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パニックに陥って介護離職しないために、知っておくべき2つのこと

kurashino

「介護離職」という言葉をご存じですか?
介護離職とは、家族の介護をするうえで仕事との両立が困難になり、仕事を辞めることをいいます。内閣府がまとめた「仕事と生活の調和レポート2018」(※1)によると、2016年10月から2017年9月のあいだに、介護・看護のために転職、離職した人は99万1千人に上ります。介護を担う中心世代は60代ですが、40代50代の働き盛りの世代も多くの人が関わっています。介護離職は当事者だけでなく、企業にとっても大きな痛手です。

内閣府「仕事と生活の調和レポート2018」図表3-4-53を基に作図

介護離職をすると、精神的にも物理的にも負担が増えます。
まず、収入が絶たれるため経済的な負担が増えます。そして仕事を辞めることで外出の機会が減ります。すると外の世界とのつながりが希薄になり、自分の世界に閉じこもりがちになります。また経済的な不安があるために介護サービスの利用を控え、毎日、介護に向き合う時間が長くなり、肉体的にも精神的にも負担が増えていくのです。
介護は1年なのか、10年なのか、いつまで続くのかはわかりません。いざ再就職を、と思っても、50代、60代で再就職先を見つけることは容易ではありません。

仕事と介護を両立するためにはどうすればよいのでしょう。
ご自身も介護離職の経験があり、現在も母親の介護をしながら介護離職についての啓蒙活動を行う、一般社団法人介護離職防止対策促進機構 代表理事 和氣美枝さんにお話を伺いました。

あらかじめ知識をつけることで選択肢を増やす

「介護離職をする原因は人によりさまざまですが、介護者(介護をする人)にとって最大の不幸は"選択肢が見えなくなること"です。選択肢が見えないから、介護離職してしまうのです」と和氣さん。

介護は一般的に、体力的にも精神的にもキツイ、大変なものだというイメージがあります。そのため、親に介護が必要になった時にパニックに陥ってしまい、「仕事を辞めるしかない」と思い込み、離職に陥るケースが多いのです。

たとえば、母親が脳梗塞で入院し、退院後は車イスでの生活を余儀なくされたとします。退院後の生活は病院が準備してくれるわけではありません。医師は家族に助言をしてはくれますが、準備をするのは家族自身です。それを知らないと、「1週間後に退院してください」と通達を受けてから困惑することになります。
介護のためにたびたび仕事を休むことで「職場に迷惑をかけているのでは」と悩んだり、介護は家族が担うものだからとひとりで抱え込んだりして、仕事を辞めてしまうのです。
このパニックは、介護に関する知識のなさが要因のひとつです。

「人は誰しも、いずれは自立した生活を営めなくなります。その時期が突然訪れる人もいれば、徐々にそうなる人もいますし、部分的に助けが必要な人もいれば全体的に必要な人もいます。できなくなったことに対してどのような社会資源(サポート)があるか、をあらかじめ知っておくことが大切です。そのひとつが、介護保険です」(和氣さん)

介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして2000年に始まった社会保険制度のひとつ。自立した生活を営むため、ホームヘルパーやデイサービスなどの支援を受けられます。40歳以上に保険料の支払い義務があります。
サービスを利用できるのは65歳以上の要介護・要支援の人だけでなく、40~64歳の医療保険加入者で、がんや関節リウマチなどの加齢に起因する特定疾病による要介護、要支援が必要な人も対象者です。
サービスを受けるには当事者やその家族の申請により要介護認定を受ける必要があり、要介護1~5、要支援1~2の7段階ある要介護度に応じて受けられるサービスが変わります。

「例えば、『うちの親はがんで自宅療養しています。でも病気だから、介護ではなく看護なんです』と言う人がいます。でも、がんでも病状によっては介護保険を利用できます。がんの場合は、40~64歳で自立した生活が営めない方も利用できる場合があります。また、介護保険は現金を支給されるものだと思っている方もいます。このように介護保険の基本的な仕組みを知らないために、仕事と介護を両立するための選択肢がなくなっているんです」(和氣さん)

介護が必要になった時に相談に行くべき場所を知る

そしてもうひとつ知っておくべきことは、介護が必要になった時にどこに相談に行けばよいのかということ。

「病気になったら病院に行きますよね。でも、介護が必要になったらどこに相談に行けばよいか、知っている人がとても少ないんです。答えは『地域包括支援センター』です」(和氣さん)

地域包括支援センターとは、介護が必要になった時の総合相談窓口です。介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らせるように、各市町村に設置されています。どうしたらよいかわからなくなったら、まずはここに相談に行きましょう。

かく言う和氣さんも、母親の介護を始めた時はご自身が"介護をしている"という意識もなく、「何が分からないかが分からない」状態だったと振り返ります。目の前で起きることに翻弄(ほんろう)され、当時勤めていた会社を退職されています。だからこそ、情報の大切さを痛感しています。

「しかし、介護が始まったからといって、仕事を辞める必要はありません。自ら知識や情報を得ることで選択肢を増やすことができるのです。そのうえで"仕事を辞めて介護に専念する"ことを選択するに至るのであれば、それはその人の価値観であり、責められるものではありません。ただ、選択肢が見えなくなり、"会社を辞めるしかない"という思い込みで介護離職をしてしまうのはとても残念なことです。そうならないためにも、介護保険の基本的な知識と、相談場所は地域包括支援センターであること。この2つを介護が必要になる前の準備としてぜひ知っておいてください」(和氣さん)

※「令和2年度平均年収と学歴調査

出典

※1

内閣府「仕事と生活の調和レポート2018」
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-18/h_pdf/zentai.pdf

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