 年」
http://www.stat.go.jp/info/kenkyu/roudou/h30/pdf/12giji2_3007.pdf

※2 総務省 平成30年「介護施策に関する行政評価・監視-高齢者を介護する家族介護者の負担軽減対策を中心として-」 P1

http://www.soumu.go.jp/main_content/000557612.pdf

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